敏感の彼方に

HSPエンジニアがお送りする、前のめりブローグ

【それはHSPではなく病気です👉治療を】自己判断で病気を放置する危険

 

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HSP(Highly Sensitive Person)という概念は、米国の心理学者 Elaine N. Aron 氏(アーロン博士)によって、1990年代に提唱されました。

 

その後、ネットや SNS が発達していく中で、経済面や教育面の格差が拡がり、ストレスフルな社会となって、生きづらい場面が目に見えて増えている昨今、改めて注目を集めています。

 

その HSP とは、感受性が生まれつき強く、ちょっとした環境の変化や他人の気持ちにとても敏感なため、五感の強い刺激や他人とのコミュニケーションに圧倒され、すぐに疲れてしまうタイプの人を表す心理学用語です。5~6人に一人が該当すると言われています。

 

HSP とは、このような生まれ持った気質(≒ 性質)を表す心理学用語に過ぎず、病名ではないのに、最近では、「生きるのが困難 = HSP」という安易な解釈が広まっている懸念があります。本来であればメンタルクリニック(心療内科・精神科)に通院すべき病気なのに、それが見過ごされてしまっているケースも目立つようになりました。

 

本当に HSP であるなら、自分でそう認識することにより、「情報量の制限」「関係者への周知」「HSPに合う環境(仕事)の選択」など、HSP に適した対処も可能となりますが、HSP ではないのに自己判断で「HSP」と決めつけてしまうのは、危険な行為です。

 

そこで、HSP と混同されやすい心の病気をまとめることにしました。あなたの「生きづらさ」が HSP ではない「病気」を原因とするなら、それを「HSP」と自己判断して片付けてしまうのではなく、適切な治療によって、より解決に近づくかもしれません。

 

HSP(Highly Sensitive Person)の特徴

アーロン博士によれば、HSP と言えるのは、以下4つの指標すべてに当てはまる人です。

  • 深く考えてから行動する(【例】行動までに時間が掛かる)
  • 刺激に敏感で疲れやすい(【例】気疲れしやすく、一人になる時間が必要)
  • 人の気持ちに振り回されやすい(【例】幼児や動物にも感情移入する)
  • あらゆる感覚が鋭い(【例】強い光、大きな音、刺激臭などが苦手)

 

どの指標もフワッとしているため、疲労が蓄積していたり自己嫌悪に陥ったりしている状況で自己評価すると、「すべて該当」ということになりかねませんが、そこに落とし穴があります。すべての指標に該当するのは、HSP という気質のせいではなく、何らかの「心の病気」に罹っている可能性も十分に考えられます。

 

以下、HSP と混同されやすい主な病気を見ていきましょう。

 

うつ病

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HSP と最も混同されやすい病気かもしれません。「疲れやすい」「落ち込む」「自信がない」「眠れない」といった症状が HSP と共通します。ただし、罪悪感や自殺願望(自殺念慮)などもあれば、それは HSP ではなく「うつ病」が疑われます。以前はそうでもなかったのに、ある時から「喜べない」「憂うつな気分が続く」「趣味を楽しめない」「眠れない」といった症状が現れ、それが2週間以上継続する場合は、要注意です。

 

HSP は、生まれ持った気質なので、子どもの頃から「疲れやすい」「落ち込む」「自信がない」といった性質を持っていますが、ある時点からこのように変化した場合、それは HSP ではなく、何らかの病気の可能性が高くなります。

 

発達障がい(アスペルガー症候群)

発達障がいのうち、共感性や感覚の過敏などを特徴とするものを「自閉スペクトラム症(ASD)」と呼びますが、その中でも知能や言語に遅れがないものを特に「アスペルガー症候群」と言います。共感性や感覚の過敏が、HSP と共通します。

 

ただし、特定の物事への強い興味や関心、日常生活のパターン化(食事と風呂の順番への強いこだわり等)が顕著な場合、それは HSP ではなく「アスペルガー症候群」が疑われます。

 

アスペルガー症候群の人は、周りから「変わり者」扱いされがちですが、自分ではその理由に気付かず、それがストレスとなって、うつ状態や神経衰弱状態へと進行してしまうケースも往々にしてあります。これを「HSP」として放置するのは危険ですね。

 

HSP も少数派のため、周りから「変わり者」扱いされがちですが、HSP の場合は、自分でその理由に気付いているケースが多いように感じます。HSS型HSP となれば、さらに少数派です。

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強迫症(強迫性障がい)

ある考えやイメージに過剰にとらわれて頭から離れない「強迫観念」、それを打ち消すための行動を繰り返す「強迫行為」、それらの症状が出る状況を避ける「回避行動」が特徴です

 

たとえば、ドアの施錠を気にして何度も確認したり、ウイルスを気にして何度も手洗いしたり、という行為が過剰になれば、それは強迫症が疑われますが、このような行為を自分の「感覚の鋭さ」と勘違いしたり、このような行為による疲労感を覚えたりすることが、HSP と混同されやすい点です。強迫症は、1~2%が罹る病気と言われています。

 

不眠症

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神経質な性格やストレスが原因となって、「寝付けない」「眠りが浅い」「何度も目が覚める」 「早く目覚める」といった症状が現れます。女性に比較的多く、加齢とともに増加する病気です。HSP と同じく、5人に1人程度の割合で罹ります。

 

睡眠不足による倦怠感、集中力低下、意欲や食欲の低下が HSP と混同されやすい症状です。

 

パニック障がい

理由もなく強い不安を感じ、動悸や発汗などが起きる「パニック発作」、そのような発作を恐れる「予期不安」、発作が起こりそうな場所や状況を避ける「回避行動」を特徴とします。

 

予期不安を自分の「感覚の鋭さ」と勘違いしたり、回避行動によって一人の時間を必要としたりすることが、HSP と混同されやすい点です。

 

適応障がい

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主に日常生活で起こるストレスを原因に、強い抑うつ気分(意欲・食欲低下)、不安感、焦燥感、緊張感などが現れる病気です。また、このような感情の起伏によって疲れやすくなる点が HSP に似ています。

 

双極性障がい(躁うつ病)

ハイテンションで活動的な躁(そう)状態と、憂鬱で無気力なうつ状態を繰り返します。うつ状態では、不眠、無気力、食欲低下、疲労感など、HSP に類似の症状が見られます。

 

起立性調節障がい

小学校高学年から中学生のころに多く見られ、不登校の子どもの 60~70%前後がこの病気に悩まされているとも言われます。朝なかなか起きられず、倦怠感や疲労感が見られます。

 

子どもの HSP を HSC(Highly Sensitive Child)と呼びますが、HSC の疲れやすさがこの病気の症状と似ており、また、子どもは自分の症状を正確に把握して説明するのが難しいため、誤解を生じやすくもなります。ただし、この病気は、午前中に症状が強く出ることが多く、その点で HSP と区別できる場合もあります。

 

統合失調症

健康時になかった状態が表れる陽性症状(幻覚や妄想)と、健康時にあったものが失われる陰性症状(意欲低下や無感情や無関心)とが代表的な症状です。

 

ただし、病気の自覚がないことも多く、そもそも自分のことを「HSP」と誤判断することにさえ至らないため、HSP との混同は少ないかもしれませんね。

 

更年期障がい

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50歳前後にホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少して、ホルモンバランスの乱れに身体が追い付かず、自律神経や精神状態にも不調が生じます。実にさまざまな症状となって現れますが、そのうち、倦怠感や不安感が HSP の性質と似ています。

 

ただし、上にも書いたように、HSP は、生まれ持った気質なので、子どもの頃から「疲れやすい」「落ち込む」「自信がない」といった性質を持っています。更年期障がいのように加齢で変化する場合、それは HSP ではありません。

 

その他の病気

心の病気以外にも、「自律神経失調症」「下垂体機能低下症」「甲状腺機能低下症」「副甲状腺機能亢進症」「脚気」「バセドウ病」など、身体のだるさや疲労感が症状として現れる病気は、HSP の特徴の1つである「疲れやすさ」と混同されやすいため、十分に注意が必要です。

 

 

 

まとめ

  • 不安感や気疲れ、疲労感などの自覚症状がある場合は、それが病気を原因とするものであっても、HSP と混同しやすい
  • 加齢やストレス等を起点とする発症は、HSP と考えにくい(HSP は生まれ持った気質なので、ある時点で大きく変化することはない)

 

「HSP」は、うつ病や適応障害などを発症するリスクが高いと言われています。安易に自分を「HSP」と決めつけず、少しでも疑わしい場合は早めに専門医に相談しましょう。最近では、HSP も含めて相談に乗ってくれるクリニックが増えています。

 

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