過去3回目の人工知能(AI:Artificial Intelligence)ブームである。今回は、長い。
過去2回と今回が違うのは、チップの処理能力やアルゴリズムが飛躍的に進歩し、ビッグデータの集積もあって、さまざまなウェブサービスのみならず、自動運転や自動翻訳なども含めて、ボクら一般庶民の目にも見える形でいろんな成果が上がっていること。
このように、人工知能をベースとした様々なテクノロジによって、ボクらの生活がますます便利になるのは良いことなんだけど、数多くの無料の「便利」の裏側では、膨大な量の個人情報(使用履歴や購買履歴 etc.)が処理され、人工知能の機械学習によって、広告や商品、サービスなど、次の「おススメ」が目の前に提示される機会がますます増えており、食傷気味の人も多いと思う。
今後は、人工知能の「おススメ」を人間が学習し、その学習を上回るように人工知能がさらに学習し、その「おススメ」を人間がさらに学習し、それを上回るように・・・というように、人間と人工知能の「だまし合い」のような状況が延々と続くのだろう。
そんな未来に少々うんざりの今日この頃、「ストレスに弱い人間の方が、人工知能と上手く付き合っていけるんじゃないか?」と、何となく考えるに至った。ちょっと深掘り。
ストレスに弱い人 vs. 人工知能(AI)
単純に考えると、ストレスに弱い人(ストレス弱者)は、いとも簡単に AI の手玉に取られてしまいそうにも思える。
「ストレスに弱い」ということは、何となく世間知らずで、か弱く、すぐに騙されてしまうような印象があるからだろう。あるいは、ちょっとした圧力にスグ屈してしまうようなイメージがあるからかもしれない。
でも、ストレスと「心の状態」との関係から考えてみると、必ずしもそうとは言えなさそうである。
ストレスと「心の状態」の関係
ストレスの強弱と心の状態(心身の活性度)との関係を表すのに、このような正規分布状のグラフがよく用いられる。
かかるストレスが小さい時(グラフの左の方)は、心身がほとんど反応していなかったり、反応していても「退屈」に感じていたりする。
それが、ストレスの増大とともに、「やる気」となって現れ、あるストレスに至った時、心身の活性度が最も高くなって、「快適」な状態が訪れる。
そして、「快適」な状態を超えてストレスが大きくなると、次第に「イライラ」が募り、やがて「燃え尽き」の状態に陥り、行き過ぎると「うつ」状態になる。
つまり、一般的な人間は、ストレスが小さすぎても大きすぎても居心地が悪く、ある程度の負荷(ストレス)が与えられている状態を「快適」と感じ、そのような状態にあってこそ成長も可能となる。
ストレス弱者(HSP)の「心の状態」
一方、たとえば HSP のように、外界からのストレスに比較的弱い人は、ストレスの大小に応じて、どのような心の状態をたどるのだろう。
人によって様子は多少なりとも異なるんだろうけど、以下のような「心の状態」になっていることが多いように思う(自分自身の経験からも)。正規分布(グレー)を外れて、F分布(ブラック)に近づくようなイメージだ。
つまり、一般的な人(非 HSP = 正規分布)と比べて、弱いストレスでも心身の活性度が一気に高まり、すぐに「快適」に達する一方、「快適」を超えた後の落ち方も急峻であり、非 HSP が「快適」と感じるレベルのストレスも、HSP には「イライラ~燃え尽き」に相当する大きなストレスに感じられる。
このように、小さなストレスにでも過剰に反応してしまう性質が、「ストレスに弱い」と言われる所以だろう。
でも、少し視点を変えると、HSP のようなストレス弱者は、ちょっとのストレス(環境の変化)でも「退屈」を脱して「やる気」を出せるため、非 HSP よりもわずかなきっかけで自分を成長させられる可能性がある。自分を成長させるのに、それほど大きな負荷は要らない、とも言えそうだ。
ストレスに弱い人は、人工知能(AI)から離れて進化する
ストレスに弱い人(HSP など)が上のような心の状態をたどるとするなら、「快適」を超えるストレスで心身の活性度は一気に降下することになるため、極力そのようなストレスを遠ざけようとするのが普通である。
一方、ストレスを「環境の変化」と捉えるなら、こちらから頼みもしないのに人工知能(AI)が広告や商品、サービスなどをおススメしてくる環境は、HSP などにとっては無視できないほどの大きなストレスに感じられる。
HSP は基本的に「放っておいて欲しい」と思っているので、これから将来にわたって AI が跋扈するようになればなるほど、心は AI から離れていき、適度な距離感でテクノロジと付き合えるようになるのかもしれない。
HSP は、その過敏すぎる気質を利用して、群れや集団を外敵や将来の危険から守る「見張り番」の役割を遺伝子レベルで担っている、という一説もあるので、そういう点でも「人間 vs. AI」の行く末を遠巻きに見ているのがピッタリの性質なんだろう。
いろんなものをおススメしてくる AI というのは、自分の好みを把握している「生き写し」のような存在だから、AI と向き合えば向き合うほど、それは自分自身をひたすら内面化する作業になってしまう。AI は人間の知性を機械化したものなのに、その AI に人間自身が取り込まれてしまう状況だ。
生物学的に考えて、そのように自己内面化しかできず、有形無形のあらゆる「外部(システム)」を受け入れられなくなった生き物は、進化から取り残されてしまうんじゃないかと思われる。
その点でも、生き写し的な AI とは適度な距離感を保つのが得策だと考える。ボク自身、仕事で AI に関わることは多々あれど、プライベートではなるべく距離を置いている。
おまけ:ストレスの解消法
HSP が人工知能(AI)と上手く付き合っていけるのは良いことだけど、ストレスに弱いことは事実なので、AI との付き合いの前にストレスで自滅してしまいかねない。
そこで、(自分のためにも)ごく一般的な「ストレス対処法」をまとめておく。
ABC 理論
ストレスは、ある出来事(Activating event)を経験した人が、その人の価値観や認知(Belief)でその出来事をとらえた結果(Consequence)として、心身の状態となって現れるため、価値観・認知「B」次第で結果は大きく変わることになる。
たとえば、上司に厳しく叱られた場合、「自分はやっぱりダメだ」と思うのではなく、「自分の将来を考えて叱ってくれている」「同じ失敗で恥をかかないように叱ってくれている」など、超前向きに変換してしまえば、少しは気が楽になるはず。
※ ブラックな場合は別なので、しっかりと見極める必要がある。
簡単な日記をつけて後で読み返す癖をつければ、自分の「マイナス思考回路」に気付いて、少しずつ前向きになっていける場合もある(詳しくは、その手の専門書を)。
4つのR
ストレスを感じた場合は、非日常的な場に身を置いてリフレッシュすることが大切だ。
- 休息(Rest):睡眠やマッサージ など
- 気晴らし(Recreation):遊びや運動 など
- リラックス(Relaxation):温泉やアロマセラピー など
- 転地療法(Retreatment):旅行や森林浴 など
GNN
義理(Giri)、人情(Ninjo)、浪花節(Naniwabushi)!
成果主義で殺伐とした職場よりも、無駄話が多く、人間的な温かみの残っている職場の方が、メンタルの健全性が高いとも言われている。
そういう点でも、多少スマートではなくても、人工知能などがもたらす「効率主義」から距離を置く方が、人間として健全に過ごせるのかもしれない。
では、ストレスよ、サヨウナラ!