企業などの組織から独立して働く「フリーランサー」の割合は、日本で 20%、米国では 50%とも言われ、近年は増加の一途をたどっています。
日本では、終身雇用システムが崩れる中、若手やシニア層の人材を確保し、新規事業の開拓にも生かす目的で、副業を解禁する企業の例が目立っています。
また、厚生労働省は 2018年、副業・兼業を原則認める方向へと「モデル就業規則」を改定しました。
- 勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
- 事前に、会社に所定の届け出を行うものとする。
- 「労務提供上の支障がある」「企業秘密を漏洩する」「会社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある」「競業により、企業の利益を害する」のいずれかに該当する場合、会社はこれを禁止又は制限することができる。
「クラウドワークス(CrowdWorks)」のようなビジネスの仲介はもちろん、「ウーバーイーツ(UberEats)」のような出前サービス仲介、「エッツィー(Etsy)」のような手作り品売買仲介、「ユーデミー(Udemy)」のようなオンライン学習プラットフォーム、「あきっぱ(akippa)」のような駐車場時間貸しサービスなどなど、ネットの世界には個人で収入を得られる場がまさしく「雨後の筍」のごとく次から次へと登場しています。
以上のような状況から、
主にフリーランスや起業によって複数の仕事を並行して手掛ける「複業(パラレルワーク/ポートフォリオワーク)」、本業の収入を補うための「副業」、収入よりも能力や人脈の幅を広げるための「幅業」など、今や「ふくぎょう」は労働者にとって無視できないキーワードであり、誰もが一度は考える生き方・働き方となりつつあります。
そこで、十数年の「ふくぎょう」経験に基づいて、このような「ふくぎょう」新時代に役立ちそうな盲点となる情報を、さまざまな観点で過去記事を引用しつつまとめてみたいと思います。誰もが自由に、自分の能力を最大限に生かせる社会になると嬉しいですね。
法律・規則上の注意点
公務員は、国家公務員法や地方公務員法によって兼業や副業が制限されていますので、これを守るのは当然の義務です。
一方、民間企業の場合は、「就業規則」の「副業禁止規定」で副業が禁止されていれば副業を行うべきではありませんし、特に禁止されていなければ副業可能ということになります。
副業解禁の例が増えてきているとはいえ、副業を禁止している企業も依然として多いのは、そこに明確な理由があるからです。それは、上に書いた「モデル就業規則」にも記載されていることですが、以下のようなリスクが企業側にあるからです。
- 副業で疲れてしまって、本業に支障が出る
- 会社の秘密や情報が漏洩する
- その結果、会社の信用や利益が損なわれる
ですが、企業の「副業禁止規定」には、必ずしも法的拘束力があるわけではありません。職業選択の自由は憲法で守られていますし、就業時間以外の時間をどう使うかは労働者の自由、という判例もあります。
ですので、企業の信用や利益が損なわれない範囲の副業というのは、本来認められてしかるべきとも考えられます。この点を念頭に置いて、所属する会社と相談してみるのも1つの手ですね。社員の副業が結果的に会社にも大きな利益をもたらす可能性があることは、いろんな書籍やサイトで紹介されています。
一方、副業が可能となった場合に忘れてはいけないのが、「確定申告」です。会社から給与をもらいつつ、副業で「雑所得」を得たり、個人事業主(フリーランサーの場合など)として「事業所得」を得たりして、その年間合計が 20万円を超えた場合には、確定申告が必要です。忘れると、延滞税や無申告加算税などが課されて、無駄な出費が増えてしまう可能性もあるため、注意したいところです。
健康に関する注意点
「副業」も「複業」も、二足(以上)のワラジを履くことになるわけですから、少なくともその生活に慣れるまでは、かなり疲労することが予想されます。
副業の場合は、それで本業に支障が出てしまっては意味がありませんし、会社にも迷惑が掛かることですから、本業も手を抜けません。そうなると、オーバーワークで過労状態に陥る可能性が高くなります。
このような場合に注意したいのが「労災認定」と「休業補償」です。
本業と副業の両方で長時間労働となって過労で倒れたとしても、法定労働時間を越えた方でしか労災は認められないため、注意が必要です。
休業補償について
労災認定されて仕事を全休した場合でも、その休業補償金は、1社分でしか計算してもらえないため、注意が必要です。
いずれの場合も、とにかく「働き過ぎない」ことや「時間管理を徹底する」ことが必要ですが、それに加えて「上手に休む」ことも大切な要素となります。
「ふくぎょう」を失敗しないコツ
本業と並行して従事する「副業」の場合は、本業が何よりの「リスクヘッジ」となります。たとえ副業が上手くいかなくても、本業さえ続けておけば食べていくことはできます。
「ふくぎょう」が盛んになってくると、その「ふくぎょう」という世界で仕事の取り合いが始まります。実際、それほど高い専門知識や能力が必要ない分野では取り合いになっていますし、言語の壁が関係ない分野では、国境を越えた「安い労働力」との競争が待っています。
「ふくぎょう」を「おこづかい稼ぎ」程度にしか考えない人がたくさん参入すると、価格競争が激しくなって、最低賃金以下にまで単価が下がるケースもままあります。
ですので、自分自身の生活が懸かっている以上、本業をやめずに副業に参入することが基本中の基本だと思います。「脱社畜」のポジショントークを繰り広げる人も少なからずいますが、自分の人生を守れるのは自分だけですからね。
副業が少し進んで「複業」となった場合は、ボク自身の経験から、「やりたい仕事」×「必須の仕事」×「ブルーオーシャン」という掛け算がリスク分散として最強なんじゃないかと実感しています。
また、複業からもう少し進んで、会社を辞めて「フリーランサー」として船出しようと考える場合には、自分が本当にフリーランサーに向いているのかどうか、じっくり考える時間も必要でしょう。いろんなフリーランサーと付き合って観察してきた経験をまとめています(↓)。
「ふくぎょう」を持続させるコツ
一度始めた「ふくぎょう」を長く続けようと思うなら、環境や仕組みを整えるのが大事です。
たとえば、「ふくぎょう」の仕事場として、自宅の一角を利用するか、マンションを借りるか、シェアオフィスを活用するか、という選択も、長く続ける上では重要な要素となります。
自宅を仕事場にする一番のメリットは、固定費が掛からないことでしょう。一方、シェアオフィスを借りると、講演会や勉強会に参加したり、異業種の会員と交流したりして、新しいアイデアや人脈が生まれる可能性もあり、自宅とは異なる良さがあります。
参入する分野、仕事内容、経済的メリット/デメリット、交通の便などを考慮して、自分の「城」を構えましょうね。環境一つで、疲れ具合も大きく変わってきますしね。
また、「ふくぎょう」が中心になってくると、「家族」の存在感が大きくなってきます。「会社人間」から「個人」へとシフトすることで、心身ともに家族との関わりが増えるからです。ですので、「家族を愛する/家族に愛される」という関係を築き、それが仕事の原動力となるようにすることで、仕事の成果も変わってくるでしょう。
その他、フリーランサーとしての上手な「力の抜き方」や、フリーランサーとして齢を重ねた場合の「生き残り戦略」みたいなものもまとめています(↓)。
さいごに
今後、フリーランサーが増えていくことは間違いないと思いますが、だからと言ってサラリーマンがオワコンになるわけではありません。逆に、企業の中で大勢のフリーランサーを上手くやり繰りする人材が重宝される時が来るんじゃないかと予想しています。
どのように働くかは、人それぞれの向き/不向きです。誰もが、自分の性格や長所を生かして働ける社会になると良いですね。
その参考として、ボクの経験を中心に、「ふくぎょう」時代の生き方・働き方を簡単にまとめてみました。