政府の推進や自由な働き方を求める風潮が相まって、特にネットビジネスを中心に「副業」が一般的になりつつあります。
「副業」から「複業」へ
「副業」というのは、本業の空き時間に仕事を入れる補助的な収入源のイメージですが、同じ「ふくぎょう」でも、最近特に注目を集めているのが「複業」です。
本業/副業という区別が特になく、複数の仕事を並行してこなす働き方です。別の言い方として、「パラレルワーク」「パラレルキャリア」なんてのもありますね。
「複業」の目的は色々ありますが、やはり一番は、リスク分散でしょう。複数の分野の仕事を同時並行的にこなしていれば、ある分野が不調でダメになったときでも、他の分野で十分に補うことができます。その点では、「ポートフォリオワーク」とも呼ばれます。
「副業」を「複業」にできれば、安心感が高まるため、フリーランスとして独立するハードルが低くなります。実際、周りでそのような事例をよく見掛けるようになりましたし、かく言うボク自身も経験者です。
これまで、フリーランスの向き/不向き、人工知能(AI)時代のフリーランスの生き方などを綴ってきました。
この記事では、特にフリーランサーとして複業(副業)を始める場合の「失敗しないコツ」をまとめていきたいと思います。その基本は「正しいリスク分散」です。
正しいリスク分散
「複業」では、いろんな分野の仕事を手掛けることになるため、時間の管理や頭の切り替えに神経を使いますし、各分野でプロフェッショナルを維持するための自己研鑽も大変ではありますが、さまざまな仕事に並行して取り組めるため、マンネリ化を抑えられたり、業務間のシナジー効果を追求できたり、メリットもたくさんあります。
その一番のメリットは、「リスク分散」と言えますが、ただ闇雲に複数の仕事を手掛けるだけでは、十分な「リスク分散」とは言えません。
ボクが考える「正しいリスク分散」とは、
「やりたい仕事」×「必須の仕事」×「ブルーオーシャン」
という掛け算で表すことができます。
「やりたい仕事」
文字通り「自分のやりたい仕事」です。
もし、フリーランスとして自由に生きることを選ぶのなら、「やりたい仕事」をやらずして何をやるの? ということです。リスクを背負って独立する以上、その中に自分なりの楽しみを少なくとも1つ設けておくのは、心の安寧・安定という点で、大きなリスク分散になります。
逆に、大して「やりたい仕事」がないのに、わざわざフリーランスという危険な生き方を選択するのはナンセンスです。情熱を伴わないフリーランスは、決して長続きしません。
「必須の仕事」
これについては、具体例で話を進めます。
ボクの知人に、「特許関連業務(弁理士の補佐のような仕事) × 行政書士 × ブロガー」というポートフォリオワーカーがいます。
この3つの仕事のうち、「特許関連業務」または「行政書士」が「必須の仕事」に該当します。つまり、「必須の仕事」というのは、「制度上必須の仕事」ということです。
いずれも、「特許法」「行政書士法」という法律があることで生まれる仕事ですし、法律が一般人の参入を阻止する「壁」となって保護される仕事でもあります。「弁理士」「行政書士」という資格を持っていなくても、その下請けとしての関連業務もたくさんあります。
もちろん、それぞれの領域で競争がありますので、その中で優劣が付いたり、仕事にありつけなくなったりする可能性も十分にありますが、少なくとも法律がある以上、その分野の仕事そのものが「ゼロ」になることはありません。
上記以外にも、「ヒューザー」「小嶋」「姉歯」というキーワードで思い出される仕事があります。建築物の構造計算ですね。こちらも、『建築基準法』で義務付けられていますので、「必須の仕事」と言えます。
また、法律とは関係ありませんが、引っ越しの仕事も「必須」と言えますね。昨今は、伸び続けるネット通販の影響で運送業界との人材の取り合いが激しくなっており、2018年3月には、引っ越しの見積もり料金が爆発的に高騰したのを覚えています。
今後も、運輸業界との人の取り合いは続くでしょうし、体力的に厳しい仕事ですから、若い人の参入も少ないと考えられます。ですので、2~4月、10月、年末などの引っ越しピーク時期には、高い時給が期待できるんじゃないでしょうか。
体力自慢の人で、引っ越しのピーク時期にちょうど閑散期となるような仕事を手掛けている人なら、季節的な仕事を平準化させる1つの手段になり得ます。
「ブルーオーシャン」
「ブルーオーシャン」とは、ご存知の通り「競争相手のいない未開拓の市場」という意味です。低価格化したり、モノやサービスに独創的な付加価値を新たにプラスしたりすることで、消費者の新たなニーズを掘り起こす戦略です。競合他社と異なる目の付け所によって、競争相手のいない(少ない)状況を作り出します。
ただ、一般的な「ブルーオーシャン」のイメージは、上の写真のように平和で穏やかな印象だと思いますが、そんなイメージも、単純な戦略では、すぐに「レッドオーシャン」という血の池地獄になってしまいます。儲かるビジネスモデルは、他社がすぐに模倣してきます。
ですので、他社(他者)がすぐに真似できないように、参入障壁を高くする必要があります。長く続いているブルーオーシャンをじっくり観察してみると、その裏には、ちょっと見ただけでは分からない高い参入障壁がそびえ立っていることに気付きます。
特に個人で考える場合、参入障壁を高くする方法として、大きく「能力」「時間」という2つの要素があります。
「能力」という参入障壁
たとえば、人工知能(AI)技術者やデータサイエンティストなど、需要が増しているにも関わらず、高度な技術や知識が必要で、容易には参入できない分野がそれに当たります。
ただし、誰もが高度な技術や知識を身に付けられるわけではありません。
「時間」という参入障壁
「能力」という参入障壁を築こうと思ったら、それなりの地頭や教育が必要なわけですが、これに対して、「時間」という参入障壁なら、人並外れた「能力」はなくとも、「時間」さえ掛ければ何とかなりますので、より一般的と言えます。
具体的に言えば、たとえばブログや動画などのコンテンツ(メディア)がそれにあたります。ブログや Youtube などは、始めるのは簡単ですが、一部の例外を除いて、それなりの収益になるまでにはそれなりの時間が掛かります。ということは逆に、ある程度の時間を掛けないことには参入できないわけです。
普段は中心的な業務に注力しつつ、傍らで「時間」という種を少しずつ色んな分野にまいておけば、時間の経過とともに、いつの日か、他人が容易には乗り越えられない壁を築けます。もちろん、その「時間」も有限ですから、種をまく分野やその数・速度を決めるセンスなり先見性は、当然必要になりますけどね。
まとめ
- 「リスク分散」=「やりたい仕事」×「必須の仕事」×「ブルーオーシャン」
- 「やりたい仕事」は、心の安寧・安定のための仕事
- 「必須の仕事」は、法律・社会的に絶対必要となる仕事
- 「ブルーオーシャン」は、「能力」「時間」という障壁で守られる仕事
これまで、組織に属したり属さなかったりしながら、航空機関連の開発、ハード/ソフト含めた技術的コンサルティングや技術動向の調査、プランニング、翻訳などの仕事に 10 年以上携わってこられたのは、上のようにリスクを分散できた結果です。