米国の世界的半導体メーカが、ある中国企業と知的財産権を争っており、それを解決できる技術的根拠を示せないか、という依頼を受けた。
今や、世界の半導体業界は、米中の企業を中心に日韓台の一部企業を含めて、アジアやアフリカなどの成長市場を如何に取り込むかの熾烈な争いとなっている。
今回の案件は、業界では当たり前すぎる製造方法が争点となるため、その結末次第では、2社間での争いに留まらず、業界全体に大きく影響する可能性もある。その点で、いつもの仕事の1割増しぐらいのエネルギーを注ぎたいとは思っている。
競争するしかない世界
欧米に追い付け追い越せの時代、日本の半導体産業は元気だった。
でも、アジアの新興国が日米欧に追い付け追い越せとなって以降、巨額投資のリスクを取れない日本企業は相対的に凋落し、国の盛大な後押しも受ける米中企業の間に割って入ることすら難しい状況になりつつある。
資本主義の世界に生きているから当たり前だけど、競争に勝てば潤うし、負ければ懐が寂しくなる。国境の垣根が低くなって人材やモノが自由に行き来するようになったグローバル社会では、その傾向がますます強くなり、勝てば総取り、負ければ身ぐるみ剥がされてしまう。
半導体業界に限らず、あらゆる業界がそのような方向に向かっている。グローバルに闘えなければ、国内でローカルに稼ぐしかないが、懐事情はそれなりで落ち着くことになる。
競争したくない人
ボク自身は、競争は好きでも嫌いでもなく、自分の持てる知識や技術で「何かの役に立てるなら」というスタンスで働いているが、子ども3人を見ていると、明らかに競争が好きな子もいれば、表立たずに競争するぐらいが好きな子、競争が嫌いな子もいて、それぞれ3者3様に性格がはっきりと別れている。
そして、競争が好きならば、いくらでも競争を仕掛けて(もちろん、競争相手を敬う心は忘れずに)生きていけば良いと思うのだが、競争が嫌いな子にとっては、今後の世界はますます生きづらくなるんじゃないかと心配している。
グローバルに競争する会社に入ろうものなら、「なぜ競争しなければならないのか?」というような葛藤なり疑問なりに押しつぶされてしまうかもしれないし、かと言ってローカルに根差す会社では、努力に見合った実入りを得るのが今後ますます難しくなっていくんじゃないかと予想される。
「普通に働いて普通に収入を得る」ことが難しく、そのような選択肢の幅がどんどん狭くなっていくんだろうと思う。
大人になる前に疲れてしまう人
子どもの学校生活を見ていると、今は、やることなすこと「目標」や「感想」を求められ、「適当に流す」ということが許されなくなっているように感じる。
そして、2020 年には小学校で英語が正式な教科になるし、プログラミングや道徳教育も入ってきて、さらに忙しくなっていく。
大学に入ろうと思えば、AO 入試ではますます強い個性を求められるようになり、国公立であればセンター試験が「大学入学共通テスト」に変わるため、鉛筆を転がすだけでは記述問題に対応できない状況となる。英語は「話す」「書く」も加わって4技能だ。
そうやって苦労して大学に入ったら、入学後すぐに就活の準備が始まる。勉強しに来てるのか、就活しに来てるのか、何のために学費を払うのか。
そして、社会に出たら出たで、就職した会社はブラックかもしれないし、妥協して結ばれた結婚は墓場かもしれないし、老いても年金はもらえないかもしれない。
ボクなんて、大学に入る前も入った後も、とってものんびりしていたけれど、そんな時代と比べると、これからの子どもはちょっと忙しすぎやしないかな。忙し過ぎて、大人になる前に疲れ切ってしまう子どもが続出するんじゃないかと心配になる。
副業・複業が次世代のセーフティネットになる
次世代が「疲れずに大人になる」ことも「普通に生きる」ことも難しくなるのなら、自分の子どもに限らず、親戚の子でも近所の子でも知人の子でも誰でも、自分で関われる範囲の次世代の人たちに、何らかの受け皿を作っておいてあげたいなと思う。
そのためにも、自分自身が副業や複業のワラジを何足も履いておきたい。
今は大した儲けがなくても、長く地道に継続しておけば、それなりのノウハウも蓄積されていくし、今は日かげの分野が時代の変化とともに日なたとなって、ちょっとした収入が得られるようになるかもしれない。履くワラジの数が増えれば増えるほど、その確率も(微々たるものだが)高くなる。
ただお金(財産・資産)を残すことよりも、普通に生きていくためのセーフティネットとして、いろんな仕事の選択肢を残してあげる方が、あとになって喜んでもらえるんじゃないかな(まぁ、残すほどのお金もないわけで・・・)。仕事を通じて人の役に立てることほど承認欲求を満たしてくれるものはないと思うからね。
どこかの企業に就職して活躍できるならそれでも良いし、自分の得意なことで起業したり独立したりして食べていけるならそれでも良い。でも、そうできなくて本当に困ったときは、ボクが履いているワラジの中から好きなものを選んでもらって、そのノウハウを教えてあげられるといいな、などと妄想している。
さいごに
これまで、組織に属したり属さなかったりしながら、航空機関連の開発、ハード/ソフト含めた技術的コンサルティングや技術動向の調査、プランニング、翻訳などの仕事に 10 年以上携わってきたけど、それ以外に、ブログも細々と続けていきたいし、ツマと相談して、フリマへの出店や雑貨販売などもいつかやれたら面白そうだ。
あとは、農業・漁業の衰退でやがて「食」の問題も大きくなってくるだろうから、昆虫食の可能性なんかも含めて、自給自足+アルファになるようなことも考えてみたい。
大事なことは、ほそーく、ながーく、続けていくことだと思っている。今まで従事してきた数々の仕事も、振り返ってみると全部そうだ。