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【就活ルール廃止】お見合いが「自由恋愛」になって増えるフリーランス

 

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現在、経団連に加盟している企業は、「3月から説明会(就活「解禁」)、6月から選考、10月に内定交付」という採用ルール(就活ルール)を建前上は守っています。

 

「建前上」というのは、ある就職情報会社の調査で、経団連加盟企業も含む4割以上の企業が解禁日を無視して内定を出していることが分かっているからです。

 

実際、外資系を中心とするトップ企業から内定をもらうような学生さんは、優秀な人ほど動きが早く、学部3年生の夏にはすでに内々定をもらうケースも少なくありません。

 

「外資系中心に」というのは、そもそも経団連に加盟していない外資系企業やベンチャー企業は上記スケジュールに縛られることなく早期に内定を出せるからですが、もう1つ学生側の事情として、「外資系内定」という「箔」を付けてそれを公表することで、日系企業の内定獲得にも有利に働く可能性が高いからです。

 

就職活動の自由化

そんな就活ルールが「廃止」へと向かっています。

 

具体的な時期は現在も調整中ですが、将来的に「採用活動の策定などに一切関与しない」旨を経団連が発表したからです。

 

就活ルールが廃止となった場合は、インターンシップなどのイベントが今まで以上に採用と直結するようになって、企業による優秀な学生の取り合いが早期化・激化していき、それに対して能動的な学生ほど早期に動き出す一方、受け身な学生は背中を押してもらうきっかけがなくなるため、両者間で「内定格差」がますます拡大するのでは? との懸念がよく聞かれます。

 

実際にどのような変化が訪れるのかは予測不能な部分もありますが、いずれにしろ、ルールが無くなるということは、就活が自由化される、ということであり、それを婚活市場における「お見合い」から「自由恋愛」への変遷になぞらえる向きもあります。

 

ちょっと考えてみました。

 

「お見合い」

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今さらですが、「お見合い」とは、結婚を希望する男女が第三者(世話人)の仲介により対面する慣習です。世話人は、男女それぞれの写真付きプロフィール(釣書(つりがき)と言います)を基に釣り合いの取れそうな相手を見つけ、対面のセッティングなどを行います。対面後は、両者の意思に応じて交際 → 成婚へと進んでいきます。

 

これを就職活動に置き換えてみると、釣書が ES(エントリーシート)、世話人が大学や就職情報会社であり、学生と企業との釣り合いが取れれば、面接 → 内定へと進んでいきます。

 

一部では形骸化が進んでいるとはいえ、これがルールに則った従来の就活です。

 

 「自由恋愛」

「自由恋愛」とは、文字通り「男女が自分の意志で自由にする恋愛」のことです。特に第三者の仲介なく、男女が自由に出会って交際し、その先に「恋愛結婚」があります。

 

自分の意志で相手を見つけ、交際 → 結婚へと発展させる点が、ルール撤廃後の就活に似ています。意志の強さ、動き出しの早さ、人気(実力)の有無などが結果に影響する点もよく似ていますね。

 

インターン期間を「同棲期間」と見なせば、同棲期間が長ければ長いほど相手のことがよく分かり、結婚(就職)後の生活も上手く回る可能性が高いため、その点でも、優秀な学生さんほど就職活動が早期化して、相手をじっくりと見極めてから安全に結婚(就職)しようとする傾向が強まるのかもしれません。

 

未婚率の上昇

以上のように、就活の自由化と結婚の自由化を比較してみると、興味深い共通点がいくつか見つかるわけですが、では、結婚の自由化によって、「結婚」そのものにはどのような影響があったのでしょうか。

 

こちらは、見合い結婚と恋愛結婚の比率の推移を表したグラフです。

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国立社会保障人口問題研究所 第15回出生動向基本調査「結果の概要」より

明治民法に定められた婚姻制度(家父長制度)の下、「お見合い」が大いに効果を発揮して、戦前までは全体の7割を占めていましたが、1960 年代に逆転して、今では5%程度に落ちています。これには、結婚相談所経由の結婚も2%ほど含みますので、それを除いた昔ながらの「お見合い」は、たったの3%しかないことになります。

 

一方、生涯未婚率の推移を表したグラフがこちらです。

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1990 年ごろを境にして、急激に上昇していることが分かります。

 

上の2つのグラフから言えることは、1960 年代に結婚適齢期を迎えていた人が、生涯未婚の判断基準となる 50 歳になった 1990 年前後に、生涯未婚率が大きく上昇し始めている、ということです。つまり、因果関係は別として、お見合いの減少と未婚率の上昇との間には、何らかの相関関係があり得る、ということです。

 

実際、お見合いというのは、個人の自由を半ば蔑ろにしながらも、その半強制性によって婚姻率に大きく寄与していた可能性が十分に考えられます。

 

離婚率も上昇

そして、気になるのが「結婚後」のことです。日本の離婚率(件数)は、どのように推移しているのでしょうか。それを表したグラフがこちらです。

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家父長制度が定められた明治初期まで、日本は離婚大国だったようですが、明治民法の制定により、それ以降は世界にも類を見ない低さで離婚率は推移してきました。それが 1960 年代以降、再び上昇に転じたことが分かります。

 

こちらも因果関係は別として、恋愛結婚の増加と離婚率の上昇には、何らかの相関関係がありそうだ、という結論になります。

 

確かに、お見合い結婚の場合は、世話人や両家など、それに関わる人が多く、そういった人たちに対する恩義や感謝の気持ちに離婚を思いとどまらせる作用が少なからずありそうです。一方、(家制度の影響の薄い)恋愛結婚の場合は、「愛情」というタガが一旦はずれてしまえば、それ以上は婚姻関係を維持する明確な理由がなくなってしまいます。

 

お見合い結婚の場合、最初は相手の内面をろくに知らない状態でも、関係者への恩義を胸に長い年月を過ごしていれば、相手に対する「情愛」の気持ちが徐々に湧いてくるため、そのような後付けで盛り上がる「愛」が長続きの秘訣、という見方もありますね。

 

目の前にある自由は追いかけない

以上のように、結婚の自由化は、未婚率の上昇にも離婚率の上昇にも何らかの影響を及ぼしている可能性があるわけですが、それは、人間の本質と関係しているような気もします。

 

その本質とは、以下のようなものです。

  • 自由を希求するのに、いざ自由が目の前に現れても、その自由を追わない
  • 自由の中で得た「不自由」は長続きしない

 

人間は、お見合いのように、ある程度不自由な環境で背中を押されつつ自由を渇望しているぐらいが丁度よいのかもしれませんし、恋愛結婚のように、自由の延長線上で選択した「不自由」は、より窮屈に感じられるのかもしれません。

 

自由化による就職意欲の減退と離職率の増加

そして、就活ルールの廃止により就職活動が「お見合い」から「自由恋愛」へと変質しそうな未来において、共通点の多い「結婚」と同じような道をたどるとするなら、そこに待ち構えるのは「就職意欲の減退」と「離職率の増加」でしょう。

 

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就活が自由恋愛となった場合、優秀な学生さんは今までと変わらず、あるいは今まで以上に自由を謳歌して、情報収集や活動開始を早めることにより、次々と内定を獲得していくことでしょう。

 

一方、平均以下の学生さんは、目の前の広大な自由があまりにも大きすぎるため、前進することを躊躇してしまい、その自由をやがて追いかけなくなるのではないかと思います。それが人間の本質だと思うからです。

 

また、就活という「自由恋愛」が自由であればあるほど、その後の就職という「不自由」が窮屈に感じられ、よほど自由な社風でもない限り、その不自由から逃れようとする人が今よりも多くなるのではないかと思います。それもやはり、人間の本質だと思うからです。

 

フリーランスの増加

行き着くところは、トップ企業の幹部候補生や大企業で大きな予算のプロジェクトに携わる希望の強い人を別にして、「フリーランスの増加」かなと思います。

 

実際、通年採用が当たり前の米国など、2~3年後にはフリーランサーが 50%にも達すると予想されているようですし、社会の自由が進んだ先には、そのような未来が待っていると考えておくのがよさそうです。

 

 

 

あとがき

婚活にしろ就活にしろ、モテる要素のある人や他人より秀でている人は、自由の恩恵を目いっぱい享受することができるのですが、そうでなければ、自由の恩恵に浴するどころか、自由の大きさに圧倒されて終わってしまう可能性があります。

 

また、自らの意志でフリーランスを選択する人は良いのですが、選択肢がなくて仕方なくフリーランスを選択するような人は、おそらくその時点で精神的にも実力的にも、かなり後ろからのスタートになってしまうと思います。

 

就活の自由化に合わせて、大学の就職課や相談窓口などは強化されていくことになるのでしょうが、それだけでは少し心許ない感じがしますね。

 

フリーランス志望者の増加を見越して、営業や財務・会計、確定申告、法律、受発注手続き、品質保証などのフリーランスに必要な全般スキルや、フリーランスとして生きていくのに必要なマインドセットなどを教える「フリーランス養成講座」なるものが大学の授業に組み込まれても良いんじゃないでしょうか。

 

もっと本質的に、フリーランサーは、高度な専門知識や技術があれば優位に生き残っていけますので、小手先の就活のノウハウなんかよりも、知識や技術を大学でしっかりと身に付けられるようになれば、それでこそアカデミズム本来の役割が果たされるのかもしれません。

 

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