入試やテスト、試合や発表会(スピーチ)など、大きなプレッシャーの掛かる場面では、いかに自分の力を出し切れるかが結果を左右します。そのような「強い本番力」を発揮する方法を紹介します。
イメージトレーニング
自分の能力を発揮できるかどうかは、自分の「心と身体の状態」によって決まりますので、緊張やストレスをなるべく排して、常に最高の「状態」を維持する必要があります。
マイナスのイメージ ⇒ プラスのイメージ
本番に弱い人は、過去に失敗したシーンを無意識に何度も思い出す「マイナスのイメージトレーニング」によって、自ら失敗を引き寄せてしまっているケースが多いです。
ですので、この「マイナスのイメージ」を「プラスのイメージ」で上書きすることが基本になります。
この時、イメージには意識的なイメージと無意識的なイメージの2種類があることに注意します。「無意識」というのは、「自分は本番に弱い」というようなイメージをいつの間にか勝手に持ってしまっている状況です。「潜在意識」とも言います。
そして、この「無意識(潜在意識)」は、「意識」の2万倍もあると言われていますので、この「無意識」をプラスに持っていくことが重要なわけです。
つまり、「無意識的なマイナスのイメージ」を「無意識的なプラスのイメージ」で上書きすることが基本になります。
ちょっと難しいので、ここからは2つの具体的な方法論で話を進めます。
方法1:過去の悪いイメージを塗り替える
たとえば受験生で考えると、模試の結果が出なかった場合、その結果は「悪い出来事」というイメージで無意識に格納され、暗い感情を呼び起こします。そのままにしておけば、入試本番まで悪いイメージしか残りません。
そこで、以下のような自分への問い掛けによって、無意識のマイナスイメージをプラスへと変換する作業を行います。質問に対する回答を手で書き出してみるのが有効です。
出来事を客観視するための質問
A(参考).緊張で頭の中が真っ白になっていた。
A(参考).その状態で本番を迎えたら、解ける問題も解けない。もっと冷静に。
プラスイメージに変換するための質問
A(参考).本番で成功するための練習だった。
A(参考).同じことを繰り返さなければ、本番に生かせる。
A(参考).自分が失敗するパターンが分かった。
A(参考).良い緊張が集中力をもたらしてくれる。
A(参考).自分自身を変える大きなきっかけとなった。
注意点として、問題には適当に答えるのではなく、自分がしっかりと納得できる回答が必要です。そうすることで、プラスへの変換が強まります。
いつも優れた結果を出せる人は、いちいち上のような問答で確認することなく、どんな結果をもプラスに変換できる習慣が身に付いています。最終的に、そのような習慣を身に付けることができれば、かなり本番に強くなるはずです。
方法2:未来の明るいイメージを設定する
もう1つは、未来の明るいイメージとして、1~3年後ぐらいに達成したい具体的な目標を設定するやり方です。これを設定する際は、「~したい」という希望や願望の言葉ではなく、「~している」という現在形の表現を使用します。そうすることで、脳がそれを「現実」と錯覚し、自然にその状態を実現しようとするからです。
同じく受験生で考えるなら、「A大学に合格したい」という表現ではなく、「A大学に合格する」という強い表現です。
その上で、「現状把握」「目標達成」「その先の目標」に関する自問自答を行います。
現状を把握するための質問
A(参考).国語は合格ライン、数学は学力アップが必要。
A(参考).5~6段階。
目標達成した自分を想像するための質問
A(参考).「やったー!」
A(参考).友だちと楽しいキャンパスライフを送っている。
A(参考).念願の職業に就いて、世界中を飛び回っている。
その先の目標を目指す自分を想像するための質問
A(参考).海外留学。
A(参考).外資系企業や国際機関に就職。
A(参考).世界を股にかけて活躍する。
目標達成した時やその先の自分を想像する際は、決して現実的に考え過ぎず、夢を見るように楽しく想像するのがコツです。こうすることで、「A大学合格」という本来の目標は、達成できて当然の単なる「通過点」になりますので、結果的に、目標に対する心理的なハードルが低くなります。
以上のように、「目標を達成できて当たり前」と思い込むことで、本番のプレッシャーや緊張に打ち克ち、望む結果を引き寄せやすくなります。
マインドフルネス(瞑想)
上のようにしてプラスのイメージを持つことができたなら、あとは、本番で感じる「不安」をいかにして小さく抑えるかです。不安というのは、いくら模試で好成績を収めていても、何時間勉強していても、本番では必ず襲い掛かってきます。
そこで、マインドフルネス(瞑想)です。
マインドフルネスでは、幽体離脱しているように一歩引いたところから自分を冷静に眺め、そんな自分を認めることで、不安と一体化されている「自分」という主体性を取り戻す作業です。具体的な方法論については、たくさんの書籍が出ているので、それらを参考にしてみてくださいね。
マインドフルネスを身に付ければ、オリンピックレベルの選手が達している「フロー」「ゾーン」といった領域に入って、実力を出せるようになります。
- フロー = うまい流れに乗っている状態
- ゾーン = 極限の集中状態
本番に強い人というのは、「フロー」「ゾーン」といった最高の状態に自在に出入りする「スイッチ」を持っている人です。そのスイッチは、以下のようにして持つことができます(簡単ではありません。何度も何度もトライする必要があります)。
- まずは、「最高の状態」を少なくとも一度は経験しておきます。小さなテストでも何でもよいので、最高の自分を知っておくのです。
- その時の状態を言葉で書き出します。
- それを人に話します。
- その最高の状態をポーズで表現してみます。
- 最高の状態を一番強く感じた身体の部分を考え、それを手で押さえてみます。
- その押さえた部分が、今後のあなたの「スイッチ」です。
このようなスイッチを持てれば、本番直前にそのスイッチを押すだけで、最高の状態に簡単に入れるようになります。とっても便利なスイッチです。
ちなみに、マインドフルネスは、本番で失敗してしまった場合にも、そんな自分を一歩引いて眺め・観察することで自分をスッと立て直すのにも役立ちます。本番に強い人というのは、本番前の準備だけではなく、本番中の対処にも優れているのです。
さいごに
イメージトレーニングもマインドフルネス(瞑想)も、すぐにできるようになる類のものではありません。
日ごろから何度も実践して習慣化しておくことで初めて活用できるものです。そして、いったん習慣になってしまえば、その後は、どんな場面に出くわしても不安を感じず、落ち着いて対処できるようになります。まさしく一生の宝物です。