ネットや SNS の発達で、個人が万人に向けて情報を発信可能となり、それが評価され、場合によってはお金 💴 になって返ってくる時代になりました。
しかし、誰もが情報を発信できるようになった結果、ネット空間には膨大な数のコンテンツが溢れかえっています。そのように星の数ほどもあるコンテンツの中から自分の「作品」が選ばれるには、人の心(文章の場合は「読み手」の心)をつかむ技術が必要になります。
そして、このような時代背景がビジネスや教育の場面にも反映される結果、仕事や勉強を円滑に進めていくためにも、「人に読まれる文章」というのが大事になってきます。
そんな時代を生きてく子どもたちも、早い段階に「文章で人の心をワシ掴みにする」という経験をしておいて損はないでしょうから、小学生の作文や日記の書き方として、読み手の心を引き寄せる方法をまとめてみたいと思います。
その方法をひと言で表すなら、「個性と具体性」です。
「個性」が伝わる書き方
同調圧力の強い日本では長らく、出る杭にならず、人と協調する姿勢が尊重されてきましたが、近ごろの Youtuber や Twitterer を眺めていれば分かるように、他人との差別化には「個性」の重要性が増しています。Youtube や Twitter では、「実名・顔出し」が個性の1つとなるわけですが、作文や日記では、表現の中で個性を出すことになります。
会話文「」を使う
たとえば、
家族全員でキャンプに行った。
と、ただ事実を書いてもいいのですが、
お父さんが「キャンプに行こう!」と言い、家族全員が賛成した。
お父さんが「キャンプにでも行かない?」と言ったので、家族全員で相談した。
などと会話文を使うだけで、その家族の個性(お父さんの立場や家族との関係性)がにじみ出てくるため、読者に親近感を持って読んでもらえます。
比喩表現を使う
たとえば、
ごはんをたくさん食べたぼくのお腹は、大きなスイカみたいになった。
家族の個性を出すなら、
ごはんをたくさん食べたぼくのお腹は、妊娠中のお母さんのお腹みたいになった。
相撲好きな「ぼく」の一面を出すなら、
ごはんをたくさん食べたぼくのお腹は、朝乃山関のお腹みたいになった。
このような比喩表現を使うことで、「ぼく」の物事の見方、家族の様子、趣味や好きなものなどが伝わり、上の会話文と同様に個性がにじみ出て、読者の共感を得ることができます。
プロフィールを盛り込む
たとえば、「姉が二人いる私は、・・・」、「昆虫が苦手な僕は、・・・」、「私は、国語よりも算数が得意なので・・・」、「ぼくは、うどんよりもそばの方が好きなので・・・」などなど、自分の家族構成や趣味、好き嫌いなどを直接盛り込むことによって、同じような趣味・選好を持つ読者の心をさらに引き寄せます。
ただし、細かすぎるプロフィールや個人情報の取り扱いには、十分に気を付けましょう。これからの情報社会を生きていく上でのリテラシの勉強にもなりますね。
「具体性」が伝わる書き方
個性と同等かそれ以上に大切なのが「具体性」です。たとえば、「昨日、テレビを見た」と書くよりも、「昨日、アニメを見た」と書くよりも、「昨日、ドラえもんを見た」と書いた方が、その人の個性(趣味)がよりはっきりする上、読者がその場面を想像しやすくなって、文章に引き込まれやすくなります。
5W1Hを書く
文章を書く時の基本でもありますが、「いつ(when)」、「どこで(where)」、「だれが(who)」、「なにを(what)」、「なぜ(why」)、「どのようにした(how)」かを明確にすることで、読者がその場面をはっきりと認識できるようになって、書き手の世界に浸れるようになります。
つまり、その場にいなかった人(読者)に伝えるつもりで書く、ということです。
数字を使う
長さ、重さ、大きさ、時間、年齢、値段など、数字で表せるものは、なるべく具体的な数字で書くと、その対象を読者がイメージしやすくなりますし、文章自体の説得力が増します。これは、ビジネス文書やプレゼン資料を作成する際の基本でもありますから、体得すれば、小学生にして資料作成の素養を身に付けられることになります。
たとえば、
今日は、高い山に登って疲れた。
だけでは、疲労感や臨場感が全然伝わりませんが、
今日は、標高2033mの山に登った。
と数字を使うだけで、わざわざ「疲れた」と書かなくても、苦労して登山している様子が目に浮かんできます。そのあとに、
下山後、家まで走って帰った。
などと書いてあれば、読者の予想とのギャップが大きく印象に残りやすい上、書き手が尋常ならざる体力の持ち主であることが伝わり、👍です。良い意味で、読者の予想を裏切っていきましょう。
擬態語・擬音語(擬声語)を使う
いわゆる「オノマトペ」です。
擬態語というのは、「キラキラ」「もじゃもじゃ」「つるつる」「ぐんぐん」「さらっと」「バタバタ」「ぐちゃぐちゃ」「どんより」など、様子を表す表現です。擬音語は「ざあざあ」「ごろごろ」「ペタペタ」「ばたーん」「ドンドン」「がちゃがちゃ」など、擬声語は「にゃあにゃあ」「こけこっこー」「げらげら」「ぺちゃくちゃ」など、実際の音を表す表現です。
たとえば、
雷がものすごい音を立てて落ちた。
と書くよりも、
雷が、ゴロピカドッカンバリバリバリッ!と落ちた。
と書いてある方が、迫力や恐怖感、臨場感が伝わると思いませんか。
オノマトペは、書き手の五感で捉える「感性」がはっきりと表れる表現ですので、具体性が伝わることはもちろん、個性も強く現れます。効果的に利用すれば、読み手との心の距離をグッと縮めることができます。
まとめ
作文に際して、「会話文」「比喩表現」「プロフィール」「5W1H」「数字」「オノマトペ」を上手く利用すれば、個性と具体性が豊かな文章を作ることができ、その文章を介して、書き手と読み手の心が通じ合います。心が通じ合えば共感が生まれます。共感が生まれれば、その文章は読み手にとって「おもしろい文章」になります。
そういう面白い文章というのは、結局のところ、書いている本人にとっても、書くこと自体が楽しくなる文章なんですよね。なので、あまり細かいことを気にせず、自分自身が楽しくて、あとで読み返したくなる文章を書けばいいんですよね。
追記
以上は、個性や具体性が伝わりやすい「表現」の話ですが、それ以前の問題として、文章の材料集めから文章の構築までの詳しい手順については、以下にまとめてあります。