国内で製造されるすべての加工食品について、原材料の産地を表示する制度が 2017年9月から始まりました。そして、その4年半後の 2022年4月から完全に義務化されました。
産地表示を義務付けている国が少ない中、このようなルール変更に踏み切ったのには、産地を明確に表示することにより、「国産(日本産)」という安全・安心のブランド力を「輸入(外国産)」と対比させて、国産品の競争力を高めようとする狙いがあります。
ところが、制度の中身がかなり複雑でややこしく、表示ラベルを前にして、「どう見ればいいんだっけ?」と戸惑うことも少なくありません。
そこで、備忘録も兼ねて、変更後のルールを簡単にまとめておきます。
食べ物の安全・安心を考えるなら、買おうとしているチョコレートや、食べようとしているソーセージなどのルーツ(どこの国で作られ、どこの国からやってきたのか)ぐらいは把握しておきたいものです。
産地表示の対象品
表示の対象は、すべての加工食品です。
たとえば、ペットボトル飲料、レトルトカレー、ソーセージ、などなどです。

一方、表示の対象外は、以下の通りです。
- 外食
- 店内調理品
- 輸入された加工食品
- 包装されていない食品
表示の基本ルール
最も分かりやすい基本ルールは、こちらの通りです。
- (水以外で)一番重い原材料の産地が重量順に表示される
- 3カ国目以降は「その他」と表示される場合もある
注)「おにぎり🍙」の場合は、「国民食」との判断で、重量順が1位になることのない「のり」についても、産地表示されることになりました。
では、ポークソーセージを例として、基本ルールを説明します。
【例1】
原材料名:豚肉(アメリカ)、豚脂肪、食塩・・・
⇒ これは簡単です。米国産の豚肉しか使っていないことが分かります。
【例2】
原材料名:豚肉(国産、アメリカ)、豚脂肪、食塩・・・
⇒ これも簡単です。国産(日本産)と米国産の豚肉を混ぜて使っており、国産の方が多く入っていることが分かります。
【例3】
原材料名:豚肉(アメリカ、カナダ、その他)、豚脂肪、食塩・・・
⇒ 3カ国以上の豚肉が使われており、米国産 > カナダ産 >・・・の重量順であることが分かります。ただし、何カ国かは分かりません。また、米国とカナダ以外がどこの国かも分かりません。国産が混ざっているのかどうかも分かりません。

原材料がすでに加工品の場合
たとえば、チョコビスケットの原材料であるチョコレートは、「カカオ豆」から作られた加工品でもあります。このような場合、チョコビスケットの原材料表示は、以下の2通りが考えられます。
【その1】
原材料名:チョコレート(ベルギー製造)、小麦粉・・・
⇒ 原材料に含まれる加工品(この場合、チョコレート)は、「~製造」と製造地が表示されます。加工品であるチョコレートは、ベルギーでカカオ豆から加工されたことが分かります。
でも、これでは、カカオ豆の産地が分かりません。
そこで・・・
【その2】
原材料名:チョコレート、小麦粉・・・
原料原産地名:ガーナ(カカオ豆)
⇒ このように、原料(カカオ豆)の原産地が分かる表示となっている場合もあります。
消費者の立場としては、「ベルギー」「ガーナ」の両者が表示されている方が、情報が多くてありがたいですね。
では、もう一例、「そばの乾麺」の場合。
【その1】
原材料名:そば粉(国内製造)、食塩・・・
⇒ 原材料に含まれる加工品(この場合、そば粉)は、日本でそばの実から加工されたことが分かります。でも、そばの実の産地は分かりません。そこで・・・
【その2】
原材料名:そば粉、食塩・・・
原料原産地名:中国(そばの実)
⇒ このように、原料(そばの実)の原産地が分かる表示となっている場合もあります。
ややこしい「または表示」と「大くくり表示」
仕入れ先がよく替わる場合などは、上の基本ルールの例外となります。販売業者の表示変更(容器包装の変更)の手間や無駄をなるべく抑えるためです。
この場合は、過去の使用実績に基づいた表示となりますので、あくまでも「目安」ということになります。
ここでも、ポークソーセージを例として、4種類の表示方法を説明します。
【「または」表示 : その1】
原材料名:豚肉(国産またはアメリカ)、豚脂肪、食塩・・・
⇒ 過去の使用実績としては、国産(日本産)> 米国産 の重量順であることが分かります。ただし、「目安」ですので、逆転(米国産 > 国産)の場合もありますし、国産ゼロの場合もありますし、米国産ゼロの場合もあります。
【「または」表示 : その2】
原材料名:豚肉(アメリカまたは国産〈5%未満〉)、豚脂肪、食塩・・・
⇒ 過去の実績でほんの少ししか使われていない産地は、誤解を与えないように「5%未満」と明記されます。
【大くくり表示 】
原材料名:豚肉(国産、輸入)、豚脂肪、食塩・・・
⇒ 3カ国以上の外国産地の比率が変動する場合などは、「輸入」と括って表示することができます。この例では、国産(日本産)> 輸入(外国産)の重量順ですから、国産の豚肉が 50%以上使われていることが分かります。ただし、輸入原材料について、どの国から(何カ国から)のものをどのような比率で使用しているかは分かりません。
【「または」+大くくり表示】
原材料名:豚肉(国産または輸入)、豚脂肪、食塩・・・
⇒ 過去の使用実績としては、国産(日本産)> 輸入(外国産)の重量順であることが分かります。ただし、「目安」ですので、逆転(輸入 > 国産)の場合もありますし、国産ゼロの場合もありますし、輸入ゼロの場合もあります。
まとめ
以上をごく簡単にまとめると、このようになります。
- 基本は重量順
- 「~製造」は加工地を示す(原産地ではない)
- 「または」表示の重量順は目安
表示ルールが少々複雑で、慣れるのに時間が掛かりそうですが、表示内容を正しく理解して、安全・安心な食生活を送りたいものですね。