敏感の彼方に

HSPエンジニアがお送りする、前のめりブローグ

自動運転は欧米でも日本でもなく「中国」の独壇場になると思う

 

 

今から10日ほど前の3月18日、ライドシェア大手の Uber社(ウーバー)が米アリゾナ州で行っていた完全自動運転車の走行テストで、歩行者の女性がはねられ、搬送先の病院で死亡が確認される、というニュースが大きく取り上げられました。

 

2年近く前にも、米フロリダ州にて、Tesla社(テスラ)「モデルS」の簡易自動運転中の死亡事故が発生していますが、今回の Uber社の事故はこれと異なり、アリゾナ州のガイドラインに則った実証試験中の出来事であるため、Uber社に 100%の責任があるとともに、「完全自動運転車が史上初めて死亡事故を起こした事例」(つまり、機械が人をひき殺した最初の事例)と受け止められています。

 

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このようなニュースに衝撃を受けていたら、そのわずか5日後に、今度は中国から、自動運転車用の臨時ナンバープレートが当局から発給され、自動運転車の正式な路上テストが開始となった、というニュースが入ってきました。

 

米国で史上初となる事故が起こった一方で、中国では自動運転の実用化が着々と進んでおり、そのコントラストが際立つ一週間となりました。

 

そして、この2つのニュースから、「自動運転は欧米でも日本でもなく、中国の独壇場になるのではないか」という思いを改めて強くしました。

 

自動運転が普及する条件

現在、欧米や日本、中国を中心として、さまざまな企業による自動運転車の走行試験が行われており、自動運転のキモである人工知能(AI)専用のチップも高性能化して、自動運転技術は確実に発展してきています。おそらく、技術面では、2020年前後にも自動運転はほぼ確立するのではないかと考えます。

 

ただし、その技術が世の中に普及するかどうかは、また別の話です。筆者の考えですが、自動運転の普及には、以下3つの満たすべき条件があります。

1.技術の高さ

当たり前のことですが、技術が確立しなければ普及しようがありません。

2.ニーズの高さ

どんなに優れた技術でも、多くの人が「欲しい」と思わなければ、その技術が日の目を見ることはありません。特に「機械が人を殺し得る」自動運転技術は、誰もが躊躇なく「欲しい」と思える技術ではないため、どれだけニーズがあるかが普及の鍵となります。

3.安全意識の低さ

上の「ニーズ」とも関係しますが、小さくないリスクを伴う技術は、現代の日本のように安全意識が「高まり過ぎている」社会には、なかなか受け入れられません。戦後、今よりも事故率がはるかに高かった自動車が社会に受け入れられたのは、その便益がリスクを上回っていたこともありますが、それ以上に、現在よりも「死」が身近にあったことが、結果的に受け入れの障壁をグッと低くしていたのではないかと想像します(以下の記事でも触れていることです)。つまり、「安全意識が低いほど、受け入れの余地が大きい」ということです(怖いことですが・・・)。

www.overthesensitivity.com

 

欧米・日本・中国・インドの状況

そこで、上記3つの条件が現時点でどの程度満たされているかを、米国、ドイツ(最も自動運転に近いと考えられる欧州代表)、日本、中国、インドの5カ国について、一部定性的ではありますが、考えてみることにしました。その結果が以下の表です。

 

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「〇」は条件が満たされていること、「×」は条件が満たされていないこと、「△」はその中間を意味します。つまり、「〇」が多いほど、自動運転の普及条件がそろっていることになります。

 

「技術の高さ」について

Google や Uber などによる自動運転テスト走行のニュースや、各国の自動車メーカの市場投入計画などを参考にして、定性的に判定しました。やはり欧米がリードしていると考えられます。

 

「ニーズの高さ」について

過去記事『【自動運転】50年前より240倍安全な車が普及する未来の「死」』の内容を参考に、「乗ってみたい」という人が中国やインドは圧倒的に多く、日本は圧倒的に少なく、欧米はその中間、という位置付けで定性的に判定しました。

 

「安全意識の低さ」について

過去記事『【自動運転】50年前より240倍安全な車が普及する未来の「死」』を参考に概算した結果、死亡事故発生率は、インドが「200台当たり1件」、中国が「2,000台当たり1件」、米国が「4,000台当たり1件」、ドイツが「1万3,000台当たり1件」、日本が「2万台当たり1件」となりましたので、それに基づく判定です(「事故発生率が高いほど、安全意識は低い」という考えです)。

 

 

 

自動運転は中国で一番最初に実用化・普及する

自動運転は中国で一番最初に実用化・普及する

 

上の表をベースに考えるなら、「〇」2つで「△」1つの中国が、自動運転の実用化・普及に最も近い、ということになります。その次が米国またはインドで、日本は「最も普及し難い」状況にある、と言えます。

 

「ニーズ」と「安全意識」は相関するため、自動運転の技術が進んで安全性が高まっていけば、便益がリスクを大幅に上回って、日本でもニーズが高まってくると予想されますが、昨今の Tesla社や Uber社のニュースが示すように、「自動運転車は安全なのが当たり前」という認識が強く、ひとたび死亡事故が起きればメディアで大々的に取り上げられますので、まだしばらくは日本に不利な状況が続くんでしょうね。

 

まとめ

かなりアバウトですが、自動運転が中国で一番最初に実用化・普及しそうな理由を書いてみました。

 

中国が有利なのは、急成長している技術力もさることながら、主要先進国と比較して交通事故率が高く、それが皮肉にも「自動運転車のテスト走行を行いやすい環境」をもたらしている側面がある点です。

 

また、「世界一の超大国(テクノロジも含む)」を目指す社会の高揚感や、一党独裁という特殊な政治体制なんかも、「自動運転」という相応のリスクを伴う技術の導入にはプラスに働くのかもしれません。

 

このように、ある意味「恵まれた環境」を他国の企業のテスト走行などに開放するとも考えられませんので、中国では、大小の事故を起こしながらも着々と走行データを蓄積して、人工知能(AI)の学習面でも大きくリードしていくことでしょう。

 

安全意識が「高まり過ぎている」社会には、リスク大の技術はなかなか浸透しません。

 

 

 

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