夏休みは、できる限りたくさん休みを取得して、家族との時間を大切にします。
今年は、1泊の海水浴旅行と、1泊の夜間登山と、そして最後に、2泊の「立山黒部アルペンルート」の旅を満喫しました。「満喫」と言っても、夜間登山は危うく遭難しそうになるぐらい過酷な旅だったわけですが・・・。
これらに加えて、ムスコNは、習い事で鳥取県の大山(だいせん)にも3泊してきましたので、ひと夏に日本百名山のうちの3つを訪れたことになります。すっかり山男です。
数十年ぶりの「立山・黒部」
子どもの頃、夏休みに立山・黒部観光に連れて行ってもらい、山腹に残る雪渓、数々の珍しい高山植物、雄大な黒部ダムの景色に圧倒され、とても感動したのを覚えています。
同じ経験を子どもたちにもさせてあげたいと思い、4月から計画を立てました。実際に訪れてみて、同じように「2~3世代にわたって感動を受け継いでいる」と思われる家族連れにたくさん出会いました。
5月初旬に JTB 経由でホテル(ホテル立山 & 弥陀ヶ原ホテル)を予約しましたが、この時点で、JTB 枠はほぼ 100%埋まっていました。毎年のように訪れるコアなファンがいる上、アジアや欧米からの観光客も増えており、お盆過ぎのピークから少し外れた時期とは言え、有名ホテルは早々に埋まってしまいます。
雨・あめ・アメ・・・
今回は、宿泊の都合もあり、長野県側から富山県側に抜けるルートをたどることになりました。JR大糸線の『信濃大町』駅まで「特急しなの」を利用し、そこからバスやケーブルカー、ロープウェイなどで立山連峰を含む飛騨山脈(北アルプス)を越え、富山地方鉄道の『立山』駅まで下りてくる、2泊3日の長旅です。途中、最高地点(標高 2,450m)の室堂では、立山連峰の主峰である「雄山(標高 3,003m)」にも登る計画です。
今回の旅に限らず、山行は、天気との闘いです。山の天気は本当に変わりやすい。今回はお盆過ぎということで、山は早くも「秋雨」の影響が出てきます。予約の時点では、晴れることしか考えていなかったのですが、数日前から雨の予報が消えず、その予報のまま当日を迎えてしまいました。
それでも、『信濃大町』駅に着くまでは晴れていましたし、そこから麓の「扇沢」に移動する間も晴れ間が見えていましたし、「晴れ男の本領発揮!」という勢いがありました。・・・が、電気バスで黒部ダムに到着してみたら・・・大雨!
仕方がないので、やけくそ気味に「黒部ダムカレー」をかっこんで(これが、やけに美味い!)、「立山・黒部 雨中の旅」を楽しむ計画でも考えることにしました。
結局、2日目の昼前後から21時前後までの数時間を除いて、ずーっと雨でした。その数時間も、ほとんど雲かガスに覆いつくされ、太陽を見たのは、日没の1~2時間だけです(それでも、弥陀ヶ原ホテルでの夕食時にサンセットを見られたのは、ラッキーでした。絶景です)。天気ばかりはどうしようもないと頭では分かっていても、心は無念。
一番楽しみにしていた雄山(標高 3,003m)の登山も、断念せざるを得ない天気でした。ひどいガスで視界が悪く、時に突風が吹きすさぶ悪コンディションのため、地元の小中学生のパーティも登山を中止していました(ガイドさんによると、地元・富山の半分ぐらいの学校で、夏休みに立山登山を実施するそうです)。
アルペンきっぷ購入時の注意事項
ところで、信濃大町駅(長野県) ⇔ 立山駅(富山県)間は、7種類の交通機関(バスやケーブルカーなど)を乗り継ぐことになります。この7種類のうち、6種類は選択の余地が(ほぼ)ありませんが、「信濃大町駅 ~ 扇沢」間(18km、所要40分)は一考の余地ありです。
旅行代理店などで立山黒部の旅を予約する場合は、深く考えずに路線バスを予約するケースが多いと思いますが、同行人数によっては、タクシーを利用する手もあります。
この路線バス、運行本数が少なく、特に12時台や14時台は、1時間待ちとなってしまう場合もあるのに、決して安くありません(大人 1,360円、小人 680円 : 2019年8月現在)。
今回のように雨の予報の場合は、少しでも早く黒部ダムに行きたいのに、バス待ちのため足止めを食らってしまう可能性もあります(バスの時刻は、必ずしも電車の時刻とリンクしていません)。
一方、この区間でタクシーを利用すると、だいたい 6,400円で扇沢まで行けます。路線バスの大人4~5人分の料金と同じです。大人4人ではタクシーの方が高くなってしまいますが、信濃大町に着いてから待ち時間ゼロで移動できますし、移動時間自体もバスの半分程度となり、合計1時間前後の余裕が生まれます。4人前後で旅行の場合は、時短の一手段としてご参考ください(※ ピーク時期は、タクシーが無くなってしまう可能性もあるため、注意が必要です)。
【持ち物】雨具と防寒具は必携
服装や持ち物については、こちら(↓)のページで季節ごとにまとめられていますが、晴れの予報でも雨具は持っていきたいところですし、夏でも防寒具は必要です。
上にも書いたように、山の天気は急変します。みくりが池やホテルの周辺を散策する程度なら、雨が降っても傘で対応可能な場合が多いものの、高地なので雨とともに猛烈な風が吹いて、傘では使い物にならないコンディションとなる場合もままあります。やはり、カッパ(レインコート)は持っていきたいところです。
また、雨天の場合は、気温も下がります。ボクらが最高地点(標高 2,450m)の室堂で過ごしている間、気温は 13℃前後でしたが、風速1m/s で体感気温が1℃ 下がると言われている通り、風が強い時間帯には、一桁の気温を肌で感じることとなりました。ウィンドブレーカや長袖などの防寒具は必携です(特に、綿が少なくて乾きやすい素材のもの)。
重宝したのが、ホテル貸し出しの長靴と登山ストックです。ホテル立山のチェックイン時には特に説明がなかったのですが、フロントから後ろを振り返って右手に、階下へと降りる階段があり、それを下りていくと「会議室」と「貸ロッカー」コーナーが、さらに下りると、長靴や登山ストックが各サイズずらりと並んでいます。
もちろん、登山靴やトレッキングシューズ(子どもは、溝が深めの運動靴)を履いていったのですが、嵐のような大雨の中では、雨具を着用しても靴の中までズブ濡れになってしまい、その後の旅が不快なものになってしまいます。悪コンディションで雄山(標高 3,003m)にも登れない状況では、近場を散策するのに、登山靴やトレッキングシューズよりも、長靴の方が重宝します。この点、ホテル貸し出しの長靴を利用できて、ものすごく助かりました。見落としがちですが、重要なポイントです。
また、目立たない場所にあるため、これも見落としがちなのですが、「会議室」の奥に「乾燥室」があり、濡れた雨具や衣類を短時間で乾かすことができます。雨天の中、少しでも快適な旅にするため、利用できるものは大いに利用しましょう。
雨天のお楽しみ
雨天なら雨天なりの楽しみを見つけるしかありません。晴天なら通り過ぎたり見過ごしたりしてしまうポイントを楽しめばよいのです。
立山自然保護センター
室堂平のターミナルに併設されており、雨でも余裕のアクセスです。立山の地理、自然、歴史、文化など、いろんな知識の宝庫です。晴れていたら、立ち寄る時間が無かったかもしれません。
tateyama-shizenhogo-c.raicho-mimamori.net
ホテルライフ
子どもたちに意外と好評なのが、「のんびりホテルライフ」です。旅行先では、貧乏根性でついつい外出を急いでしまいますが、子どもには、日常から離れたホテルや旅館の空間がものすごく楽しみだったりするわけです。
ホテル立山の大浴場は、サイズ的には小ぢんまりとしていますが、すごく落ち着いた雰囲気が気に入りました。弥陀ヶ原ホテルの大浴場は、眼下に広がる景色に魅了され、ついつい長風呂となってしまいます。「サイコー ‼」のひと言ですね。
特にホテル立山は、洋食ディナーも人気です。予約時は、和食しか空きがなくて、洋食のキャンセル待ちとなりましたが、チェックイン時に洋食が可能と告げられて、小躍りしました。確かな大人の味わいです。高所で酔いが回りやすいため、アルコールは控えめに!
一瞬を逃さない
「山の天気は変わりやすい」ということは、雨が降り続いている状況でも、数分~数十分単位で雨が止む瞬間もあるわけです。その時間には、外に出ましょう。まるで絵画のような世界が旅人を待っています。
日本一高い場所にある天然温泉
晴天で登山やアクティビティに夢中になっていたら、これもスルーしていたかもしれません。
室堂ターミナルから徒歩数分。標高 2,410mにある日本一高所の天然温泉です。白く濁る100%掛け流しのお湯に、湯の花も沈殿しており、源泉の硫黄の香りがプンプンします。大雨が止んだ一瞬を見計らって、霧の視界不良の中たどり着きました。
趣のある山小屋風の造りに、小ぢんまりとしながらもどっしりとした重厚感が印象的なお風呂です。悪天のためお客さんも少なく、ほぼ貸し切り状態でした。雰囲気が良いことはもちろん、「日本一高所」の温泉に浸かる愉悦感は、ここでしか味わえません。
ビデオ上映会 & 星空観察
各ホテルでは、毎晩 20時前後から、ホテルスタッフや観光ガイドによるビデオ上映会が開かれます。立山の自然を映しながら、見どころや人気スポット、その年の自然の状況(高山植物の咲き具合や動物(ライチョウ、オコジョ、etc.)の目撃状況など)を解説してくれます。その後、天気が良ければ、屋外で望遠鏡を使った星空見学会となります。
今回はラッキーなことに、弥陀ヶ原ホテルの上映会で、立山ガイドの佐伯知彦さんが解説をしてくださいました。この方、令和初の日本人エベレスト登頂者かつ富山県民初のエベレスト登頂者にして、立山ガイドの礎を築いた佐伯平蔵(1878 ~ 1943)のひ孫にあたる方です。知る人ぞ知る有名な方です(もちろんボクも・・・・・知りませんでした! スミマセン (#^.^#))。
エベレスト登頂の裏話はもちろん、立山の自然にまつわる話をたくさん聞かせていただいた上、昼間に撮った鳥の写真がライチョウかどうかを確認していただく際に、一言二言お話もさせていただきました(「ライチョウ」ではなく、それに似た「ホシガラス」でした ⤵)。気さくな方で、とっても楽しいひと時となりました。
晴天だったなら、歩き疲れて上映会にも出ず、眠りこけていたかもしれません。雨天だからこその貴重な巡り合わせとなりました。立山をものすごく身近に感じるようになりました。
旅のあとがき
たった2泊3日の旅なのに、佐伯知彦さんのお話を聞けたこともあり、立山・黒部を第2、第3の故郷のようにまで感じています。雨天で果たせなかった数々の夢が、遠い目標となってそう感じさせるのかもしれません。
富山県側の立山駅まで下りてきて、同駅で購入した握りたてのおむすび🍙をほお張りながら、遠ざかる立山連峰や北アルプスの山々を目に焼き付けるように眺め続けました。まるで夢の中の出来事のような、2泊3日の旅でした。
ツマや子どもたちと、「またいつかリベンジしようね」と話しながら、本当の夢の中に入っていきました。サヨウナラ、立山。サヨウナラ、2019年の夏。