
フリーランサーとしてもサラリーマンとしても、眠くて無駄な会議に散々付き合わされてきました。日本企業の長時間労働や生産性の低さは、時間ばかり長くて意思決定の伴わない「カイギ」に集約されています。このネット時代に迅速な意思決定ができなければ、それは組織としての「死」を意味します。
「眠い」「つらい」「無駄だ」と思う気持ちから「カイギ」の問題点をあぶり出してみると、そのほとんどは、「ゴールがない」「課題がはっきりしない」「年功序列」という3つにたどり着くんじゃないかと思います。
ゴールがない
会議が何のためにあるかと言えば、情報を共有し、意思決定し、決定事項を共有し、それを次の行動につなげていくためです。情報共有や意思決定のためだけならば、わざわざ1箇所に集まる必要などありません。やはり大事なのは、担当を決めて次の行動につなげることです。これが明確なゴールです。
このようなゴールのない会議は、ほぼ 100%無駄です。
情報共有のためだけに、わざわざ時間を割いたり遠方へ出張したりする。そのために、時間を掛けて大量の資料を準備する。「定例会議」と称する思考停止会議のため、同じ曜日の同じ時間に何となく集まり、何となく意見交換する。自分ひとりで抱え込むのがイヤなので、人を集めて責任を分散させる。会議が仕事だと思い込み、会議をしていること自体に陶酔してしまっている。これらすべて、ゴールがありません。
また、夜の会議も要注意ですね。その日の業務で頭が疲れ切って思考がまともに進まない上に、社外からの電話やメールも途切れるため時間がいくらでもあるかのように錯覚してしまい、エンドレスになること必至です。
ゴールのないことが、長時間会議の一番の元凶です。
課題がはっきりしない

クライアントに呼ばれて先方の会議に出席してみると、その場で初めて、先方社内での課題共有が始まる、という場面に未だによく出くわします。こういう会社は、「打ち合わせに出てみて、初めて課題(アジェンダ)を知る」ということがクセになっているため、会議の進み具合が異様に遅く、イライラが爆発しそうになります。情報や課題を事前に共有する習慣を身に付けるだけで、会議の効率は爆発的に良くなります。
また、目的や課題がそもそも明確になっていない場合も多々あります。問題解決を目的とするのか、意思決定なのか、アイデア出しなのか、情報共有なのか、・・・。目的・課題がはっきりしない会議は、とかく長時間になりがちです。運悪くこの手の会議に出席する羽目になった場合は、睡魔とどうやって闘うかが一番の課題になります。
年功序列
トップダウン型の会議それ自体は悪くないのですが、年配上司の知識や輝かしい経歴をひけらかす場となっていたり、若手のアイデアや発想が全く聞き入れられない雰囲気であったりしては、何も意味がありません。
また、担当を割り振った後の実際の行動が本来の仕事であることを十分に理解しておらず、割り振る前の会議に時間をかけ過ぎる上司も問題です。
あとは、旧来型の日本的大企業に多いパターンですが、経営層や上位管理職が出席する会議の準備のために召集される「事前会議」や、その事前会議の事前の会議、事前の事前の事前の・・・なんてこともありますね。自分のことを「偉い人」と勘違いしている経営層と、それを忖度する中間層が作り出す、エンドレス「事前」ですね。 何やってるんでしょうか。無駄なプライドが無駄な会議を生み出します。
いろんな会議改革

今まで、無駄に眠い会議にたくさん出席してきましたが、一方で、さまざまな工夫をこらしている事例にも出会ってきました。
立ち会議
「疲れるから早めに切り上げたい」という人間の心理を利用した方法ですね。会議は休憩する場所ではない、ということです。採用している会社も確実に増えていると思います。以前訪問したクライアントで、社外のボクも含めて立ち会議だった時は、さすがにビックリしましたが、とても新鮮で面白かったことを覚えています。
ルール明文化会議
事前に議題(アジェンダ)と時間配分を出席者に伝えておき、会議終了後には、決定事項とそれぞれの担当者を議事録にはっきりと残すことをルール化します。当たり前といえば当たり前なのですが、そのルールを明文化することに大きな意味があります。「全員が何となく理解していること」と「ルールがあること」では、結果が大きく異なります。
真っ白会議
研修か何かで、アイデア出しの練習をする時に経験しました。壁も机も真っ白で、模様は一切ありません。パソコンやスマホも持ち込みません。持ち込むモノは、紙切れとエンピツだけです(ボールペンやシャーペンは、手でイジるからダメ)。無駄なものが極限まで排除された部屋にいる人間は、視覚や聴覚などの無駄な刺激を受けることなく、ひたすら頭の中にある情報をこねくり回してアイデアを創出しようとします。感覚が研ぎ澄まされる上、その牢獄のような場所から早く出たい一心で、集中力を一気に高めて課題を解決しました。
テント会議
経験はありませんが、少し前から話題になっていますね。気持ちよさそうです。
サウナ会議
上の「テント会議」と同じく、環境を変えることで心身をリラックスさせ、アイデア創出や効率化を実現させるものです。経験者に聞くと、確かにアイデアが湯水のように湧いてきたとのこと。いくら考えても解決策を見い出せないのに、帰宅してお風呂に入ると、急にアイデアが湧いてくる、という経験は数知れずしてきましたので、うなずけます。
時間徹底会議
長時間会議を分かりやすく回避するには、時間を徹底的に管理するのが有効です。たとえば5人程度のグループごとに、1つのテーマについて、説明5分、議論10分、まとめ5分というように、タイマーで時間をしっかりと管理します。しかも、1人1回以上は必ず発表するようにし、その1回の発表も、15秒以内となるように時間管理を徹底します。そして最後に、各グループの結果を10分ほどで集約します。各人の公平感を保ちつつ、時間が有限であることを強烈に意識付けることができます。
ガラス張り会議
上の「真っ白会議」とは逆に、会議室を全面ガラス張りにして、中の様子が外から丸見えとなるように設計したものです。大手鉄鋼メーカを訪れた際に経験しました。会議室の前を通る人は、必ずチラッと一瞥していきますので、見られている感が半端ないです。眼も合います。どのようなテーマについて、どのような雰囲気でどれくらいの時間を掛けて議論しているかが丸見えですので、ダラダラと会議するのを恥ずかしく感じます。ただし、慣れてしまうと効果も少なくなるような気がします。
発言強制会議
以前勤めていた会社で、「発言予定のない人は出席の必要なし」という注記が書かれた会議案内を受け取ったことがあります。発言予定がないということは、「聞いているだけの人」ということです。確かに、聞いているだけでは当事者意識がかなり乏しくなり、議論の内容も脳ミソを素通りする可能性が高いでしょうから、出席する意味はあまりなさそうです。そういう人には、会議に出るよりも、自分の業務に没頭しもらった方が効率良いわけです。また、「必要なし」と言われると、逆に議題を何とか見つけて出席しようとする心理が働く人もいますので、議論が活性化する効果もあり得ます。ただし、消極的な人は、会議に1つも出席しなくなる可能性もあるため、公平性を維持したり情報格差を無くしたりする配慮は絶対に必要です。
サクサク進行会議
「あまり関係のない部署の人がいるなぁ」と思っていたら、会議の進行や時間管理、発言の割り振りや担当決めなどをテキパキと進める「プロ司会者」のような位置付けの人が仕切る会議に出席したこともあります。あれよあれよという間に会議が終了となりました。あんなに気持ちの良い会議には、なかなか出会う機会がありません。普通の打ち合わせでは、主催者が会議を回していきますが、必ずしも司会進行が上手いわけではないため、どうしてもサクサク感がなくなりがちです。社員一人ひとりの会議運営能力を高めることが、生産性向上につながるんじゃないかと思えます。
あとがき
無駄な「カイギ」は、ただ単に時間が無駄になるばかりではなく、今後絶対に必要となってくる「生産性向上」の意欲をも阻害する魔物だと思っています。逆に、意識改革と事前準備さえ徹底すれば、労働時間短縮やモチベーションアップを必ず実現できます。