不眠症でもないし、翌日に何か心配事があるわけでもないのに、わけもなく眠れない夜ってありますよね。心と身体のバランスが乱れているのかもしれません。

でも、決して「病気」というわけではないのです。
そんな時は、ついついスマートフォンに手が伸びてしまうのですが、スマホの画面の向こう側は、底なし沼のようなもの。面白い記事や動画であふれていますし、SNS や LINE の通知もひっきりなしで、脳が刺激されて余計に眠れなくなってしまいます。
こんな「病気じゃないけど眠れない夜」こそ、本に頼るのが一番です。
とは言え、話の長~い本では、区切りがはっきりしませんし、面白いと次々ページを繰りたくなってしまいますし、またまた眠れなくなってしまいます。
そこで、筆者の経験から、短編やショート集、ショート・ショートなどの読み切りを中心に、面白い書籍や明日への活力になってくれる書籍、心地よい夢に誘ってくれそうな書籍などを紹介したいと思います。
それでは、おやすみなさい。
ショート・ショートの王道 - 星新一『ボッコちゃん』
「ショート・ショート」というのは、1話が数ページで読める短い物語を集めた短編集なんですが、この「ショート・ショート」を語る際に絶対外せないのが星新一さんです。
SFからミステリー、コメディに至るまで、温かかったり不思議だったり未来予想的であったりする濃厚な作品をたくさん詰め込んだ著書が何冊もあります。
その中で一番のおススメが、この『ボッコちゃん』です。この本に出会って、星さんを好きになったり、読書そのものが好きになったりした人もたくさんいます。
星さんの自選 50 編が詰まった不朽の名作で、これを読めば星さんの凄さが一発で分かります。小学校高学年ぐらいから読むのに適していると思いますが、大人でも十分に楽しめる一冊です。
筆者は、『マイ国家』も好きですね。子どもの頃より、大人になってからの方が、面白さが倍増した気がします。皮肉とユーモアたっぷりの 31 編です。
何十年も前の本なのに、今でも十分に楽しめてしまえるところが、星作品の凄さです。うちの子どもたちも、寝る前のお楽しみとして、星さんに大変お世話になってます。
ショートなミステリー - 蒼井上鷹『4ページミステリー』
ミステリー小説というのは、事件の発生からトリックの解明に至るまで、かなりのページ数を使って話を展開するのが普通なのですが、その常識を覆したのがこちらです。
ミステリー小説の一番おいしい部分だけを4ページに凝縮した作品を、60 編ものショート・ショートとして収録しています。
ほのぼのしたり、ホロっとしたりする作品も収録されています。寝る前だけじゃなく、通学通勤中の電車内や病院の待ち時間などにも適した1冊です。
心温まる人生指南 - 松下幸之助『道をひらく』
パナソニック(旧 松下電器産業)の祖にして「経営の神様」でもある松下幸之助 翁の著書『道をひらく』は、見開き2ページに1項目ずつ、全部で 118 項目の珠玉の言霊が並んでおり、就寝前に1項目ずつ読んでいくのに丁度よい文字数です。
その中の第1項「道」を引用しておきます。
自分には自分に与えられた道がある。天与の尊い道がある。どんな道かは知らないが、ほかの人には歩めない。自分だけしか歩めない、二度と歩めぬかけがえのないこの道。広い時もある。せまい時もある。のぼりもあればくだりもある。坦々とした時もあれば、かきわけかきわけ汗する時もある。
この道が果たしてよいのか悪いのか、思案にあまる時もあろう。なぐさめを求めたくなる時もあろう。しかし、所詮はこの道しかないのではないか。
あきらめろと言うのではない。いま立っているこの道、いま歩んでいるこの道、ともかくもこの道を休まず歩むことである。自分だけしか歩めない大事な道ではないか。自分だけに与えられているかけがえのないこの道ではないか。
他人の道に心をうばわれ、思案にくれて立ちすくんでいても、道は少しもひらけない。道をひらくためには、まず歩まねばならぬ。心を定め、懸命に歩まねばならぬ。
それがたとえ遠い道のように思えても、休まず歩む姿からは必ず新たな道がひらけてくる。深い喜びも生まれてくる。
優しくて温かい言葉遣いですので、心を落ち着けるのにもって来いですし、仕事やビジネスのみならず、人生そのものの本質を教えてくれます。明日が来るのが楽しみになります。
前から順番に読むのではなく、「今日はココ!」と適当にページを繰って、出てきた項目を読むのも良いですね。そこに書かれている内容を明日の目標にしてみたりして。
力強く明日を突破する - 齋藤孝『座右のニーチェ』
ニヒリズム(虚無主義)の大哲学者ニーチェは、既成概念や慣習など、人々が当たり前として受け止め、思考停止してしまっているものを常に疑い、新しい価値観を提示し続けました。その大著『ツァラトゥストラ』から、人間を鼓舞して勇気づけてくれる言葉を齋藤孝さんが集め、解説してくれるのがこちらです。
1つの言葉につき、3~4ページほどの解説が付いています。日々の雑事に追われて思考停止してしまった脳ミソにガツンッと響きます。
恐れや油断など、大人になって心にこびりついた精神の垢を、きれいさっぱりと洗い流してくれることでしょう。
上の『道をひらく』と同様に、「今日はココ!」と適当にページを繰って、出てきた項目を読むのも良いですね。そこに書かれている言葉を心に刻んで明日を迎えてみると、それが意外に役立ったりします。
数十年前のブラックユーモア - 筒井康隆『笑うな』
タイムマシンを開発した研究者たち。彼らが最初のタイムスリップ先に選んだのは、数十億年前でも古代でも中世でもなく、マシンを完成させたばかりの「ついさっき」なんですが、その光景を見た彼らは、なぜか笑いが止まらなくなります。
そんな不可思議な作品をはじめ、明らかに実在の団体を皮肉った作品や、表現が際どすぎて今なら発表できなさそうな作品など、筒井ワールド全開です。
数十年前のブラックユーモア満載の中、「常識は疑うもの」という常識がいつの時代にも当てはまることを教えてくれる作品です。
これを読んで、明日起こるであろう「常識」を疑う準備をしておくことにしましょう。
さいごに
さて、良さそうな本は見つかりましたか?
その本がいくら面白くても、次々にページを繰っていくのではなく、その日に読むと決めた1編なり1項なりをじっくりと噛みしめるように読むのがおススメです。
それでは、おやすみなさい。
眠れぬ夜は、日記もおススメです。