敏感の彼方に

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【山本太郎メモリーズ】メロリンQの「れいわ新選組」が政党になった日

 

 

 

第25回参議院議員選挙が間近に迫る中、政治団体「れいわ新選組」とその代表である山本太郎氏に対する注目度が徐々に高まっていますね。

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史上最低の投票率が予想され、その結果として自民党(+改憲勢力)の無難な勝利が確実視される中、2017年秋の衆院選時の(旧)希望の党(小池百合子代表)や立憲民主党(枝野幸男代表)のように盛り上がる「ネタ」に乏しい今回の選挙で、各種メディアが唯一期待するのが、この「れいわ新選組」と「山本太郎氏」の動向です。

 

衆目を集めて無党派層を取り込めば大化けできると(おそらく)踏んだ山本太郎氏は、奇抜な作戦を次々に繰り出していますね。

「れいわ新選組」の旗揚げ
 「令和」への改元で世間が盛り上がる 2019年4月下旬、1人で「れいわ新選組」を立ち上げて「便乗商法」呼ばわりされる一方、3億円近くまで急速に寄付金を集めています。今の勢いを考えると、まだまだ増えそうです。

ポピュリストもびっくりの公約
 「消費税廃止」「奨学金徳政令(奨学金チャラ)」「最低賃金1,500円」「デフレ脱却給付金(BI:Basic Income のような給付金)」などなど、我々庶民にとっては垂涎ものの公約が並んでいます。既成政党からは当然、「現実的に無理!」という声が多数上がっていますが、国民1人ひとりの心の琴線に触れれば、選挙としては大成功なわけです。閉塞感が充満している社会では、「現実性」は後回しにされます。

どうやって集めたの? 10人の刺客
 北朝鮮拉致被害者家族連絡会・元副代表の蓮池透氏、「女性装」で知られる東大教授・安冨歩氏、元セブンイレブン・オーナーの三井義文氏(7pay 問題と見事にタイミングが合ってしまっています!)、沖縄創価学会壮年部の野原善正氏(しかも、公明党代表・山口那津男氏と同じ東京選挙区からの出馬!かなりの危険球です!)などなど、何かと話題になるこれら著名人の出馬了承をよく取り付けられたものです。そして、集票力のある山本太郎氏が比例区出馬することで、その他9人の候補を担ぎ上げる作戦です。「総投票数の2%以上」という政党要件を満たす可能性大です。

 

以上のような数々の作戦と、選挙ネタが欲しい各種メディアの波長が合致した結果、選挙当日まで、れいわ新選組と山本太郎氏は、ますます注目を集めるものと予想されます。

 

このように破竹の勢いの山本太郎氏が、ここへ来て人々の耳目を集めている理由は、彼の破天荒な人生と無関係ではないでしょう。「何かをやってくれそう」という期待が寄せられるのは、これまでに「何か」をやってきたからです。

 

元気が出るテレビ!「ダンス甲子園」のメロリンQ


ダンス甲子園 山本太郎 メロリンQ ストロベリーQ

 

今から30年近く前、高校1年の時に「アジャコング&戸塚ヨットスクールズ」というインパクト十分なグループ名で、『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』の「ダンス甲子園」に出場した時の様子です。ヘビメタバンド JUDAS PRIEST の代表曲『PAIN KILLER』にのって強烈なダンスを繰り出し、最後に「キュ~!」と発して締めるパフォーマンスは、確かに「何か」を成し遂げています。

 

映画・テレビドラマ俳優

役者デビュー作は、映画『代打教師 秋葉、真剣です!』です。


代打教師 ダンスバーション

 

その後、『バトル・ロワイアル』(2000年)、『難波金融伝 ミナミの帝王』シリーズ、『EDEN』(2012年)などの話題作に出演したほか、テレビドラマでは、デビュー作の『しあわせの決断』(1992年)を皮切りに、NHK連続テレビ小説『ふたりっ子』(1996年)、NHK大河ドラマ『新選組!』(2004年)などに出演して、確かに「何か」を成し遂げています。

 

政治活動

東日本大震災から1ヵ月後の 2011年4月、反原発運動を開始し、俳優業から政治の世界へと傾倒し始めました。


連続対談「脱原発・自然エネルギー」39 山本太郎さん「3.11以前・以後」

 

2012年12月、政治団体「新党 今はひとり」を立ち上げて、第46回衆議院議員総選挙への出馬を表明した時の様子です。東京8区から無所属(日本未来の党・社会民主党支持)で出馬し、反原発や反TPP等を訴えたものの、次点で落選でした。以下の動画のコメント欄には、現在の「れいわ新選組」に対する熱い反応からは考えられないような、辛辣な意見が並んでいます。


山本太郎 今はひとり党 衆院選出馬12/1

 

その半年後、2013年7月の第23回参議院議員選挙では、生活の党、社会民主党、緑の党などの支援を受け、東京都選挙区から無所属で出馬・当選し、晴れて国会議員となりました。


2013参院選 東京都選挙区政見放送 山本太郎

 

ちなみに、2012~2013年に掛けては、反原発運動の一方で、結婚・離婚・出産などなど、プライベートなことでも世間をかなり騒がすこととなりました。

matome.naver.jp

 

また、2013年10月31日には、園遊会で明仁天皇に書簡を直接手交したことが大問題となりました。内容は、原発や秘密保護法に関するものですが、天皇陛下への請願そのものが法律に抵触する可能性があること、皇室の政治利用であること、儀礼を欠いた行為である点などが徹底的に批判されました。あれからもう、6年も経つんですね。


山本太郎、天皇陛下に園遊会で手紙を渡す一部始終

 

2015年初頭には、政党要件を失っていた生活の党(小沢一郎代表)に入党して、政党要件を回復させました。この際、党名を「生活の党と山本太郎となかまたち」に改めさせました(その後、2016年10月12日に「自由党」へと党名変更)。


生活の党と山本太郎となかまたち【全】1/27記者会見

 

2015年9月の参院本会議にて、新安全保障法制審議の採決では、喪服姿に数珠をもって登場し、安倍首相らに焼香する仕草で抗議の姿勢を示しましたが、あとで参院議長から大目玉をくらう事件もありましたね。


問責決議案 数珠持ち議場で焼香 山本太郎議員

 

与野党が激しく対立した2016年12月の環太平洋経済連携協定(TPP)承認案件では、参院本会議採決などで「1人牛歩」を敢行し、怒号の中でも意志の強さを見せつけました。


山本太郎 森ゆうこ TPP採決に牛歩「制限時間1分」12/9参議院・本会議

 

2017年3月の参院予算委員会では、森友学園疑惑の追及に際して、安倍首相の昭恵夫人の関与を印象づけるような「アッキード事件」という表現を使用して物議を醸しました。当然、安倍首相が激怒し、予算委員長から厳重注意を受けたことは、言うまでもありません。


「アッキード事件!」山本太郎 3/2 参院・予算委員会

 

そして2019年。小沢一郎氏が国民民主党との合流を決めたことをきっかけに離党し、4月に「れいわ新選組」を旗揚げすることとなりました。以下の政見放送では、視聴者の心に語り掛けるような口調、(特に若い)無党派層の心をくすぐるような内容、歯切れの良さ、落ち着いた安心感を与える表情など、どれも見事に洗練されています。動画のコメント欄も、賞賛の嵐となっています。


【字幕入り】政見放送・れいわ新選組代表 山本太郎 参院選2019

 

山本太郎氏の半生を振り返って

山本太郎氏が初めてテレビに登場してから、およそ 30 年間の動向を簡単に振り返ってみましたが、一貫しているのは、反権力・反秩序(というか、反予定調和)の姿勢です。そして、なにものにも怯まない行動力が、この方の一番の魅力でしょう。何があっても這い上がってくる力強さは、容易に真似できるものではありません。

 

しかも、反原発運動にのめり込み始めた8年前の彼に対する世間の評価があまりにも辛辣であったことを考えると、「れいわ新選組」の政見放送に見られる泰然とした態度が、奇跡のように思えてしまいます。8年という月日で人間は大きく変わり、それに対する世間の反応もこれほど変わるのか、と驚きを隠せません。

 

頭の回転がとても速い方であり、いろんな行動が計算高く、狡猾に見える部分もあるんだと思いますが、弱者に対する温かい視線は、間違いないと思えます。その熱い視線が再評価されるぐらい、社会がこの8年間で弱肉強食へと大きく進んでしまった、ということなのかもしれません。

 

 

 

さいごに

今回の選挙は何しろネタが乏しいので、選挙当日まで、山本太郎氏の露出はますます増えていくと考えられます。その結果、無党派層を取り込むことで得票を伸ばし、政党要件人数を満たして政治団体から「政党」になれる可能性も、かなり高いと予測しています。

 

「ポピュリスト」といえば、欧州のポピュリスト政党の先駆けとして、2015年の総選挙で華々しくデビューを飾ったギリシャのチプラス首相が、つい先日、ひっそりと首相の座から降りることになりました。巨額の財政赤字が発覚したギリシャに対するEUの財政緊縮策に対して、山本太郎氏と同様に「反緊縮」を掲げ、最低賃金の引上げや貧困対策を訴えるも、結局はEUに押し切られ、経済回復も実現できなかったことで、あえなく退陣となりました。

 

この日本でも、わずか2年前に希望の党や立憲民主党が注目されて党勢を拡大しましたが、その後に大きな「花火」を打ち上げられなければ、たったの2年で名称すら忘れ去られてしまう、ということがはっきりしました。

 

山本太郎氏も、反緊縮・反権力というポピュリズムの波に乗って勢力を拡大できたとして、それが急進的であればあるほど、その後に花火を上げ続けなければならないことなど、百も承知のことでしょう。選挙後の動向に、今から注目しています。

 

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