敏感の彼方に

HSPエンジニアがお送りする、前のめりブローグ

就活の「黒スーツ+白シャツ」が Appleジョブズ的発想であることを願う

 

リクルート スーツ 黒 個性 就活 入学 卒業

 

 

春は、企業の入社式や大学の卒業式・入学式のほか、3月に解禁となる就職活動の影響で、黒装束の集団を街のあちこちで見掛けます。春じゃなくても、「黒スーツ+白シャツ」に身を包んだ若者を見掛けると、それはほぼ 100%の確率で就活生だったりします。

 

「就職」へと続く葬列

自分が社会人になったころを思い返してみると、東京本社での入社式のために全国から集まったスーツ姿の新入社員数百名が、着慣れないスーツに希望や不安や眠気を包み込んで式会場へとゾロゾロ行進する様子は、周囲の人々にさぞ違和感なり威圧感なりを与えていたことだろうと想像するのですが、その当時よりも今の方が「」率が高くなって、葬列感が半端なくなってきているように感じます。

 

企業にとっては、新兵を補充する儀式が入社式なわけですから、その準備段階を「リクルート」と称したり、そのための画一的な服装を「リクルートスーツ」と呼んだり、戦時中のように服装の統制によって軍隊(会社)への忠誠や忠節を誓わせやすい状況を作り出したりすることは、合理的と言えば合理的なことです。

 

リクルートスーツを世に送り出す側のメーカや洋服店などにしても、そのような儀式で黒いスーツを着用することが一般的な礼儀・エチケットであるかのように喧伝し、その結果として黒いスーツを「制服」として大量に生産・販売できれば、こんなに楽で効率的なことはありません。黒いスーツと白いシャツだけを量産して販売すれば間違いないのですからね。

 

横並びと忖度を好む「日本株式会社」

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そして、どの業界でもお馴染みの「早期囲い込み」戦略により、大学の入学式に着ていく服を買いに来た学生に対しても、「就活にも使えますよ」という宣伝文句で黒スーツと白シャツ(女子なら、パンツスーツではなくスカート)がおススメされます。そのような「黒スーツ+白シャツ」の低年齢化により需要が増えれば、供給側にとっては、大量生産の恩恵がますます大きくなって都合が良いですね。

 

かくして、ランドセル業界などと同様に、機能性や個性などはとことん無視して、他人と横並びになることや長い物に巻かれること、一度決まったことは疑いもせず律義に守り続けることをとことん愛するボクら日本人は、大量生産体制を推し進めるメーカや洋服店の利益に一生懸命貢献し、少なくとも見た目の創造性や主体性などを学生に一切求めない企業の論理を一生懸命忖度するのです。

 

今世紀に入ってからより顕著になったこの「黒化」傾向ですが、これだけの就活売り手市場の中でもその傾向が強まって葬列が長くなる様子を見るにつけ、おそらくその原因となっている「横並び志向」や「忖度志向」というものがやがて、少子高齢化や人口減少、国際競争力の低下などによって斜陽化の未来が見える「日本株式会社」の衰退につながらなければよいのだが、と他人事のように思う今日この頃です。

 

十人一色のフリをする若者

平成時代に最も売れた実用書『バカの壁』の中には、「自分の個性に価値があると考える人は成長しない」というような記述があります。

 

これは、十人十色であることを前提に、「自分の殻に閉じこもって他人の価値観を学ばない人は成長しない」という意味だと思うのですが、制服化によって少なくとも見た目が十人一色になってしまっては、すでに前提が成り立っておらず、互いに何も学ぶことのない集団と化してしまうことになります。

 

でも、最近の若人は常日頃たくさんの情報に接していますし、合理的でスマートな人が増えているように感じますので、表面的には「黒スーツ+白シャツ」を受け入れるフリをしつつ、心の中ではたくさんの違和感なり疑問なりをきっと感じているはずです。

 

歴史上の数々の自由化運動が服装と無関係ではなかったはずだ、と。

 

服装の統制に従うことで自由や個性を自ら捨て去ってしまっている、と。

 

そういうメッセージを黒装束の行列によって社会に発信してしまっている、と。

 

そのような画一性は「多様性」の正反対にしか存在しない、と。

 

「長いものに巻かれる」精神がパワハラやセクハラの温床になってしまう、と。

 

ジョブズ的発想が日本を救う

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それらを分かった上で、前向きに「思考停止」しているんだと思います。

 

GAFA の一角を成す Apple の創業者にして Apple 教の教祖でもある故スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)は、服装に関してはあえて思考を停止し、何着もの同じ服を毎日着まわしていたことで有名です。これは、服装に費やす思考エネルギーを節約して、そのエネルギーを製品開発などのイノベーションに回すためだったと言われています。

 

今の若人も、ジョブズと同じ発想なんでしょう。

 

就活や入学式・入社式に何を着ていくかで迷ってエネルギーを消費するのではなく、そこは世間的に決められた「制服」を着ることで思考エネルギーに余裕を持たせているのでしょう。

 

その余ったエネルギーが、いつの日か成長や革新のエネルギーとなって現れ、沈みゆく日本に一筋の希望の光を差し込んでくれるのだろうと期待しています。もちろん、いろんな意味で、皮肉でもあるんですけどね。

 

 

 

さいごに

就職して落ち着いたら、黒装束はいったん脱ぎ捨てて、自分に最も似合うアイテムを模索しましょう。それが決まったら、もう迷う必要などありません。あとは、思考エネルギーをすべて仕事に注ぎ込むだけです。

 

やがて自分が面接する側となった暁には、いつかの自分と同じように、ジョブズ的発想で「黒スーツ+白シャツ」に身を包んだ学生と出会うことになるでしょう。その頃には、色だけではなくデザインも統一された完全なリクルートスーツを目の当たりにするのかもしれませんね。

 

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