敏感の彼方に

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[フリーランスの年齢問題]40 歳を超えた高齢な自由業者の生き残り戦略

 

 

今や、日本のフリーランサーは、就労人口の 20%とも言われており、米国など最早、2~3年後にはフリーランサーが 50%に達すると予想されています。 

 

第三次産業が盛んになってパソコン上で完結する仕事が増え続けていること、ネットの発達によって何処でも仕事ができるようになったこと、自由な働き方を良しとして求める風潮、企業の体力低下や終身雇用の崩壊で正規枠が少なくなっていること、などの時代背景を考えると、フリーランサーが増えるのは自明のことと考えられます。

 

そんなフリーランサーを、サプライチェーンや組織構造の中に位置付けてみると、こんな感じになるでしょうか。

 

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企業Aというのは、消費財(商品やサービス)を一般に提供する会社であり、自動車メーカや家電メーカ、ゲーム会社などがこれに当たりますが、マス(最終消費者)に提供されるものが公共インフラなどの場合、企業Aは官公庁ということになります。

 

このサプライチェーンを上流(図の下方)へとたどっていき、もうそれ以上外注することがない最も上流に、フリーランサーというのは位置付けられることが多いです。

 

そして、図のピラミッド構造から分かるように、企業同士が打ち合わせや会合などを開くと、供給元(上流側)の企業の社長(または部長)クラスが、供給先(下流側)の企業のヒラ(または係長)クラスと相対することがよくあります。

 

これは、上流へ行くほど顕著で、たとえば「企業C」の社長自らが「企業B」のヒラ社員に説明したりプレゼンしたりする場面などもままあります。

 

もちろん、社長というのは基本的にどんな業務でもこなしますので、供給先の社長と直接交渉を行う場合なども当然あります。また、企業Aの社長であれば、何か不具合や不祥事などがあった場合は、テレビに出てきて矢面に立ち、一般消費者に頭を下げる仕事もあります。

 

年功序列が残る日本では特に、各企業のピラミッドの上に行くほど年齢も高くなります。

 

一方、フリーランサーは、「従業員1人の企業」のようなものですから、上に書いた業務をすべて1人でこなすことになります。

 

もちろん、取引先の社長との付き合いもありますが、基本的には、何歳になっても「企業C」のヒラ社員が自分の「担当者」ということになります。

 

若いフリーランサーの場合、自分の「担当者」は常に自分と同程度の年齢か、自分よりも年上です。ただし、「企業C」の中では、従業員が年齢とともにピラミッドを次々に登っていきますので、「担当者」は常に若手である一方、フリーランサーだけが年齢を重ねて、40 歳にもなれば、「担当者」は多くが年下になります。

 

こうなってくると、儒教や年功序列の中にある「年上を敬う」精神が邪魔をして、年下の「担当者」から見れば、年上のフリーランサーというのは何となく使いにくく、両者間にすきま風が吹き始めます。

 

若いころは、若気の至りでブイブイ言わせていたフリーランサーも、このあたりの年齢になると、「仕事がなくなるかも・・・」という恐怖感と向き合うことになります。

 

テクノロジの主役が電気・機械などから人工知能(AI)やブロックチェーンなどのIT・ICT系に移行すると、新しい技術を身に付けた若人を取り込んで組織の新陳代謝が加速するのと同様に、(特殊な能力やスキルを要さない)サービス業が中心になってくると、30 歳を超えればもう「ベテラン」、40 歳を超えれば「じじ・ばば」、50 歳を超えれば「化石」となってしまいます。寿命は長くなるのに、活躍できる年数は短くなる、という悲しい事態が現実のものとなりかねません。

 

そこで、40 歳を超えた高齢じじ・ばばフリーランスには、どのような生き残り戦略が成り立つのか、ちょっと考えてみたいと思います。40 歳なんて、何となく過ごしていたらアッという間に到達する年齢ですから、早いうちから将来のことを考えておくのが得策でしょう。

 

技術・能力・スキル追求型

余人をもって代えがたい技術・能力・スキルを身に付ける戦略です。どの業種にも当てはまりますし、ある意味、生き残れる確率が最も高いかもしれません。どれだけ人脈がなくても、性格が多少悪くても、その人(あるいは、ごく少数の人)にしかできないことであれば、必ず声は掛かります。

 

ただし、この変化の速い時代に自己の技術・能力・スキルだけで闘っていくわけですから、不断の努力と継続的な自己研鑽が当然必要となります。その技術や能力も、人工知能(AI)などの技術革新によって徐々に不要化・陳腐化していく可能性が高いため、新しいテクノロジ(IT サービス)や AI とのコラボなども視野に入れます。

 

また、自分の頭と手足がフリーランサーとしての源泉となりますので、病気やケガをした瞬間にフリーランサー人生が終わるリスクもあります。その点、心身の健康に留意したり、健康を保つための投資をしたり、といったことも必要でしょう。

 

加齢による能力の衰えとどう折り合いを付けるか、という課題もありますね。

 

生き字引型

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1つひとつの技術や能力に特別長けていなくても、ある業界に長く関わっていたら、その業界の成り立ちや業界構造、仕事のフローやハウツー、関連する法律や規制などに詳しくなっていることでしょうから、それらを有効活用する戦略です。

 

いわゆる「士業」と呼ばれる職業(弁護士、公認会計士、税理士、弁理士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、司法書士、行政書士、社会保険労務士 etc.)では、生き字引的コンサルタントのような形態で、高齢になっても現役のフリーランサーをよく見かけます。

 

人脈駆動型

持てる人脈をフル活用する戦略です。

 

1つひとつの仕事やプロジェクトの中では、余人をもって代えがたい技術・能力・スキルや生き字引的な知識が有効となりますが、そのような事業やプロジェクトは、他人との接触の中で生まれることが往々にしてありますし、実際に仕事を受注してきたり、有機的につなぎ合わせたり、他社と協業したり、他分野に進出したり、組織の欠けているピース(人材)を確保したり、といったことを解決できる答えは、「人脈」がすべて、とも言えます。

 

自分が築き上げた人脈を洗い直し、たとえば 100人の有効な「ツテ」があるとすれば、その中の2人の組み合わせは、およそ 5,000 通りにもなりますし、3人、4人・・・の組み合わせも含めると、無数の膨大な可能性が存在することになります。

 

そのような貴重な「ツテ」の結節点となって、ありとあらゆる組み合わせの可能性を提示できるようになれば、仕事の創造・拡張・路線変更などの数々の場面で、声が掛かるに違いありません。

 

ただし、フリーランサーというのは、業界や組織の人間関係に嫌気が差して飛び出した人も多いでしょうから、そもそも、このような人脈を活用できる人は、フリーランサーの中には少ないかもしれませんね。

 

顧問契約型

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上に書いた「技術・能力・スキル追求型」と「生き字引型」と「人脈駆動型」とを掛け合わせたような戦略です。

 

1つひとつの技術や能力に特別長けているわけでもなく、生き字引的な知識が特別豊富なわけでもなく、「ツテ」が特別豊富なわけでもないけれど、どれかが特別劣っているわけでもなく、それぞれを必要十分な程度に保有していれば、特に中小企業にとっては、声を掛けたくなる人材です。困ったときの相談相手として、キープしておきたくなる存在です。

 

(有用な)「技術」「知識」「人脈」をひと通り有する「自己完結型」で、さらに人望も厚い人材というのは、思った以上に少ないものです。

 

ネット駆動型 

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ネットワークや SNS をフル活用する戦略です。

 

冒頭の図に示したように、フリーランサーというのは、それぞれの分野のサプライチェーンの最上流に位置付けられ、年功序列を基本とする各企業を通じてしかマス(最終消費者)とつながれないために、その年功序列の中にある「年上を敬う」精神が障害となって、40 歳前後で「仕事フリー」の憂き目に合う可能性があるわけです。

 

これを打破するには、ネットワークや SNS を大いに利用して、マス(最終消費者)と直接つながれば良いわけです。

 

と、書くのは簡単ですが、セルフブランディングやセルフプロデュースは、誰でもそう易々とできるものではありません。マスと直接つながるということは、批判や炎上の危険性を常に伴い、飽きや陳腐化のリスクにも対処しなければならず、本来の業務とは別のことばかりに時間を取られる可能性も高いです。

 

ですので、フリーランサーとしてネットや SNS を利用する場合であっても、ブランディングやプロデュースを性急に追い求めるのではなく、腰を据えて、自分の今の仕事、興味・趣味、将来的に移行していきたい分野などについて、日々着々とブログなどにストックを作り込み、SNS で適度にフローを流し込むのが得策でしょう。

 

個人のブランディングやプロデュースをプッシュ型で急げば、飽きられるのも早くなるだけです。そうではなく、ある程度の時間を掛けて、自分自身や自分が産み出すコンテンツに興味を持ってくれた人だけが自然に集まってくるような経済圏が理想です。

 

このネット駆動型は、自分のやりたい分野・得意な分野を伸ばしたいと考える人に、特に向いていると思います。

 

法人成り型

「フリーランスの戦略」としては本末転倒ですが、法人化する戦略です。

 

冒頭の図のような組織ピラミッドのサプライチェーンの中で、フリーランサーだけが「個人」として組み込まれていることが、そもそもの問題点と考えるなら、個人で闘うことを止めて、自分も法人になる手もあります。

 

法人になって若い人を雇えば、個人として抱えていた年齢問題はある程度解消されますし、自由業者としての税金や諸手続きの面倒な作業もなくなります。

 

ただ、これまでひたすら自由に生きてきた人間が、経営者としての枠に収まるのか、経営者としての責任を全うできるのか、他人の人生を預かるだけのモチベーションを維持できるのか、そもそも、組織に嫌気が差して飛び出した経緯があるのに、また組織に戻ることができるのか、という課題はあります。

 

最後まで個人で生き抜くのか、それとも法人として生きていくのか、自分の胸に片手を当て、もう片方の手でソロバンを弾いた上で決めましょうね。

 

BI 期待型

上に挙げた6つの型のいずれにも該当しない場合の最終手段として、ベーシックインカム(BI)に期待する戦略です(「戦略」と言ってよいのかビミョーです)。

 

ベーシックインカム(BI:Basic Income)とは、政府がすべての国民に対して、生活に必要と考えられる最低限の額の現金を定期的に支給する政策のことです。

 

人工知能(AI)が過去3度目のブームを迎えていますが、今回は過去2回と異なり、ハード・ソフト・データの3点セットが揃ったことで、10 年にも及ぶ長期のブームとなっています。

 

もはや、「ブーム」ではなく、社会の「インフラ」となりつつあります。

 

そして、そのような AI のインフラ化とともに、今後は AI が人間の仕事を奪うようになるため、失業者が街にあふれかえり、格差が徐々に拡大していく、という言説が流布される中、その格差を解消する手段として、BI の存在感が徐々に増してきています。

 

このままテクノロジが進歩するならば、BI の導入がかなり現実味を帯びてくると思います。そうしないと、経済そのものが回らなくなる可能性が高いからです。

 

というわけで、BI の実現に大いに期待して、将来の不安をあまり考えず、目の前の「今」を精一杯生きるのも1つの手です。BI が導入されれば、最低限の生活は保障されるため、好きなことでフリーに生きていけます。もちろん、BI が実現しなかったからと言って、誰かが助けてくれるわけでもありませんが・・・。

 

 

 

まとめ ー 業種のワラジと戦略のワラジ ー

以上、自らの経験を踏まえつつ、ジジ・ババフリーランサーの生き残り戦略を独断と偏見で簡単に考えてみました。

 

最後に、BI に期待しない場合のベストな生き残り戦略を書いておきます。

 

それは、業種の壁を越えて(といっても、シナジー効果がある)ワラジを何足か履き(つまり、複業・副業・パラレルキャリアに取り組む)、さらに、上に挙げた戦略でも何足かのワラジを履く、という戦略です。

 

たとえば、3つの業種に携わり、(BI 期待型を除く)6つの型を磨いておけば、3×6=18 通りの「生き残り戦略」を選べることになります。

 

個人で生きるフリーランサーは、そうやって掛け算で可能性を広げていくんでしょう。

 

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