この間、子どもにせがまれて、ドラえもんの最新映画を見てきました。
生まれて初めてドラえもんを映画館で見たわけですが、これは、大人が「涙活」するための映画と確信しました。実際、満席の館内では、中年や高齢のカップル・夫婦を少なからず見掛けましたし、ボクも、恥ずかしながらウルウルしてしまいました。
先日、総務省から近未来小説が公開されたと聞いたので、早速読んでみることにしました。「新時代家族 ~ 分断のはざまをつなぐ新たなキズナ ~」です。
家庭用の人型ロボット「アイコ」を中心に、2030 年代までの実現を目指す技術やそれらがもたらす未来像を描いて、2030~2040 年ごろの仕事や家族の在り方を問いかける内容となっています。
「2030 年代までの実現を目指す技術」として、以下のような技術が作中に登場します。
総務省「未来をつかむTECH戦略」より
小説自体は、同省の若手職員26人(平均 29 歳)で構成される「未来デザインチーム」が複数の民間企業と協力して制作したものです。
感想を一言で述べるなら、「SEO 対策を施した星新一の作品にドラえもんの道具が登場する小説なの?」となります。
上の画像に出てくる製品やサービスの名称を見てみると、「お節介ロボット」「どこでも手続」「あちこち電力」「いつでもドクター」などなど、「ドラえもんの道具名の影響を受け過ぎてないですか?」とつい思ってしまう名称が並んでいます。
そして、これらの「ひみつ道具」がその説明や利用法などと併せてたくさん登場しますし、「人工知能(AI)」「ロボット」「自動翻訳」「自動決済」「仮想(VR・AR)」といった最近流行の技術用語はもちろんのこと、老齢・家族・就職・面接・故郷・地域といった現代社会で問題になることの多いテーマに至るまで、人生や生活に関わるありとあらゆることが目一杯詰め込まれており、まるで(キーワード詰め込み過ぎの)SEO 対策を施したような近未来小説となっています。
小説の目次は、以下の通りです。
第1章から第5章までは、職場や学校、家庭などの場面で新しいテクノロジーがどのように利用されているかを紹介する内容となっており、最後の第6章に、家庭用ロボット「アイコ」の視点から「家族」の有り様がまとめられています。
※ 51ページ 6行目の「とは話し始めた」は、「とサトミは話し始めた」の誤りでしょう。また、同ページ 17行目の「思っていたがアイコだが」は、「思っていたアイコだが」の誤りでしょう。このあたりは、小説の核となる部分だと思うのですが、後半になって執筆・校閲の疲れが見え隠れしますね。
そして、この第6章の以下の部分が、この小説で言いたいことのようです。
アイコは、自分の行動がどれほどサトミのいう「家族としての接し方」だったのかは分からなかった。しかし、これまではデータに基づくベストなコミュニケーションとケアが自分の仕事であり、存在価値だと思っていたがアイコだが、AIとしてより正確な情報に基づく以外に、愛情をもって気持ちに寄り添う関わり方があることをサトミから学習し、今後はこれまで以上に家族の一員として関わっていくことも選択肢としてインプットされた。
この部分とタイトルを考え合わせると、今後は、AI を搭載した人型ロボットが、家族の「キズナ」の役割を果たすようになるってことなんでしょうかね。作中に登場する人物が「家族の分断」を心配している節も特に見られませんので、分断の危機を直接煽りたいわけではなさそうです。あるいは、学習途上のロボットですら「家族」の有り様を考えようとするんだから、みんなも今からこのような未来を想定して家族を大切にしましょう、ということを暗に示唆しているのかもしれません。
ボク自身は、あと十数年でお手伝いロボットが実現していたり、自動運転車が広く普及していたりする世界は、面白いけども有りえないと思っています。
作中には、もっと先の未来のような技術であったり、2030 年代に確かに実現しそうな技術であったり、現時点ですでに一部実現してしまっている技術であったり、いろんなレベルの技術がぎっしりと詰め込まれていて、正直読むのに疲れますが、この国の未来を背負う若手官僚の方々が思い描いている未来のデザインを知ることができるので、読んでおいて損はないと思い、目を通しました。
全 57 ページで、1時間もあれば読めます。
そのうち、アニメ化されたりするのかもしれませんが、難しいでしょうね。それこそ、ドラえもんなどのアニメでとっくの昔に描き尽くされてしまっている未来像のように見えてしまいますから。