2017年9月、SoftBank とみずほ銀行が合同で設立した J.Score(ジェイスコア)から、新たな融資サービスがリリースされました。
ユーザが入力したプロフィールなどの個人情報から点数がはじき出され、それに応じて、人工知能(AI:Artificial Intelligence)が適正な融資額を決定する、というサービスです。いわゆる Fintech(フィンテック)に属する「スコアレンディング」というサービスです。
欧米各国や中国などではすでに展開されていますが、日本では、これが初めての本格展開となります。
さっそく、「マイスコア」を算出してみたので、その感想や、スコアアップで高い点数・得点を出すための試行錯誤の結果をまとめておきます。
AI スコア・レンディングの商品概要
まず、同社のサイトに掲載されている商品概要を簡単に紹介します。
利用対象 |
以下をすべて満たす者
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限度額 | 10 ~ 1,000万円 |
金利 | 0.9 ~ 12.0% |
遅延損害金 | 12% |
返済方式 | 残高スライドリボルビング方式 |
返済期間 | 最長 10 年(1 ~ 120回) |
スコア別の貸付利率・契約極度額
このサービスでは、算出されたスコア(点数)に基づいて、借入申込前に融資条件を確認できます(以下のとおり)。
AI スコアの算出(診断)方法
まずは、アカウントを作成します。
同サイトの「いますぐ AI スコア診断(メンバー登録)」や「新規登録」の画面でメールアドレスとパスワードを設定すると、認証コードを記載したメールが届きますので、指示通りに登録を進めます。簡単です。
ログインすると、チャット形式で人工知能が質問してきます(20問)。

ニックネームの設定に始まって、誕生年月、性別、仕事の状況、年収、既婚/未婚、子ども有無、居住情報などなど、基本的な質問に答えます。
あとで変更・編集できますので、間違えても大丈夫ですよ。
※ 利用規約にもある通り、虚偽の情報を入力して発覚すると、サービス停止・登録抹消となりますので、くれぐれもご注意ください。
20 問の基本的な質問に答え終わると、スコアが表示されます(スコア算出には少し時間が掛かるようですが、数十秒~数分もすれば現在のスコアが表示されます)。
筆者は、744点 でした。

ここで、「スコアが出たことだし、審査の申し込みするかぁ・・・」と次へ進むのも良いのですが、さらに平均スコアを高くする方法があります。
上の画像の「情報の入力状況」が5%となっていることからも分かるように、これまでに回答した 20 問以外にも、たくさんの質問が用意されています。そして、これらの質問にも答えることで、スコアアップの可能性があるのです。
スコアアップで点数を高くする方法
というわけで、スコアアップに励みます。

画面上部の「スコアアップ」ボタンを押すと、新たな質問カテゴリが表示されます。最初の 20 問に答えたことで「プロフィール」の1/5ほどはブルーになっていますね。
「プロフィール」のほかに、「生活」「情報連携」「性格」「ウォレット」「ファイナンス」という5つのカテゴリがあります。
※ 「情報連携」は、ソフトバンク携帯やみずほ銀行口座との連携のことです。Softbank の携帯を利用している場合やみずほ銀行に口座を有する場合は、その情報を入力することで、それぞれ金利が年0.1%(合計 0.2%)引き下げとなりますので、該当する人は連携させるとお得ですね。
※ 2018年8月からは、ワイモバイル(Y!mobile)の携帯・スマホとの情報連携によっても、金利が年0.1% 下がることになりました。また、携帯・スマホの利用状況等をスコアに反映させると、スコアアップの可能性があります。
※ 2018年10月からは、Yahoo! JAPAN との連携によっても、金利引下げやスコアアップを可能にするサービスが開始となりました。
では実際に、最初の 20 問以外の質問に答えることで、スコアが「744点」からどのようにアップしたかを報告します。
- 「プロフィール」の残り全部に回答 ⇒ 760 点にアップ!
- 「生活」の全部に回答 ⇒ 771 点にアップ!
- 「性格」の全部に回答 ⇒ 776 点にアップ!
- 「ウォレット」の全部に回答 ⇒ 787 点にアップ!
- 「ファイナンス」の全部に回答 ⇒ 796 点にアップ!
すべての質問に答えるのに、20~30分ほど掛かりました。ちなみに、「性格」の質問に答えると、基本性格や仕事上の性格を診断して表示してくれるので、参考になりますよ。
そして、すべての質問に答えた結果、最初の 744 点から約7% スコアがアップして 796 点となりました。
知人にも確認したところ、すべての質問に答えることで、5~10%ほどのアップとなったようです。
おそらく、基本の 20 問に対する回答とそれ以外の質問に対する回答には、ある程度の相関があると考えられますので、どの得点層であっても、スコアアップは 5~10% ほどになるのではないかと予想されます。
結局、基本の 20 問がスコア全体の9割以上を占めると考えられます。それ以外の質問に答えて(自分をさらけ出して)若干のスコアアップを狙うかどうかは、個人の判断になりますね。
「生活」カテゴリがスコアに及ぼす影響
次に、点数アップが狙える6つの質問カテゴリ「生活」「情報連携」「性格」「ウォレット」「ファイナンス」「プロフィール」のうち、「生活(LIFE)」について、どの項目が点数に影響するのかを探ってみました。
※ 人工知能(AI)は日々学習を繰り返して精度を高めており、月日が経てば同じ回答でも異なる点数がはじき出される可能性が高いため、以下にまとめる内容は、あくまでも現時点での結果です。
「生活」に関しては、以下のように 46 個の質問が用意されています。

質問数が多いので、簡略化のため、極端なケースを試すことによって、点数への影響を調べることにしました。
なお、調査開始時の点数は、650 点に設定しました。この初期点数も結果に影響するとは思いますが、その程度は軽微と考えられます。
では早速、各項目について見ていきましょう。
「モノについて教えてください」
この項目では、服、アクセサリ、日用品を買うときに重視する点として、「デザイン」および「価格」という両極端な2ケースを試してみました。
その他の質問については、すべて「なし」に統一しました(ポイントカードもゲームもテレビも携帯も、何も持たない)。
【結果】点数の変動はありませんでした。
「自動車・バイクについて教えてください」
この項目では、「自動車もバイクも持たない場合」と、「フェラーリ4台以上とホンダのバイクを所有する場合」とを比べてみました。
【結果】前者で-1点、後者で+2点となりました。
「インターネットについて教えてください」
この項目では、「ネットも SNS もスマホもその他も一切使用しない場合」と、「すべて全種類を使用する場合」とを比べてみました。
【結果】点数の変動はありませんでした。
「普段の生活について教えてください」
この項目は、質問数が 19 個と多いため、あまり深入りせず、なるべくケチ(質素)で非行動的でこだわりの少ない生活をした場合に、点数がどうなるかを調べてみました。
つまり、「なし」という回答がある質問についてはそれを選択し、それ以外の質問については、ケチで非行動的でこだわりがなさそうな回答を選択しました。
【結果】-1点となりました。
「人生経験について教えてください」
この項目では、「クレカ、住宅、ライフ、仕事に関する経験が一切ない場合」と、「すべて全種類を経験済みの場合」とを比べてみました。
【結果】点数の変動はありませんでした。
スコアアップにつながる要素は何か?
今回、「生活」の各項目について、かなり極端なケースを検証してみましたが、点数の変動は、せいぜい1~2点程度と、ほとんど影響しないことが分かりました。
「生活(LIFE)」に関する全質問(46 問)に答えることによって、スコアが 11 点アップしたことを上に書きましたが、これと併せて考えると、各質問に対する回答をどのように選ぶかよりも、
ことが点数アップの近道であると考えられます。
※ そのために多くの質問に答えるべきかどうかは、ユーザ自身の判断になります。
ただし、今回の調査方法では偶々、点数の変動が小さかっただけなのかもしれませんし、回答が極端なためにスコアリングが上手く作用しなかったのかもしれませんし、調査を前提とした(不誠実な)回答の姿勢自体を見られていたのかもしれませんので、人工知能(AI)の中身がはっきりしたわけではありません。
あくまでも参考程度ということになります。
基本質問(20問)がスコアに及ぼす影響
では、スコア全体の大きな部分を占めると考えられる最初の基本 20 問について、各質問がスコアにどの程度影響するのか。これを簡単に検証してみました。
たとえば、その他の条件を同じにして、正社員と自営業を比較すると、正社員の方が 100 点ほど高い結果となりました。
また、既婚者と未婚者(子どもの有無を含む)では、既婚者の方が 100 点ほど高い結果となりました。
さらに、持ち家か賃貸かでも、持ち家の方が 100 点ほど高い結果となりました。
もちろん、それ以外の質問によってもスコアは左右されますが、「正社員」「結婚」「持ち家」という3大条件で、合計 300 点ほどの差が生じる模様です。
この点からも、基本以外の質問は、「飾り付け」程度と考えるのが無難でしょう。
基本以外の質問は、趣味、買い物の仕方、情報の収集方法などなど、個人の付加的な情報に過ぎず、答える側としても迷うものがあり、運営側では確かめようもないことが多いですから、これらの回答でスコアが大きく変動し得ないのは、当然と言えば当然ですね。
その後の手続き
スコアが確定したら、画面上部の「メンバーシップ」ボタンを押すことで、そのスコアでの金利や限度額が表示されます。
その後、借入までの手続きは、以下のようになります。
- 融資(レンディング)申し込み
- 入力内容に基づいて仮審査
- 仮審査結果を確認の上、本人確認書類と収入証明書類を提出
- 提出した書類に基づいて本審査
- 本審査結果を確認の上、契約手続き
- 契約手続き完了で、借入可能
まとめ
以上、点数(スコア)のアップにつながる要素を徹底的に検証してみました。
この J.Score は、ウェブ上で人工知能の質問に答えるだけですので、融資する側にとっても、される側にとっても、使いやすくて便利なサービスです。
ただ、スコアの大部分が従来同様の基本属性に依って決まることから、同社サイトにも記載されているように、スコアレンディング自体がゴールなのではなく、「スコア」をベースにして、今後、様々なサービスが展開されていくのでしょう。スコアレンディングは、スコア収集・AI学習のきっかけとも考えられます。
同じようなサービスが進んでいる他国の状況を眺めていると、人間のスコアリング(点数化)は必然とも考えられますが、自分と人工知能との関係(上下関係?)は、常に把握しておきたいものです。