
「インフルエンサー(Influencer)」という言葉が当たり前の世の中になっています。
インフルエンサーとは、特に SNS や Youtube、ブログなどを通じて世間に多大な影響を及ぼす人のことです。テレビやラジオといった旧来のメディアも含めて、消費者の購買行動に決定的な影響を与える人と言えます。
具体的には、それぞれの世界で高い知名度や好感度を誇る政治家、企業家、俳優、芸能人・タレント、モデル、ブロガーなどが挙げられます。
「インフルエンサー」という言葉がこれほどまでに一般化してきているのは、主にネットや SNS の登場により、誰もがインフルエンサーとなって大きな影響力を持てるようになったこの時代に、企業や個人が主にマーケティングの観点でその影響力を重視するようになった(無視できなくなった)ためです。
国内・海外のインフルエンサーたち
特に、Instagram(インスタ)は、F1層(消費意欲が旺盛でトレンドにも敏感な 20〜34 歳の女性)や T層(F1層に続く 13~19歳の男女)が多く利用しており、多数のフォロワーを持つインスタグラマーとのコラボレーションは、大きな広告効果を生み出す可能性を秘めています。
そんなインスタグラムの、あるフォロワー数ランキングによれば、国内の個人トップ3は、以下の通りとなっています。それぞれ、数百万人のフォロワーがいます。
一方、海外の個人トップ3は、以下の通りとなっています。3者とも、1億人以上のフォロワーがいます。桁違いですね。
インフルエンサー採用枠
上のようなフォロワー数が桁違いの有名人は、選ばれるべくして選ばれたインフルエンサーたちであり、ボクらのような一般人が追い付きたいと思ったところで、到底及びはしません。でも、そんなインフルエンサーを重視する傾向は、なにも有名人に限ったことではありません。
少し前になりますが、オンデーズというアイウェア(メガネ)の製造販売会社が、採用枠として新たに「インフルエンサー採用枠」を設置したことが話題になりました。
同社では以前から、業務中でも利用規定を順守していれば、商品やサービス、職場の様子などを社員が自由に SNS 投稿できるようにすることで、リアルな情報発信によりブランドの認知・理解を得る取り組みをしてきました。
そのような取り組みを強化するため、主要 SNS のフォロワー数が 1,500名以上であることを採用基準に設定したのです。インフルエンサーが普通になりつつある今の時代にピッタリの戦略ですね。
「インフルエンサー」と呼べるフォロワー数は?

誰しも、一度はインフルエンサーになってみたいですし、「インフルエンサー」と呼ばれてみたいですよね。
では、どのような条件を満たせば「インフルエンサー」と呼べるのでしょうか?
フォロワー数や獲得した「いいね!」数、エンゲージメント率(SNS でユーザが投稿に反応した割合)などの指標が考えられますが、残念ながら、「フォロワー数が〇〇人以上ならインフルエンサー」というような明確な基準はありません。
基準はありませんが、面白いアンケート結果ならあります。
インフルエンサー・マーケティングを手掛ける LIDDELL という会社が 20代の 110名(平均年齢 26歳)を対象として以前実施したアンケートの中で、「インフルエンサーと呼べるのは何フォロワーから?」という問いに対して、過半数の 57%が「1万人以上」と答え、回答の平均値は1万450人だったそうです。
これを1つの指標と考えるなら、「インフルエンサー」と呼べるフォロワー数は、
ということになります。
さて、あなたのフォロワーは何名ですか?
インフルエンサーの階級(日本の新しいカースト制度)
インフルエンサーか否かの1つの基準として、「フォロワー数が1万人以上」という指標を一例として挙げましたが、フォロワー数を1つの基準とするなら、フォロワー数に応じたインフルエンサーの階層が名付けられていてもよさそうなものです。
そう思って少し探ってみたのですが、こちらも明確な基準はなさそうです。
そこで、ネットの情報を参考にして整理してみたところ、だいたい以下のような格付け(ランキング)となりました(カッコ内の数値は、フォロワー数です(単位:万人))。これぞまさしく、影響度を基準とした日本の新しい「カースト制度」であり、経済的な格差をもたらし得る基本階層です。
このブログに当てはめてみると、読者数をフォロワー数とするなら、本記事執筆時点で 約 300名の方々が読者登録してくださっていますので、「ミニマム・インフルエンサー」ということになります。その名の通り、及ぼす影響は最小です (*'▽')。
そもそも、上記の「インフルエンサーと呼べるフォロワー数は1万人以上」という基準に照らせば、ライト・インフルエンサーもミニマム・インフルエンサーも、「インフルエンサー」と呼ぶことすらできなくなります。確かに、このあたりの階層になると、影響を与えるよりも影響を受ける機会の方が増えるかもしれませんので、場面に応じて「インフルエンサ―」と呼んだり、「影響を受ける人」という意味の「インフルエンシー(Influencee)」と読んだりするのが妥当な気もします。
そして、このような階層のうち、ミドル・インフルエンサーとライト・インフルエンサーとの間に、少し前から注目を集めている「マイクロ・インフルエンサー」を位置付けることができます。
マイクロ・インフルエンサー
ここまでは、フォロワー数を基準として話を進めてきました。確かに、フォロワー数というのは、インフルエンサーが「インフルエンサー」であるために必要な条件の1つかもしれませんが、それがすべてではありません。
たとえば、Twitter でもブログでも何でも構いませんが、「なぜ誰かをフォローしたくなるのか」を考えた時、そこには、投稿なり記事なりの文字列や画像・動画の中に「その人らしさを見たい」という気持ちが少なからずあるはずです。「その人らしさ」とは、その人のブレない明確な特徴です。そして、そのような特徴に対する反応は、同調の場合もあればアンチの場合もあります。
単に「有名だから」という理由だけでフォローしている場合と異なり、「その人らしさを見たい」という気持ちを持ってフォローしているフォロワーは、フォローしている相手の投稿に大きく反応します。このように大きな反応こそ、インフルエンサーを「インフルエンサー」たらしめる重要な要素の1つです。フォロワー数だけがインフルエンサーの基準ではありません。
結局、人間というのは、大きく反応したくなる(自分の琴線に触れる)発信を続けるインフルエンサーの下に集まることになるため、そうやって、趣味嗜好に応じたコミュニティへと社会は必然的に分断されてゆきます。
そして、このような状況の下では、「マイクロ・インフルエンサー」という考え方が重要になってきます。
マイクロ・インフルエンサーというのも定義がはっきりしているわけではありませんが、フォロワー数でいえば1万人前後(諸説あり)、特定のコミュニティのみで絶大な影響力・拡散力を持つインフルエンサーのことです。

たとえば、トイレだけを撮影する写真家がいるとして、その写真家が狭いながらもフォロワーと深くつながったコミュニティを形成しているなら、その写真家はその「トイレ」コミュニティにおける「マイクロ・インフルエンサー」と言えます。
このようなインフルエンサーは、そのコミュニティでは抜群のカリスマ性を発揮しますので、たとえば出版社が新しいトイレの写真集を出したり、トイレメーカが新しいトイレを開発したりした場合には、このインフルエンサーを通じて広告を打つことにより、ただ単にフォロワー数が多いだけのインフルエンサーよりも大きな反応が期待できます。
フォロワー数は「売上高」みたいなもの
ここまで考えてきて、「フォロワー数というのは、企業会計における売上高みたいなものだな」と感じます。
企業にとって、売上高という規模感はもちろん大切ですが、規模だけが大きくても利益が出ていなければ意味がありません。

逆に、利益さえ出ていれば規模などはどうでも良いのか、と言えば、そういうわけでもありません。
ある程度の規模があれば、たとえ売上高が減少した場合であっても、仕入れ先との価格交渉や社内のコスト削減努力などによって利益を確保できる余地が残るため、金融機関からの資金調達に有利となる可能性があります。
つまり、利益を十分に上げていることを前提として、ある程度の規模(売上)もあるということは、その企業の信用を高める上で大切な条件となります。
インフルエンサーも同じように、フォロワー数という規模だけが大きくても、「いいね!」数やエンゲージメント率などが低ければ意味がありません。逆に、エンゲージメント率だけが高くても、規模が小さければ信用を得られませんし、さらに規模が小さくなった場合に打てる施策も限られてきますよね。
まとめ
有名なインフルエンサーを尻目に、ミニマム・インフルエンサー(=筆者)の立場で、日本社会に経済的な格差をもたらし得るインフルエンサーの階級(カースト・ヒエラルキー)を定義付けました。
「フォロワー数」という規模感で信用力を高めつつ、マイクロインフルエンサーのように特定のコミュニティで影響力を発揮しながら、そのようなコミュニティを大きくしたりコミュニティの数を増やしたりできるのが理想ですね。