昨日、文部科学省とフリマ・オークション大手3社(メルカリ、楽天、ヤフー)は、宿題代行行為の根絶に向けた合意を発表しましたね。
たとえば、文科省とメルカリが合意した内容はこちらです。
宿題取引の禁止
3社の「メルカリ」「ラクマ」「ヤフオク!」では、完成した自由研究や読書感想文などが数多く出品・取引されており、子どもやその保護者たちの間で大きな話題となってきました。
一方、3社のこれまでの対応としては、メルカリが「記名のある教材のみ削除」、楽天とヤフ-が「宿題代行行為の禁止」であり、完成品の売買は禁じられていませんでした。
これに対して、昨日の合意により、記名の有無を問わず完成品の出品・取引も禁止となって、発見したものは速やかに削除していくことが確認されました。

宿題代行の歴史
ただし、長期休みの宿題の代行については、ずっと以前から問題になっていましたし、「宿題代行」などのキーワードで検索すれば、それを専門とする業者がたくさんヒットします。たとえば、読書感想文であれば、原稿用紙1枚当たり 2,000円とか、自由研究であれば 5,000円とかで請け負ってくれます。
フリマやオークションでは、個人間の価格競争が進んでおり、業者に依頼するよりもはるかに低料金で気軽に手を出せるため、今回の合意が必要になるほど世間に浸透して問題になっていたわけです。
そもそも、今の法律では、この「宿題の代行」は「限りなくホワイトに近いグレー」程度と考えられますので、法律で取り締まることは難しく、そのため業者も個人も参入するわけです。
「宿題代行」問題が発生する原因
「宿題をやりたくない子ども」や「子どもの宿題に付き合いたくない親」にとっては、宿題そのものが面倒な「不便」であり、そのような「不便」を解消したいという需要に対して、「代行」という供給が出現するのは、当たり前といえば当たり前です。
そして、ネット上でお決まりの「価格競争」の結果、気軽に手を出せるレベルまで価格が落ちてきたことにより、ようやく問題が顕在化してきました。
少し視点を変えると、夏の到来とともにネット上や街の書店・雑貨店などには、「自由研究セット」「工作キット」などの商品が所狭しと並びますが、これなんかも、子どもや保護者の発想や思案を十分に代行しています。
結局のところ、「勉強・学習・宿題」という従来であれば聖域と考えられていた領域にも、「不便は解消すればよい」という考え方が浸透してきた結果なのかもしれません。
ただし、もっと根本的な見方をすれば、「宿題代行」問題が発生するのは、長期休みに 宿題がある からです。宿題さえなければ、このような「宿題代行」問題が発生する余地などありませんからね。
海外の宿題事情
今年の夏、中学生のムスメが米国で1カ月間ホームステイしましたが、
夏休みのほぼ全期間を米国で過ごすため、宿題は現地でやらざるを得ず、荷造りの関係もあって、夏休み前に各教科の先生に掛け合い、宿題を前倒しでもらえるよう、親子ともどもかなり苦労しました。
そのムスメに、ホームステイ先の子どもたちの様子を聞いたのですが、向こうは夏休みが進級のタイミングでもあるため、日本よりも長い長い休みであるにもかかわらず、宿題などはほとんどない、とのことでした(もちろん、地域や学校にも依ります)。
宿題の代わりに、サマーキャンプに参加したり、地域の行事に参加したり、業者が提供するプログラム(プログラミング講座など)に参加したり、大いに「活動的」です。
ボクの知る限り、北東アジアを除いて、海外には「夏休みの宿題」がほとんど存在しません。また、日本の宿題のような「静的」なものではなく、読書の感想を親子で語り合ったり、キャンプに参加したり、「動的」なものに重きを置いている印象があります。
長期休みの宿題は「なし」か「選択制」で
上に書いたように、「宿題代行」問題が発生する根本原因は「宿題がある」ことですし、そもそも海外では、日本式の「宿題」は無いのが普通ですから、日本の長期休みの宿題も、そろそろ「なし」か「選択制」でも良いのではないでしょうか。

我が家の場合で考えると、もし「選択制」なら、ホームステイする今年の夏は「なし」を選択して、わざわざ日本の宿題を持参することなく、現地でしか味わえないことをもっと経験させてやれただろうと思います。
ただし、「なし」や「選択制」にすると、
- 塾に通う子と通わない子の差がますます広がる
- 宿題が嫌いな子や、子どものころに宿題が嫌いだった保護者の子は、「なし」を選択する可能性が高い
といった弊害が生じて、学力差(教育格差)が大きくなる心配も当然ありますので、「なし」を選択できる成績の基準を設けたり、補習授業を選択できるようにしたり、塾通いの補助金を出したり、格差を生じさせない措置も必要です。
また、たとえば過去記事『[なぜ働く?]仕事に長時間労働も残業も人格も、こんな上司も要らない』にも書いたように、
- 子供の頃、夏休みの宿題を夏休みの最後にやっていた人(後回し行動の人)は、大人になってから長時間労働をしやすい
- 後回し行動型の男性管理職は、そうでない男性管理職人よりも最大約30%高い確率で長時間労働をしている
といった研究結果もありますし、「子どもの頃の夏休みの宿題のやり方 vs. 就労後の年収」のような関係を調べることも可能でしょうから、そのように出来る限り多くの情報を提供して、子ども自身や保護者が判断できるようにする手もあります。
同調圧力が強く、あまり変化を好まない日本では、「選択制」にしても、即座に「なし」を選択する人は少数派のような気もします。また、人間は強制されると拒絶したくなるものですから、「選択制」にすれば、逆に宿題を自主的にやるようになるかもしれません。
宿題を無しにすれば、先生も負担が減って、長時間労働の解消に少しは寄与できそうです。
人工知能(AI)が跋扈する未来に向けて

人工知能に仕事を奪われるだの、奪われないだの、いろいろ言われていますが、どっちにしろ、ただ机にかじりついて言われたことを黙々とこなすだけの人材は、この先需要が先細っていくでしょうから、それと同じように黙々と長期休みの宿題をこなすことなんかも、将来的には意味がなくなっていくんでしょう。
ただ漢字をたくさん知っているだけ、ただ計算が速いだけ、ただ知識が豊富なだけでは、AI を凌駕するような応用が利きません。
ちなみに
今年の夏は、小学生のムスコと、こんな工作をしてみました。
「とっても楽しかった!」」の一言です。