夏休みに入って直後の7月21日、米国ユタ州に旅立つムスメAを送り出した。
あれからちょうど1カ月後の8月20日、ムスメが無事に帰ってきて、ユタ州のさまざまな土産とともに、土産話をたくさん披露してくれた。こちらも興味津々だから、数日経っても、顔を合わせればホームステイの話ばかりしている。
あちこち連れて行ってもらったユタ州の観光地のこと、ステイ先の街の様子、ステイ先の家族のこと、ホストの友人たちとの交流の様子、などなど、何を聞いても面白い。
ちなみに、「今回のホームステイで困ったこと、イヤだったこと、良くなかったことは?」と聞いてみたのだが、答えは「ない!」とのこと。強がっているのではなく、本心でそう思っているらしい。
普通は、中学生で海外ホームステイすると、いろんなトラブルや困難もあるらしいのだが、ムスメは何故そんなにもスマートなホームステイが可能となったのか、話を聞いて総合すると、以下のようなことが関係していると分かる。
- ホームステイの2カ月前からホストとメールでやり取りしていたため、お互いの気心が知れていた。
- ステイ先では、1年前にも日本人を受け入れていたため、日本人の特性や文化をある程度把握していた。
- ホストのパパの姉さんが、国際交流プログラムのスタッフをしており、異文化交流に対する深い理解があった。
- ユタ州に着いてからホームステイに入る前に、2~3日の「慣らし期間」が設けられており、その間に頭をある程度「英語脳」に切り替えられた。
- 子ども6人(幼児~高校生)の大家族のため、常に話題が豊富で、自分にばかり注目が集まることもなく、スムーズに「家族の一員」になれた。
- テーブルマナーや生活上の約束事が厳しくなく、それでつまずくことが無かった(食器を持ち上げて食べたり、食器の音がカチャカチャ鳴ったり、ということが普通にあった)。
- 家の中が適度に汚れていたり(汗)、兄弟げんかを普通にしていたり、暇があればテレビを見たりゲームをしていたり、日本の(普通にゆるい)家庭と何ら変わらない日常があった。
- コミュニケーションは英語と身振り手振り(ジェスチャ)が基本だが、どうしても通じない場合は、ホストやパパ・ママのスマホに入っている翻訳アプリを使って、会話を自動翻訳できたので、最悪なストレスには見舞われなかった。
- 知り合いの家庭でも日本人を受け入れており、たまに日本語でのコミュニケーションができて息抜きになった。
いろんなラッキーが重なって、とても充実したホームステイになったようだ。
単刀直入に「住むなら、アメリカと日本のどちらがいい?」とムスメに聞いてみたら、少し考えて、「人間関係ならアメリカ、清潔さなら日本」という答えが返ってきた。
元々ドライな性格のムスメには、盛り上がる時は皆で盛り上がり、それ以外は関係を保ちつつも個人を尊重する現地の人間関係が心地よく、他人の目を気にして同調圧力におびえがちな日本とは明らかに異なる雰囲気を感じ取ったようだ。
一方で、(もちろん家庭にも依るが)食器に汚れが残っていたり、壁や床が汚れていたり、なかなかのレベルの「汚部屋」が存在したり、モノが散らかっていたり、幼児の「う〇ち」がこぼれていたり、日本人なら割りと普通に気にする点をさほど気にしない大らかさが、少々残念だったようだ。
でも、清潔感なんてものは、ある程度慣れてしまえばどうってことないから、それよりも人間関係でアメリカに軍配を上げたということは、ホストの家族やその周囲の人たちの接し方にかなり恵まれていたのではないかと想像する。
そんなムスメの帰国後の様子を見ていて、普通に接しているだけではあまり気付かないのだが、出発前の様子と注意深く比較してみると、明らかに変化して成長しているなぁ、と感じたことがある。
言葉では表しにくいのだが、コミュニケーション全体が「大人っぽく」なった印象を強く受ける。具体的に挙げてみると、
- 自ら発することが多くなった。
- 声が大きく、ハキハキした応答が増え、会話のテンションが高くなった。
- 自ら話題を探して、会話の糸口を提供できるようになった(雑談力!)。
- 話す内容に「起承転結」や「オチ」を伴うようになった。
感覚的に、子どもの会話というのは、自分の発言にあまり責任感がなかったり、「誰か(大人)が後を引き取ってくれるだろう」という期待含みの話し方だったり、そのような空気を感じるのだが、ホームステイを経験したムスメは、そのような空気感が姿を消しつつあるように感じる。
いくら過ごしやすい家庭だったとは言え、そこは日本ではないから、阿・吽の呼吸で事が済むほど甘くはなく、その中で1カ月を乗り切るためにムスメ自身で悩み、たどり着いたコミュニケーションの在り方なんだろう。そのようなコミュニケーション力を身に付けることこそが今回のホームステイの目的だから、十分に目的を果たして帰ってきてくれたことになる。
英単語や文法を習い始めたのはわずか1年ちょっと前だし、まともな英会話など全くの未経験で旅立ったムスメだが、ステイを開始して 10日も経てば、相手の言いたいことが何となく分かるようになったらしい。
「以心伝心」とはまさにこのことで、時代や状況は大きく違えど、あのジョン万次郎も感じたであろうことを、ほんの少しでも自らの経験として感じ取ることができたのなら、何とか送り出してやれた甲斐がある。
最後に、ホームステイを楽しむための代表的な注意点をムスメに挙げてもらった。
- 飛行機の中も、施設の中も、家の中も、どこもかしこもクーラーが効き過ぎてとにかく寒いから、クーラーに弱い場合は、何処へ行くにも上着を必ず持参する。
- いつも笑顔で、ポジティブに、自分の言いたいことを、英語でも日本語でも何でもよいから、とにかくハッキリと伝える(出川哲朗 流!)。
ユタ州は、湿度が低く標高も高いため、昼間はカラッとしていて過ごしやすいし、夜は寒いぐらいで、昼も夜もクーラーなんて要らない、というのがムスメの感想だが、どこへ行ってもクーラー地獄だ。
これは、ユタ州に限ったことではなく、海外でよく聞かれる話だから、やはり日本人は上着を手放せない。体調を常に整えておくことは、ホームステイを楽しむための最低限の条件と言える。体調が崩れてしまっては、心も自然と弱気になるからね。
また、日本人は、自分が受け入れられないと、黙りこくったり、うつむいて暗い雰囲気を出すことで気を引こうとしたりするけれど、海外でそんな態度を取っていては、ますます受け入れられなくなる。
「ポジティブに自分を出す!」ことに活路を見出したムスメは、そのおかげで積極的なコミュニケーションの力を身に付けることができた。
今回はいろんなラッキーが重なることで充実したホームステイになったけど、異文化・異世界の中で身体と心を前向きにセットすることが如何に大切か、身を持って体験できたことは、今後の人生の大きな財産となるだろう。