自治体間の適正な税収移転を目指す「ふるさと納税」制度が、ここ最近、ますますおかしな方向へと進みつつあります。
本来は、税収に恵まれた大都市から、恵まれない地方への税収移転によって、地域間格差を少しでも抑えるための制度なのですが、
- 寄付額の3割以下
- 地場産品
といった要件を満たさない返礼品を提供し続ける自治体が後を絶たず、その結果、「田舎 → 中小都市」、「田舎 → 田舎」という想定外の税収移転が発生しています。
まじめな自治体ほど赤字になる、という倫理も道徳もあったもんじゃない状況です。せっかく小学校で道徳が「教科」になろうとしているわけですから、この状況を道徳の授業で取り上げてみたら面白いんじゃないかと思います。
利用者がお得な返礼品に走るのは、経済合理性に基づく当然の行為ですから、何も問題ありませんし、情報を提供する各種サイトも当然のことをしているまでです。また、要件を守らない自治体にしても、特に法律違反しているわけではないので、悪くありません。
何が悪いって、子どもでも予測できそうな今の状況を生み出している制度そのものと、それを 10 年にもわたって続けている政府や総務省ですね。
「寄付」という名の下、本来は納めて終わりのはずの税金によって、いろんな御礼の品が日本中であっちへ行ったりこっちへ行ったりしています。その中心は、
に代表される食料品でしょうかね。
そこに渦巻く「欲望」から、もはや「千と千尋の神隠し」で父ちゃん・母ちゃんが貪り食べていたお肉にしか見えなくなっているのは、ボクだけでしょうか。
何度も念を押しますが、利用者に非は一切ありません。制度が悪いのです。何十年後か何百年後か分かりませんが、過去を冷静に振り返れるようになった時点で、「史上最悪の税制」と呼ばれているんじゃないかと心配になってきます。
2019 年6月から、「寄付額の3割以下」「地場産品」という要件を守らない自治体が制度の対象から外される予定となっていますが、それをやったらどうなるか。
行き場を失った税金が、さらにお 肉 へと向かうことは目に見えています(果たして、7~8月ごろの報道で、結果はどうなっているでしょうね)。
そもそも、「地場産品」という設定に無理がありまくりです。
日本の各地には、農業や酪農が盛んな地域もあれば、伝統産業が盛んな地域もあれば、工場が集まる地域もあります。それは、各地の風土や気候、立地条件など、さまざまな要素によって発展してきた地域の歴史そのものです。
それを一律に「地場産品」として競わせるのは、どう考えたって無茶な話です。返礼品として、どこかの工場で作られているネジを欲しいと思う人がいるでしょうか?(まぁ、日曜大工や DIY にはまっている人なら可能性ありますが・・・)
この制度は、返礼品を認めた時点で、すでに終わっていた制度なんです。「納税」という義務に「寄付」という共助の精神を結び付けたところまではまだ良かったのですが、それだけではあまり利用されないので、そこに「返礼品」という禁断のアメを付け加えてしまったのです。そこで、パンドラの箱が開きました。
パンドラの箱が開いた結果、ボクら庶民の「共助の精神」や「欲望」が弄ばれる結果となりました。
事態を収拾するには、制度を止めるのが手っ取り早いですし、それしか無いと思っているのですが、内閣の大御所が総務相時代に立ち上げた制度ですからね。今のままでは、制度そのものが無くなることは絶対にありません。
まぁ、庶民の一人として制度をトコトン楽しむ手だってあるのですが、「千と千尋の神隠し」のお肉が頭に浮かんでくるため、どうもしっくりこない今日この頃です。
ちなみに、こんな返礼品もあるんですね。しっくりきました。