敏感の彼方に

HSPエンジニアがお送りする、前のめりブローグ

フリーランスに絶対欲しいものは「家族(子ども)」と「寝て待つ勇気」

 

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インターネットや SNS、デジタル機器の普及、大企業の退職募集年齢の低年齢化、働き方改革、自由な働き方を求める風潮などが相まって、フリーランサー人口が増えていくことは間違いないと思っています。米国など、数年後には働く人の半分がフリーランサーになるとも言われています。

 

フリーランサーが見る地獄

一足先に、十数年ほどのフリーランサー人生を経験してきた私ですが、その生き方にはサラリーマンと大きく異なる側面があり、特に在宅ネット系フリーランスの場合は、以下のような地獄が待っています。

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こちらのエントリの方は、境界性パーソナリティ障害ということですし、「末路」と言ってもまだ1年ほどの経験ですから、書かれていることが誰にでも当てはまるわけではないでしょうが、それでもフリーランス初期の危機的状況が上手くまとめられていて、とても読みやすかったです。

 

私の場合は、何足かのワラジを履いているため、在宅ネット系の仕事もあれば、組織に属したり属さなかったり、クライアントとの打ち合わせや折衝が頻発する仕事もあり、精神衛生上ちょうど良いバランスで働かせてもらっているのですが、やはり在宅ネット系の仕事の際には、同じような経験をしました。つまり、こういうことですね。

  • 自由過ぎて(ストレスがなさ過ぎて)廃人街道まっしぐら
  • PC 作業のみのため身体的活動(≒ 食欲)が著しく低下
  • 対人評価がないため自己定義(アイデンティティ)が崩壊

 

サラリーマンのすごさが分かる

外的ストレスと心の状態との関係を表すのに、以下のようなグラフがよく用いられますが、自由が大きすぎてストレスがゼロに近づくと、人間の心は「無反応」になります。心が無反応の状態が長く続くと、人間はもはや人間ではなくなります。廃人です。

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身体的活動(≒ 食欲)の低下については、私はそれほど経験しませんでした。計算や思考、検討をたくさん要する仕事のため、逆に「脳ミソって結構エネルギー使うんだな」と実感するぐらいに食欲はありました。小学校から大学まで運動部に所属しており、割りと筋肉質なため基礎代謝量が多いことも影響しているのかなと思います。毎日、そこそこのカロリーを摂取しますが、ありがたいことに体重は学生の頃とほぼ同じです。

 

アイデンティティは、程度の差こそあれ、誰もが一定程度に崩壊します。人間は(おそらく動物も)他者との関係の中でしか生きていけないことを強く実感できます。そのあたりに興味のある方は、ぜひ崩壊しない程度に経験してみてください。在宅ネット系の仕事の場合、自宅で1人パソコンに向かっていると、自分が人間なのかマシンなのか分からなくなってきます。というか、マシンであることを確信してしまいそうになります。

 

以上3つ「廃人化」「食欲減退」「アイデンティティ崩壊」はつまり、人間(動物)が人間でなくなる方向のベクトルを持っており、マルクスが予言していたかどうかは知りませんが、在宅ネット系フリーランサーが増えていきそうな世の中では、「サラリーマン」という立場が人間を人間たらしめる最後の砦のように思えてきます。

 

なので、「サラリーマンはオワコン」などと囃し立てる方もいらっしゃいますが、よほど意志や情熱が強固な人を除いて、サラリーマンというのは将来的にあこがれの「職業」になるんじゃないかという気もしています。「子どものなりたい職業1位=サラリーマン」の復活です。

 

「廃人化」「食欲減退」「アイデンティティ崩壊」の克服

サラリーマンになれば、何も考えなくても「ストレス」「身体的活動(通勤)」「評価」という人間活動に必要なものが自動的に与えられるわけですから、これってすごいことなんです。もちろん、度が過ぎるとブラックになってしまうんですけどね。

 

それはさておき、「廃人化」「食欲減退」「アイデンティティ崩壊」をどうやって克服するかという話なんですが、それは簡単です。

  • 労働日数(休日)や労働時間を規定して死守する
  • 運動する
  • 目標(売上や利益)を立て PDCA をひたすら回す

 

はい、文字で書くのは簡単です。でも、こんなのを自力で守れる人はほとんどいません。

 

でも、私は守れます。いや、自慢ではなくて、そういう仕組みがあるからです。

 

今から振り返って、私が超ラッキーだったと思えるのは、在宅ネット系の仕事を始めた時点ですでに、家族(+子ども)がいたからなんです。

 

フリーランスに必須の「家族」

家族がいてくれるおかげで、上の3つが自動的に克服されます。

ただし、「家族を大切にしたい」という『家族ファースト』の意識が前提となります。私の周りで成功しているフリーランサーを見ていると、家族を大事にしている人が圧倒的に多いように感じます。卵が先か鶏が先か分かりませんが、家族を大事にできない人は、フリーランサーにならない方がよいんじゃないかとすら思います。

 

家族がいれば、起床時間や休日日数が安定します。パートナーや子どもに無理やり起こされたり、休日の家族サービスを強要されたりということもありますが、それ以上に、家族を大切にしようと思えば思うほど、普通に起きて家事・育児の一部を担おうと考えますし、休日をしっかり取って家族に向き合おうと思うからです。

 

単身だとメリハリのない時間が永遠に続く可能性もありますが、家族がいてメリハリが生まれることは、生活にリズムをもたらす大きなきっかけとなります。さらに子どもがいて幼稚園なり小学校なりに通うようになれば、そちらの生活リズムに引っ張られますので、とっても良い感じのリズムを刻めるようになります。

 

また、子育てに積極的に関わることは、運動や体力作りにもってこいです。私は経験上、子育てに最も必要なことは体力だと確信していますが、その体力は、子育てをしていく上でさらに強くなっていきます。

子どもが乳幼児のころは、抱っこしたりオンブしたり肩車したり、遊びや散歩の相手をしてやり、徒歩や自転車で公園や図書館やお店に出かけたり、そんなことを繰り返すことで、十分な運動になりますし筋力も維持できます。

 

小学生になった今は、キャッチボールをしたり、プールへ行ったり、スキー・スノボやスケートに出かけたり、山登りやハイキングに出掛けたり、そろそろ子どもについていくのが苦しくなるほど、十分に運動できています。子どもと良好な関係を築き、子どもを運動のきっかけに利用するのがポイントです。

 

あとは、経済面ですね。生活リズムや運動のきっかけも与えてくれる大切な家族を失うわけにはいきませんので、必然的に仕事の目標(売上や利益)を立てて、クライアントからのフィードバックも参考にしながら、PDCA をひたすら回し続けます。

 

そして、以上のような生活を回していくことで、少なくとも家族からは一定の評価をもらえるため、それがアイデンティティの1つになります。また、家族のためと思って仕事を回しているうちに、運良くクライアントからの評価も高くなれば、そちらのアイデンティティも確かめることができるわけです。

 

フリーランスに必須の「寝て待つ勇気」

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以上のような効果は、パートナーが専業シュフ(主婦 or 主夫)の場合に、さらに如実に現れます。かく言う私のパートナーも専業シュフですが、パートナーが専業シュフのフリーランサーというのは、日々かなりの恐怖感と闘うことになります。

 

自分しか収入源がないため、目標を明確にして一生懸命稼がなければなりませんが、かと言って、お金を増やすことばかりを考えると質が疎かになり、クライアントの評価も下がってしまいますので、結局は収入が減ってしまうことになります。そうならないように、収入と質のバランスがものすごく大切になります。どちらに偏り過ぎてもダメです。これは、士業などの労働集約型の会社でも似たようなものでしょう。

 

また、収入が落ちたり無くなったりすれば、生活が破綻してしまうわけですから、考えれば考えるほど、なんて恐ろしいい人生を選んだのだろうと思えてしまいます。

 

でも、そのような恐怖感に打ち克つことができるなら、家族の存在はものすごく大きな力になります。「自分しかいない」という恐怖感は、PDCA を回す大きなエネルギーになります。その結果、客先の評価も上がって、仕事が好転し始めます。

 

また、健康や体調を損ねることも大きなリスクになりますから、食事や運動や睡眠にも自然と注意を払うようになります。フリーランサーになってからタバコはすっぱりと止めましたし、食べ過ぎや飲み過ぎもなくなりました。その結果、常に体調が良くて頭のキレもよくなり、客先の評価も上がって、仕事が好転し始めました。

 

もちろん、フリーランサーを始めてからの数年は、恐怖感に負けそうになることもしばしばでしたが、どんな時でも「規則的な生活」「運動」「PDCA」を忘れずに仕事と向き合い、成功を何度か体験するうちに(もちろん、その裏にはたくさんの失敗もありましたが)、「自分にできる限りのことをやり、あとは果報を寝て待つだけ」という境地に落ち着きました。

 

成功を何度か経験できれば、「このやり方なら社会に受け入れられる」ということが分かりますので、あとはそのやり方で自分にできる限りのことをやるだけです。意識的にこうしないと、恐怖感ばかりを抱えていては、精神が先にやられてしまいます。自分の精神を守るために必要な線引きなんです。

 

ですので、フリーランサーとしてやっていけるかどうかは、早いうちにどれだけの成功体験を積めるかに掛かっていると思います。「サラリーマン」というワラジを脱いで「フリーランサー」というワラジに絞るのは、自分のやり方が社会に通用することを確認してから、あるいは社会に受け入れられるやり方をつかめるようになってからでも遅くないと思います。

 

以上のようなことは、別に「家族(or 子ども)」に限らず、何らかの形で自分を頼ってくれる存在や、自分の甲斐性でもって守りたい存在であれば、どんな対象でも構わないはずです。そういった存在が、ものすごく大きな力になりますから、フリーランサーを目指すなら、そのような存在をまずは見つけることから始めるのも1つかなと思います。

 

 

 

まとめ

フリーランサーになる理由が「自由が欲しい」という人ほど、そんな理由では長続きしない可能性が高いことに注意して欲しいです。大抵の人が「自由」に翻弄されたり押しつぶされたりする可能性は、企業の在宅勤務が思った以上に進まないこととも通底します。人間には、ある程度の不自由なりストレスなりが絶対に必要だからです。

 

ですのでフリーランサーは、その不自由なりストレスなりを家族(or 子ども)に求めるわけですが、それは守る対象としての「不自由」「ストレス」でもあるわけですから、あまり真面目に考えすぎると、精神に異常を来たしてしまいます。そうならないように、「果報は寝て待つ」勇気を持てるかどうか、自分に問いかけてみることも大事です。

 

ちなみに、私がフリーランサーの道を選んだ理由は、「世界労働遺産」に登録されそうなほど忙しい職場から離れたかったこともありますが、一番の原因は HSP の気が強いことだと思います。自分を守るために選んだ道ですから、少なくとも「自由が欲しい」という理由以上に覚悟はできていたような気がします。

HSP とは、病名のことではなく、感受性が生まれつき強く、ちょっとした環境の変化や他人の気持ちにとても敏感なため、五感の強い刺激や他人とのコミュニケーションに圧倒され、すぐに疲れてしまうタイプの人を表す心理学用語です。

さてさて、いろいろと書いてきましたが、インフルエンサーなどを含めて、巷で有名なフリーランサーは、結婚していたり、子どもを持っていたりすることが意外に多いと思うのですが、いかがでしょうか?

 

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