敏感の彼方に

HSPエンジニアがお送りする、前のめりブローグ

キンコン西野氏「革命のファンファーレ」はまだ鳴っていないと思いたい

 

 

お笑いコンビ・キングコングの西野亮廣さんの話題の書「革命のファンファーレ」を、発売から2カ月近くも経って読みました。

 

話題の本は発売日に読んでササっとレビューをアップする風潮がある中、読むまでに2カ月近くも掛かったのには、ただ単に忙しくて手に取る余裕がなかったというのもありますが、もう1つ決定的な理由があります。

 

こちらも絵本業界では異例の 30 万部を売り上げて話題となった前作「えんとつ町のプペル」は、今も続くさまざまな販売の仕掛けとともに、いわゆるフリーミアム(基本は無料、特別版に課金)のような戦略の一環として、発売から3カ月後にネットで無料公開され、賛否両論さまざまな議論がありました。

 

まだ読んだことのない方は、こちらで読めます。

spotlight-media.jp

 

おそらく次も何らかの形の「無料」があるだろうとは誰もが予測できることで、実際、この「革命のファンファーレ」についても、発売前からあちらこちらで「チラ見」可能となっていました。たとえば(↓)

lineblog.me

 

ちなみに、前半 40 ページはこちら(↓)で公開されています(これは発売後です)。

lineblog.me

 

そして、10月4日の発売からおよそ 10 日後に、決定的な出来事が起こりました。

 

「革命のファンファーレ」を全国の図書館 5,500 館に自腹で寄贈することが西野さん本人のブログで発表されたのです。

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きっかけは、「図書館の貸出によって書籍売り上げが低迷している」とする出版社からの意見に対して、「書籍の売り上げ減少は図書館のせいではない」ことを証明しようとお考えになったこと。

 

ブログや書中の言葉を借りるなら、エンターテイメントは時間面積の陣取り合戦であり、テレビやスマホなどよりも「本」というジャンルにコミットしてもらう機会(分母)を増やせば、必然的に買う人(分子)も増える、ということを理屈ではなく実験的に証明しようとする試みです。

 

それならば、この試みに応えない手はないな、と思って、図書館で「無料」で借りて読むことにしました。これが、発売から2カ月近くも掛かったもう1つの理由です。

 

図書館への寄贈がブログで発表されたのが 10/15(日)、全国の図書館に発送されたのが 10/17(火)、そして 、10/20(金)に地元の図書館の所蔵をネットで確認してみたら・・・・・ありましたっ!

 

その2~3日前に確認したときは無かったので、西野さんから寄贈されたものが貸し出しされることになった可能性が高いですね。

 

早速、図書館でネット予約してみたところ、「25人待ち」ということになりました。これはかなり待つことになりそうだ、と覚悟していたのですが、予約したことを忘れかけていた1カ月後に早くも自分の順番が回ってきて、手にすることができたという次第です。

 

そして、フムフムと読みました。

 

前半は、好きを仕事に → お金が要る → クラウドファンディング → 信用が大事 → ウソをつかず意思を明示する → そのための環境(メディア)を整える → ファンと直接つながる、という流れ。

 

余談ですが、「意思決定の舵は『環境』が握っている」というくだりは、数日前に読んだマーク・トウェインの「人間とは何か」に通じるものがあり、面白かったですね。

www.overthesensitivity.com

 

話を戻しまして・・・

中盤は、インターネットが物理的な制約を破壊 →(少なくともデータ化できるもの(コンテンツなど)は)ネット空間へ → データ自体に意味はなくなる → フリーミアム、という流れ。

 

後半は、「多くの人間を制作に巻き込む」「作品を必需品化」「他人の時間を使って広告する」「後悔の可能性をつぶす」「集めた情報を行動の起点とする」など、西野さんの行動原理が紹介されています。

 

前半から中盤にかけては、2頭身の青い猫型ロボットに名前が似ている方の著作等を含めて昔から言われていることが多いように思いましたが、おそらくこの本は、中高生から 25 歳ぐらいまでの若者向けに書かれていますので、ボクのようなオジサンやオバサンがどこかのレビューのように「二番煎じが多い」「目新しくない」と批判するのは、単なるうるさい外野になってしまいます。

 

ただし、著名人でありインフルエンサー(影響を与える人)でもあり、バックに大きな会社と多くのファン(信者)が控える西野さんが、その抜群の行動力でもって成し得た数々の成功談なわけですから、誰もがこのようなことを容易く行えるわけでないことには注意が必要です。

www.overthesensitivity.com

 

そういう点では、「えんとつ町のプペル」に関する成功談が多いのですが、若者向けであるなら、その裏にあるであろう数十倍、数百倍の失敗談がもっと披露されていてもよかったのかなと思います(西野さんのことなので、そういう書籍もいつか出すのかもしれませんが)。

 

後半の行動原理を本書のキモと考えるなら、この本はつまり「行動のための一冊」ということになります。実際、西野さんは、自身を新しい意味での(行動を通じた生き方としての)「芸人」と再定義し、「アイデアの良い実験台」と位置付けていますので、理屈やヘリクツ(仮説)を目一杯こねた上での行動(検証)の結果というのは、これから行動を起こそうとする若者にとって、参考になる部分がたくさんあると思います。

 

 

 

さて、「行動」の意味すら忘れかけているボクですが、何気に 5,000 千冊の絵本を読んできた立場から思うこと。

 

「えんとつ町のプペル」は、何回か読ませていただきましたが、やはり何度読んでも、子ども向けの絵本とは思えないのです。

 

ムスコNに読み聞かせしましたが、反応はいま一つ。小学生のムスメSにも読み聞かせしましたが、こちらもいま一つの反応でした(その美しい絵には少し食いついていました)。小学校で読み聞かせをしているツマMに聞いても、サークル内では話題にならなかったとのこと。

 

思うに、この絵本は、大人向けの絵本あるいは子ども時代にあまり絵本に接しなかった大人向けの絵本なのではないでしょうか。

 

ボクら大人は、自分たちの視点や価値観で良かれと思って子どもに色々与えますよね。奥が深くて哲学的な示唆に富む内容を良かれと思って与えてしまうこともあります。絵本が飽和するにつれて、そのような傾向が見られるような気もします。でも、子どもは単純であり、その単純さが子どもの良さです。

 

「からすのパンやさん」や「ぼくのおふろ」に描かれているようなワクワクする場面。「うんちしたのはだれよ!」のようにひたすらウンチが登場する絵本。そのような単純でインパクトある内容に子どもは魅かれます。理屈は不要です。

 

「えんとつ町のプペル」は、大人としては色々と考えさせられますが(長い歳月を掛けて制作され、さまざまな仕掛けを打って販売されたことを知ってしまっていますので、考えざるを得ない面もあります)、子どもには理屈っぽくって難しいですね。

 

でも、「革命のファンファーレ」の中では、親を通してプペルを「子ども」に届ける方策などが紹介されており、やはり子どもがターゲットなんでしょうか。

 

2年後に映画化されるようですが、そのプロモーションを含めて、同じターゲットを狙っていくのか、ターゲットを変えてくるのか、注目したいところです。

 

また、「革命の~」に書かれているように、「~プペル」は、世界で 100 万部の売り上げを目標に掲げておられます。実際、西野さんのブログには、香港、オランダ、メキシコなどなど、各地でイベントやフェアを開催した様子が報告されており、本気で成し遂げようとしていることが分かります。

 

アンチ的な書き方をすると、国内では、その知名度やさまざまなルートを通じて販売数を伸ばせた面が大いにあるでしょうから、「世界で 100 万部」という壮大な目標の結果がどうなるか。これが、西野さんの当面の目標である「ディズニー倒し」の試金石になるはずです。

 

さらに、戦略的に制作され販売されている「~プペル」は、その戦略があちらこちらで披露され、絵本や関連するイベントなどの露出も多く、食傷感が出てこないか心配もあります。そのようにとことん戦略的に販売された絵本の次の一手(映画化や新作の絵本など)がどのような革命を起こすのか。その点がとても気になります。

 

そして、その革命に際して、ファンファーレが高らかに鳴り響くことを期待します。

 

「行動」という漢字すら書けなくなりつつあるボクは、西野さんの行動力にただただ感心しつつ、まずは漢字の勉強からやり直します。

 

・・・・・・・・・・

 

さて、西野さんは、「本にコミットする機会(分母)を増やせば、必然的に買う人(分子)も増える」と考えて、「革命の~」を全国の図書館に寄贈しました。

 

おかげでボクはコミットできました。ありがとうございます。

 

そのボクが「分子」になるかどうかは、次に書店を訪れた際の衝動に一任します。

 

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