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大学入学共通テスト|変更点の記録|国語・数学・英語の今後の傾向対策

 

 

2021年春の大学入学予定者(2020 年度の受験生)から、国公立大学の入試が大幅に変更となります。従来のセンター試験に代わって、「大学入学共通テスト」が始まります。

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つまり、2002年4月~2003年3月生まれの現役高3生が、センター試験の代わりとなる「大学入学共通テスト」を初めて受験することになります。

 

このテストは、教育再生実行会議により 2013年に出された提言をベースとして、従来、以下の2本柱がセンター試験からの主な変更点となっていました。

  • 英語 : 現在の「読む」「聞く」に「書く」「話す」を追加(民間試験活用)
  • 国語・数学 : マークシート式に記述式を追加

 

しかし、制度不備を理由として、英語の民間試験は 2019年11月に、国語・数学の記述式問題は同年12月に、いずれも実施が大幅に延期されることが決定しました!

 

【注意】

この記事では、延期決定までの制度の不備の記録として、センター試験から大学入学共通テストへの変更点(試験内容、試験日程、試験時間、評価方法など)をまとめています。今となっては、ほとんど役に立たない情報ばかりです ( ゚Д゚) 。

 

ただし、「思考力・判断力・表現力」を評価可能にするマークシート式の改革や、英語のリスニングを重視する方針は、そのまま残ることになりますので、以下の「マークシート式」や「プレテスト」の情報は、引き続き有効と考えられます。

 

具体的に、国語では、複数の資料(契約書などの実用文を含む)を読み解いて回答する問題が大幅に増えますし、数学では、数学の知識以外(読解力など)も求められます。また、英語では、リスニングの配点が高くなり、問題文の読み上げに「1回読み」が混在することになるほか、設問が英語化したり単語量が増加したりします。このように、従来のセンター試験とは明らかに異なる試験となることが確定しています。

 

 

センター試験から大学入学共通テストへの変更点

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試験内容

 【国語】【数学】

上に書いたように、マークシート式に加え、記述式の問題が導入されます(後述)。

 

【英語】

民間試験を活用して、「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能を評価します。ただし、混乱を避けるため、当初4年間(2023年度まで)は、大学入試センターが作る2技能(読む・聞く)のマークシート問題も併用される予定です。

《参考情報》
英語民間試験の情報に関しては、文部科学省のポータルサイトにおいて、「英検」など6団体7種類の試験の実施日や試験会場、検定料、申し込み方法のほか、試験監督方法や採点の質の確保、不正防止策、トラブルへ対応、障害がある受験生への配慮など、最新の情報が提供されています。

 

【地理歴史・公民】【理科】

引き続きマークシート式ですが、2024年度からは、記述式問題の導入も検討の俎上に上っています。

 

試験日程

センター試験では、1月中旬の2日間が試験日となっています。

 

大学入学共通テストでも、同じく1月中旬の2日間が試験日です。

 

ただし、英語(民間試験)については、高校3年の4~12月に受けた試験(受験回数は無制限)のうち2回分までが大学に送られます(たった2日間では、全受験生の4技能を評価することなど不可能ですので)。

※ 浪人生の場合は、前年度(高3時)の成績も含めて、計4回分までが大学に送られます(前年度の成績を認めるかどうかは、各大学の判断になります。)。

 

なお、民間試験としては、現在のところ、「ケンブリッジ英語検定」「英検(新型)」「GTEC」「IEL TS」「TEAP」「TEAP CBT」「TOEFL iBT」「TOEIC」の7団体8種が審査に合格しています。

※ これらのうち、TOEICは、一連の運営処理(受験受付 ~ 試験実施 ~ 結果提供)が複雑で、対応が困難なことを理由に、撤退することを発表しました(2019年7月現在)。

 

試験時間

【国語】

センター試験では、マークシート式のみの 80分ですが、大学入学共通テストでは、記述式の導入に伴い、100分に延長されます。なお、記述式の出題範囲は、古漢を除く「国語総合」となっています。

 

【数学】

センター試験では、マークシート式のみの 60分ですが、大学入学共通テストでは、記述式の導入に伴い、70分に延長されます。なお、記述式の出題範囲は、「数学I」です。

 

評価方法

センター試験では、マークシート式のため、1点刻みの採点となっています。

 

大学入学共通テストでも、マークシート式の問題は、1点刻みの採点です。

 

ただし、記述式の問題については、3~5段階の段階別評価になります。

 

また、英語(民間試験)については、素点と国際基準規格「CEFR(セファール)」に基づく段階別評価(6段階評価)が用いられます(CEFR = Common European Framework of Reference for Languages : 欧州言語共通参照枠)。

 

大学入学共通テストは、センター試験と以上のような違いがあるのですが、具体的にはどのような問題が出されるのでしょうか。大学入試センターがモデル問題を公表した上で、すでに2回のプレテストも実施済みですので、それぞれ順に見ていきたいと思います。 

基本的に、本番前に入手可能な具体例は、これらのモデル問題とプレテストのみです。

 

 

 

記述式のモデル問題例と対策

2017年5月、大学入試センターから、記述式のモデル問題例と正答例(国語と数学それぞれ2問ずつ)が発表されました。大学入試センターのサイトに詳しく掲載されています(↓)。

「大学入学共通テスト」 記述式問題のモデル問題

 

国語

問題例1では、行政機関の広報資料に対する話し合いを基にして、さまざまな意見(提案書含む)を読み解いていく必要があります。そして、読み取った情報を分析・加工し、字数制限などの条件に応じて表現していく力が求められます。

 

また、問題例2では、「契約書」という実社会との関わりが深い文章を場面の中で的確に読み取り、設問中の条件として示された目的等に応じて表現していく力が求められます。

 

センター試験では評論や小説が使われていますが、これとは趣きが大きく異なり、頭の中で処理すべき情報量も多く、何より、どの設問でも字数制限があるため、日ごろから記述に慣れていないと時間が足りなくなりそうです。

 

日々の学習の中で、自分の考えを持つ、他人の意見もしっかりと聞く、多様な意見をまとめる、まとめた考えを文字にする、という作業の繰り返しが大切になると思われます。また、字数制限内で記述をまとめる訓練も必要です。

 

数学

問題例3では、与えられた条件下で三角形が複数できる場合について、二次方程式の解の存在範囲に着目する方法と図形的に捉える方法の両者を比較したり、三角比の知識と結びつけたりする応用力が問われています。

 

また、問題例4では、世の中にある具体的な事例を題材としています。問題の意味を数学的に捉え、学んだ知識と結び付け、回答を組み立てて記述表現する力が問われています。

 

登場人物がいて、その考え方が示されている点はセンター試験と異なりますが、問題自体は、数学的な発想力というより、持っている知識やテクニックで解けそうですから、センター試験に対応できているのであれば、それほど困ることはなさそうです。ただし、記述式の回答は、従来の暗記学習だけでは対処しきれませんので、簡潔かつ的確な表現で書けるように訓練する必要があります。

 

記述式問題のまとめ

記述式問題では、頭の中にある考えを、短い時間で的確に表現できるかどうかがポイントになります。教科横断型の発展問題という視点では、レベルは異なるものの、現行の公立中高一貫校の適性検査が頭に浮かびました。

 

おそらく、センター試験の得点が高い層にとっては、記述表現に慣れていくことも大きな負担ではないでしょうから、この層の中で大きな差が生じることはなさそうです。

 

一方、中位層では、問題を十分に理解した上でないと記述表現もままならないため、負担が増えるものと思われます。曖昧な暗記だけでは、対処が難しくなります。

 

ですので、上位層とその下の層との差が開くのではないでしょうか。

 

また、このような変化をビジネスチャンスと捉える塾や予備校、私立中高一貫校などでは、生徒確保のためにも、すでに先行して対策に乗り出しています。

 

結局、受験のための勉強が増えてしまうのではないか、経済力によって教育格差が拡がってしまうのではないか、といった懸念はあります。

 

 

 

マークシート式の問題例と対策

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2017年7月、大学入試センターから、マークシート式のモデル問題例と正答例(国語と数学それぞれ2問ずつ)が発表されました。以下のサイトに詳しく掲載されています(↓)。

「大学入学共通テスト」マークシート式問題のモデル問題例

 

大学入試センターの方針として、

  • 国語では、多様な文章をもとに,複数の情報を統合し構造化してとらえること
  • 数学では、日常や身近な課題を題材として数学を活用する場面を設定し、数学的な思考を深めること

という点が挙げられていますので、これらに沿った内容の問題となっています。

 

マークシート式問題については、各問題例から、どのような力が問われているかを簡単に紹介したいと思います。

 

国語

問われているのは、こんな力です。

[問題例1]
  • 短歌についての2つの評論を比較し、その解釈や論理展開を理解する力
  • 短歌についての生徒たちの議論を読み、多様な意見を汲み取る力
[問題例2]
  • 現代に照らして古文を解釈する力
  • 古文を読んだ2人の対談から、考え方を的確に理解する力

 

数学

問われているのは、こんな力です。

[問題例3]
  • 都道府県別の平均睡眠時間について、平均気温や通勤・通学時間との関係を多面的に考察する力
  • 問題の場面に応じて、データの傾向や変数間の関係を考察する力
[問題例4]
  • 3つの円とその交点を通る直線について,性質を見出し、証明や構想を立てる力
  • 図形の性質に基づいて、問題の本質を見いだす力

 

 

 

第1回試行調査(プレテスト)について

去る 2017年11月、全国約1,900校、延べ約 18 万人の高校2、3年生が参加して、第1回試行調査(英語以外)が行われました。また、2018年2月には、全国158校、約6,300人の高校2年生を対象として、第1回試行調査(英語)が行われました。これらについて、問題や正解表、問題のねらいなどが大学入試センターから発表されています。

www.dnc.ac.jp

 

第1回試行調査は、2020 年度から順次実施される学習指導要領の見直しに合わせて、十分な知識をもとにした思考力・判断力・表現力を意識したものであり、問題の形式や分量、試験時間などについて、本番をある程度想定したものとなっています。

 

第1回調査の全体的な特徴として、以下のような点が挙げられます。

  • 問題冊子のページ数がセンター試験から大幅に増加
  • 複数の資料を読み解く問題が多数
  • 「探求的な学び(アクティブラーニング)」を意識した問題が目立つ

 

特に、英語に関しては、センター試験と以下のような違いがあります。

  • リーディング(筆記)の問いが英語で出されている
  • 単語の発音やアクセント、文法・語法などの問題がなくなった(民間試験に託されたと解釈できる)
  • リスニングの読み上げが1回だけの問題がある(難易度も高い)

 

問題文・資料が多く、数学でも読解力が必要になりますし、全体として、思考力はもちろんのこと、膨大な情報を短時間で処理する能力も必要となる印象があります。このため、「時間が足りない」「今の高校の授業(知識偏重)では解けない」「(試験時間が長くなり)集中力の維持が大変」という声が聞かれます。上にも書いたように、センター試験の得点が高い上位層であれば対応できるでしょうが(それでも、かなりの慣れが必要です)、中下位層にはかなり厳しいテスト内容です。

 

実際、記述式問題では、国語の一部や数学全問で正答率が数パーセントに留まり、特に数学は、全問で無解答率が半数にも上りました。

 

このままの難易度では受験生を選抜できないため、次の第2回試行調査(プレテスト)では、問題の文字数や資料の数を減らしたり、正答に導く工夫をこらしたり、難易度を下げて平均正答率を高くする配慮がなされました。

 

第2回試行調査(プレテスト)について

去る 2018年11月、全国 528 の試験会場で、約8万人の高校2、3年生が参加して、第2回試行調査が行われました。問題や正解表、問題のねらいなどが大学入試センターから発表されています。

www.dnc.ac.jp

 

1回目の試行調査で問題となった正答率の低さを解消するため、読む資料を減らしたり問題の文字数を減らしたりした結果、完成度が1回目よりも高く、本番で使えるレベルのテスト内容となりました。

 

ただし、問題の分量が減ったとはいえ、問題文を読むだけでも相当の時間が掛かるため、センター試験よりも得点差が大きくなることが予想されます。

 

難関の国公立大学を目指す層であれば、個別試験(2次試験)の勉強が共通テスト対策にも十分なり得るため、それほど恐れるレベルではありませんが、現行のセンター試験で苦しんでいる層にとってはかなり難しく、点数を伸ばせない可能性が高いです。

 

なお、大学入試センターは、以上のモデル問題例および2回の試行調査の結果に基づいて、本番では、センター試験よりも1割低い5割程度の平均正答率を目指しています。

 

※ 第2回試行調査(プレテスト)の数学Ⅰ・数学Aでは、記述式の小問3問(第1問〔1〕の解答欄(あ)、第1問〔3〕の解答欄(い)、第2問〔1〕の解答欄(う))が出題されたものの、正答率があまりに低かったため、本番では、3問とも数式のみを記述する問題に変わることが決まりました(2019年7月現在)。

 

 

 

おまけ「大学入試改革のここが心配」

センター試験の代わりとなる「大学入学共通テスト」については、以上の通りなのですが、個別選抜試験(いわゆる2次試験)については、ほぼすべての国公立大学がAO入試化すると言われており、従来のような学力テストのほか、小論文、面接、集団討論、プレゼン、内申書、資格等の成績、活動報告書、などが判断材料になりそうです。

 

従来の点数主義から、人物評価へと大きく舵を切ることになります。

 

これは、欧米のやり方を参考にしたものだと思いますが、たとえば米国の Ivy(ブラウン大学、コロンビア大学、コーネル大学、ダートマス大学、ハーバード大学、ペンシルベニア大学、プリンストン大学、イェール大学)に代表される有名私大では、エッセイや面接などの人物主義が定着しています。

 

この人物主義は、「育ち」の良し悪しがそのまま露呈する、と言われます。育ちの良し悪し、つまり「格差」が露呈する、ということです。この点が、日本の大学入試改革においても不安になります。

 

点数主義では、点数しか見ないわけですから、「人物」を見ようがありません。その点では、育ちがどうあれ、勉強さえ頑張れば、下剋上を実現できる可能性があるわけです。

 

人物主義になり、育ちの良し悪しが露呈してしまうと、それが具体的な評価項目ではないとしても、マイナス要素になって合格を得られず、結果的に格差の再生産が起こってしまいます。

 

点数主義では、学校で習ったことを入念に復習したり、自分で問題集を買ったり、せいぜい通信教育で補完する程度でも、やる気さえあれば結果がついてきます。

 

一方、人物評価では、たとえば小論文、面接、討論、プレゼンなどは、もやは自助努力で何とかなる範囲を超えてしまうのではないでしょうか(もちろん、学校でもそれなりの受験対策をしてくれるでしょうが)。塾や予備校で対策を受けた人が圧倒的に有利になりそうです。

 

自己推薦書など、自分で書くべき書類も、塾や予備校で徹底的に対策することになるのでしょうね。

 

内申書については、先生の主観で評価されるもの(態度や意欲など)も重要になってくるわけですから、(少なくとも表面的には)先生に気に入られようと努める生徒が続出しそうですね。高校生のころなんて、「大人に反発してなんぼ」という年頃じゃないですか? その態度を隠さなければならないなんて、不幸ですね。

 

新制度の詳細を詰めていく段階では、なるべく格差の再生産が起こらず、高校生がのびのびと(?)先生に「反発」できるような環境になることを願います

 

 こ 

 

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