敏感の彼方に

HSPエンジニアがお送りする、前のめりブローグ

[信用スコア]人工知能(AI)に格付けされて踊り狂う経済社会

 

 

「スコア・レンディング(Score Lending)」が日本でも本格的に展開され始めています。個人情報を人工知能(AI:Artificial Intelligence)で評価し、その人の信用力を点数化して融資枠を決定するサービスです。

 

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中国では、アリババ(阿里巴巴)グループなどが同じようなサービスを数年前から展開しており、スマホ決済サービスと連動して、個人情報(学歴、資産など)に基づく信用力(スコア)に応じた様々な優待が受けられます。

 

つまり、人工知能が個人情報などを基に人間を格付けし、それに応じた優待を与えるわけです。企業側は、集まった個人情報をいろんなサービスに利用するのが目的ですね

 

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評価経済社会の新しい指標

5カ月ほど前に、VALU という新しいマイクロトレードサービスが登場しましたし、今秋には、Timebank という同種のサービスもリリースされました。

 

これらは、Twitter のフォロワ数やブログの PV 数などと並んで、評価経済社会(お金ではなく評価が重視される社会)での新たな指標となっています(疑似証券化された CF または投げ銭システムとも言えます)。

 

そして、今後の伸びが予想されるスコア・レンディングの「信用スコア」も、いわゆるインフルエンサーと呼ばれる方たちにとっては、垂涎の新指標となることでしょう。

 

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アフィリエイトサービスで「スコア・レンディング」のプロモーションが現れたら、「私は〇〇点でした。」というコメントとともに、多くの記事が量産されることになるのでしょう。

 

誰しも、「自分のスコア」というのは気になるものです。

 

スコア・レンディングでは、「スポーツ経験」や「よく出掛ける場所」など、一見して「信用」とは関係なさそうな 数十~数百項目もの質問に答えますが、このように質問数が多いほど、人工知能が客観的に自分を評価してくれているような気になります。

 

そうやって、融資を受ける/受けないに関わらず、多くの人が「マイスコア」に一喜一憂することになるのでしょう(もちろん、ボクもね)。

 

人間の格付け

ところで、2年ほど前になりますが、カナダのベンチャー企業が「Peeple」というスマホアプリを公開するのに先立って、大きな議論が巻き起こりました。

 

このアプリは、仕事やプライベートでユーザが出会った相手(同僚、友人、恋人など)を5段階で評価し、コメントを付けられるサービスです。

 

イジメやストーカー行為を助長する可能性があることはもちろん、人間を格付けするような行為そのものへの批判や反発が強くありました。

 

その後、さまざまな批判を受け、プライバシ保護や身元確認が強化され、嫌がらせのブロックや報告が可能となり、星印の評価もなくなって、現在も無料で入手できます。

 

この騒動から分かるのは、レストランを格付けするのと違い、やはり「人間の格付け」には、相応の反発がある、ということです。

 

お付き合いや結婚の条件

スコアレンディングの場合、「ボクは、〇〇点だった」「ワタシは、〇〇点でした」というインフルエンサーの報告がネットを賑わす程度であれば、まだ遊びの範疇ですが、やがて少しずつ「信用スコア」が独り歩きし始めると、自分を他人と差別化するための道具になり、お付き合いや結婚を考える際の条件の1つになることも予想されます。

 

お付き合いや結婚相手のスコアが高いと、それだけ自分も融資や優待の恩恵に浴することができるわけですからね。

 

そうすると、「スコアアップ講座」なる新しいサービスが登場して、信用スコアを高めるテクニックなどが流布されるようになります(経済が活性化するわけですから、悪いものでもありません)。

 

言い換えると、「信用スコア」を算出する人工知能を「だます」テクニックが求められるわけです。

 

点数主義の再来

スコアリングというのは、点数をつけることです。

つまり、人間が本質的に大好きな「点数主義」なわけです。

 

単純に比較できるものでもないですが、2020 年度から大きく変更となる大学入試では、「点数主義」から「人物主義」への流れが打ち出されているわけで、それとの対比も面白いですね。

 

たとえば、「人物」を見る AO 入試の面接官が、仕事帰りに「スコアアップ講座」に通う場面などを想像すると、何かの冗談としか思えなくなります(その頃には、AO 入試の面接も人工知能の仕事になっているかもしれませんが・・・)。

 

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人工知能(AI)の上で踊らせるか、踊らされるか

人工知能(AI)は、過去のパターンに従って一人ひとりをスコアリングするのが基本ですから、「過去志向」であって「未来志向」ではありません。

 

また、パターンに従うがために、パターン間(作文の「行間」のようなもの)を読めるわけでもありません。

 

この点、「信用」は過去の積み重ねでもあるわけですから、信用スコアの算出は、人工知能に適した「仕事」と言えそうです。

 

ただし、「信用スコア」が独り歩きし始めたら注意が必要です。未来志向ではない指標に未来を託し始めると、気付かぬうちに自由が奪われて、社会が息苦しくなります。

 

この種のサービスが多くなってくると、人工知能というプラットフォーム上で「躍らせる側」か「踊らされる側」か、どちらに立つかで人生が大きく変わるような気がします。

 

躍らせるのが罪なわけでもないですし、楽しく踊ることが悪いわけでもないのですが、自分が人工知能とどのような関係にあるのかぐらいは、常に把握しておきたいものです。

 

 

 

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