
日本は、諸外国に比べて、電子マネーやクレジットカードによる「キャッシュレス化」が圧倒的に遅れており、依然として多くの現金が流通しています。
日本には偽札が少なく、現金を持ち歩くリスクも小さく、丁寧な扱いできれいな現金(特に、紙幣)が流通しているため、キャッシュレス化の必要性が低いためです。
ただし、中国などの海外では、スマートフォンや携帯電話を利用するモバイル決済(QR コード決済/バーコード)を中心として、キャッシュレス化が凄まじい勢いで進んでおり、その影響は確実に日本にも及んでいます。
紙幣や硬貨は、製造・輸送・使用・保管・偽造対策にコストが掛かる上、引き出しのための ATM 網の整備・維持にもコストが掛かっており、その効率の悪さは、もはや完全に時代遅れとなりつつあります。
ATM 手数料で稼いでいる銀行が多い現状では、キャッシュレス化が一朝一夕に進むとも考えにくいのですが、メガバンクを中心に独自の仮想通貨の導入が検討されるなどしており、将来的にはキャッシュレス化が確実に進んでいくことでしょう。
なお、ICT総研の市場動向調査によれば、キャッシュレス決済サービスの利用者数は、以下のように伸びていくとの予測です。
ICT総研「2019年 モバイルキャッシュレス決済の市場動向調査」より
そこで、時代に乗り遅れないように、現金以外の支払い方法(キャッシュレス決済 = 電子決済)を種類別にまとめてみました。メリット/デメリットも書いておきますので、参考にしてみてくださいね。
- クレジットカード
- デビットカード
- 電子マネー
- モバイル決済(QR コード決済/バーコード決済)
- おまけ(その1):小切手
- おまけ(その2):ポイントカード
- おまけ(その3):デジタル通貨(電子通貨)
- まとめ
クレジットカード

クレジットカード(クレカ)とは、もはや説明の必要もないでしょうが、信用をベースにして後払い(つけ払い)できるカードのことです。
【例】 VISA、Mastercard、JCB、AmericanExpress、UC、ダイナース など
メリット
- ポイントが貯まりやすい
- 付帯サービスが充実している(旅行保険などの各種保険)
- クレジットヒストリー(信用履歴)を作れる
- ネットショッピングに有利となる(代引き手数料の免除など)
デメリット
- 使い過ぎの可能性がある
- 年会費が必要なカードもある
デビットカード
デビットカードとは、クレジットカード(VISA、MasterCard、JCB など)の加盟店で利用でき、支払いと同時に銀行口座から引き落とされるカードのことです。
【例】 Visa デビット、JCBデビット、J-Debit など
メリット
- 審査がない
- 口座残高内での使用になるため、使いすぎない
- 海外の ATM で現地通貨を引き出せる
- 取り扱い銀行ごとに付帯サービスが用意されている
デメリット
- 口座残高以上の利用はできない(つけ払いできない)
- 分割払いできない
- 一般的にクレジットカードよりもポイント還元率が低い
電子マネー

電子マネーとは、サインや暗証番号の入力なく、現金の代わりとして支払いに利用できるカードのことであり、「プリペイド型」と「ポストペイ型」に大別されます(いずれかを選択できるタイプもあります)。
プリペイド型
現金やクレジットカードで予め購入・チャージしておき、その金額を上限として利用できるカードのことです。電車の乗車券と一体になった「交通系」と、各種商業施設で利用できる「商業系」に大別されます。
【例(交通系)】Kitaca(北海道エリア)、 Suica、PASMO(以上、東北・関東エリア)、TOICA、manaca(以上、中部エリア)、ICOCA(近畿・中国・四国エリア)、SUGOCA、nimoca、はやかけん(以上、九州エリア)
【例(商業系)】 楽天 Edy、nanaco、WAON、au WALLET、d カード、Kyash、LINE Pay カード、T マネー、おさいふ Ponta、App Store & iTunes カード、Starbucks Card など
メリット
- 基本的に審査がない
- 購入・チャージした金額内での使用になるため、使いすぎない
- 設定金額以下になると(改札等で)自動的にチャージされるカードもある
- クレジットカードでチャージすれば、ポイントを二重取りできる
- 提携カードごとに付帯サービスが用意されている
デメリット
- 持主を特定できない(無記名式の)カードは、紛失時に停止・再発行できない
- チャージに手間がかかる
- チャージを払い戻しできない場合がある
- 一般的にクレジットカードよりもポイント還元率が低い
ポストペイ型
クレジットカードとの紐づけにより、利用金額が銀行口座から後日引き落とされるカードのことです(クレジットカードなしで利用できるタイプもあります)。「交通系」と「商業系」に大別されます。
【例(交通系)】 PiTaPa(近畿・中国・四国エリア) ※ プリペイド利用の場合もあり
メリット
- チャージの手間がない
- クレジットカードの上限額まで利用できる
- クレジットカードのポイントが貯まる
- 提携カードごとに付帯サービスが用意されている
デメリット
- 使い過ぎの可能性がある
- 交通系の場合、相互利用エリアではチャージが必要になる
ちなみに、ICT総研の調査によれば、現在の電子マネー利用者数ランキングは、以下の通りとなっています。上位4種はいずれも、長い歴史を誇る電子マネーです。歴史の中で培われた信頼性や利便性は、そう簡単に他者で置き換えられるものではないことがよく分かります。
ICT総研「2019年 モバイルキャッシュレス決済の市場動向調査」より
モバイル決済(QR コード決済/バーコード決済)

上に書いた「電子マネー」の多くは、「おサイフケータイ」「Apple Pay」「Google Pay」等との連携により、物理的な「カード」のみならずスマホや携帯電話でも支払い可能ですが、ここで言う「モバイル決済」とは、物理的な「カード」の要らない「純粋な」モバイル決済方式(QR コード決済/バーコード決済)のことです。
【例】 d 払い、au ペイ、LINE Pay 、楽天ペイ 、メルペイ、Origami Pay、pring、PayPay、7pay、ファミペイ、など
メリット
- 物理的なカードが要らない
- チャージの必要がない
- おさいふケータイ等に非対応のスマートフォン・携帯電話でも利用できる
- ポイント還元や割引などの特典がある
- 購入履歴をアプリ内に残せる
- クレジットカードなし(銀行口座との紐づけ)で利用できるものもある
- SNS や電話番号を用いた送金機能を有するものもある
デメリット
- 使い過ぎの可能性がある(上限を設定できるタイプもある)
- 利用できる店舗がまだ少ないものもある
ちなみに、ICT総研の調査によれば、現在のスマホ QRコード決済利用者数ランキングは、以下の通りとなっています。楽天ペイはネット通販との組み合わせ、PayPayは 2018年12月に実施した「100億円あげちゃうキャンペーン」の効果、LINE Payは「LINE」との連携の効果によって、上位にランクされています。
ICT総研「2019年 モバイルキャッシュレス決済の市場動向調査」より
いずれも歴史の浅いサービスばかりです。今後、どのサービスが日本のスタンダードになるかは、ユーザの動向次第です。各社、ユーザの囲い込みを強化するため、今後も様々なキャンペーンを打ってくることは間違いありません。
おまけ(その1):小切手
ネットバンキングの普及ですっかり影が薄くなった「小切手」ですが、キャッシュレスの元祖的存在であり、古い会社や年配者の間では、まだまだ現役です。小切手は、銀行の当座預金口座を介してお金をやり取りできる有価証券です。
メリット
- 現金の受け渡しが不要になる(キャッシュレスそのものです)
デメリット
- 当座預金口座の残高に不足があれば、引き落とせずに不渡りが発生する
おまけ(その2):ポイントカード
キャッシュレスとは直接関係ありませんが、ショッピングのポイントを貯めるのに便利なのがポイントカードです。ここでは、全国の提携店やインターネットの提携サイトでポイントを貯めたり使ったりできる「共通ポイントカード」についてまとめておきます。
メリット
- カード1枚で、さまざまな店舗・サイトのポイントを貯められる
- 割引などの付帯サービスも豊富にある
- プリペイド機能を搭載しているカードもある
デメリット
- すべての店舗・サイトに共通しているカードはない
おまけ(その3):デジタル通貨(電子通貨)
大手企業なども参入して独自通貨の発行が相次いでいる「仮想通貨(Virtual Currency)」は、通貨(支払い)よりも資産(投資・投機)の側面が色濃くなっていますが、世界的には、中央銀行やメガバンクを中心として、同じくブロックチェーン技術を利用した「デジタル通貨(電子通貨)」の検討が進んでいます。

日本でも、みずほ・ゆうちょ・地方銀行が連携する「J コイン」や、三菱 UFJ 銀行が独自開発中の「MUFG コイン」といった構想が実際に動いています。
基本的には1コイン=1円という固定レートになりますので、安心して支払いに利用できます。コインが実際の口座と紐づけられるため、デビットカードのデジタル版(電子版)という位置付けになります。
決済は、スマホや携帯電話によるモバイル決済が中心となりそうですが、高齢者にも配慮して、カード型も検討されているようです。また、認証には、暗証番号を利用するほか、指紋認証も検討されているようですね。
まとめ
以上、現金以外の支払い方法(キャッシュレス決済)をなるべく簡単にまとめてみました。
キャッシュレスの歴史を振り返ると、小切手やクレジットカードに始まり、デビットカードが登場して、現在は電子マネーが主流になりつつありますが、今後は諸外国の影響も受けて、モバイル決済(QR コード決済/バーコード決済)の割合が高まっていくことでしょう。そして、デジタル通貨へ、という流れです。
キャッシュレスの動向に注目して、「マネー難民」にならないようにしましょうね。