
最近、仕事も家事・育児も忙しく、本を読む時間が極端に少なくなりました。令和になってからも、まだ『ぼくらの七日間戦争』しか読めていません(再々々々々読ぐらいです)。
一方、街の大型書店に繰り出せば、新刊本が所狭しと並んでいます。その中でも、何か仕事に役立つ情報はないものかと、ついついビジネス書(ビジネス本)コーナーに目が行くのですが、あまりの多さにタメ息が出てしまいます。
それでも諦めず、あまりお金を掛けずに短時間でビジネス書を選んで読む方法を考えてきました。そこで、ビジネス書を「古典本」「ハウツー本」「教養本」に分けて、その方法をまとめてみます。
古典本
古典については、Google で「ビジネス 古典」、「ビジネス 名著」などと検索すれば、だいたい似たようなビジネス書を紹介するサイトがいくつも出てきますので、その中から自分に合いそうな本を読めば良いと思います。
定番は、以下のような書籍ですね(「古典」と呼ぶの? という新しい本も含みます)。
特に、最後の『V字回復の経営』は、今から10年以上も前に出版された本ですが、内容に古さを感じさせません。著者自身が手掛けた経営改革の実例を実話ベースの小説風に仕上げたもので、従来型日本式経営の病理、会社の人間関係力学、組織論・経営戦略論などを迫力ある生々しいストーリーの中で勉強できます。
また、ビジネス書の範疇ではありませんが、以下の2冊にも大きく影響を受けました。
前者は、朝永振一郎らとともにノーベル物理学賞を共同受賞した R.P. ファインマンによる自伝的エッセイです。超理系人間の発想の源や奥行きを面白おかしく知ることができます。特に理工系の学生さん向けです。後者は、30年ほど前に大きな話題となった本ですが、今でも十分に通用する英語の感覚を身に付けることができます。特に、冠詞と前置詞に対する理解がものすごく深まります。
読み継がれている古典は間違いありませんし、それほど膨大に存在するわけでもありませんので、学生時代や社会人初期の若いうちに手当たり次第に読んでおきたいところです。
ただし、ビジネスというのは人間が営むものであり、ビジネス書も人間を中心に据えた論が展開されますが、組織や個人の在り方・考え方というものは時代とともに変容しますので、いくら古典が本質を突いているとはいえ、それが現在のビジネス環境にまるまる当てはまるとも考えられません。あくまでも「本質」の勉強です。
また、古典本は、抽象的で難解な場合も多く、若くてビジネス経験が浅ければ浅いほど、挫折する確率も高くなります。有名な書籍ならマンガ版も出ていますし、以下で説明する「ハウツー本」や「教養本」できっかけを作ってから、古典に挑戦するのもありですね。
ハウツー本
ハウツー本は、その名の通り「How to(= 方法)」を学ぶために存在します。裏を返せば、方法を学べないハウツー本には意味も価値もない、ということになります。
方法を学べるかどうかは、「具体性」と「難易度」で確認します。
ハウツー本を探しているということは、「やりたいこと」が明確になっているはずです。その場合は、必ずしもハウツー本を購入する必要はなく、ネットで検索して得られた情報をツギハギするだけで間に合う場合も往々にしてあります。無駄な出費は抑えましょう。
具体性
それっぽい具体例が書かれているようで、実際には、漠然とした抽象的なことしか書かれていないハウツー本に結構な確率で出会います。心地よく読み進められるものの、読後に何の方法論も身に付いておらず、スキルも発揮しようがない、ということになってしまいます。
特に、その分野の専門家ではない素人が、ネットや他者の本から拾った情報を寄せ集めてそれっぽく仕上げたハウツー本に、この傾向が多く見られるように感じます。著者のプロフィールは、しっかりと確認しましょうね。
難易度
図表が何のためにあるかというと、理解を深めるのみならず、文字だけの場合よりも記憶に定着しやすくするためです。ハウツー本なので、より長くより深く記憶される方が良いに決まっています。複雑で見栄えのしない図表は、メモリから消えてしまうのも早いため、なるべくシンプルな図表で解説されているハウツー本が良いと思います。
最近は、「東大」「京大」を冠した書籍(たとえば、「京大式 ~ する方法」)が多く出回っているように感じます(以前から、出回る周期があるようにも感じます)。もちろん、ボクら一般人が平易に実践できる方法を分かりやすく紹介している本もたくさんありますが、中には、「それは、東大・京大に入れる脳ミソなり能力なりを持っていることが前提だろう」と思える方法論を著したものも少なからず見受けられます。
書店でパラパラとページを繰ってみて、図表や具体的方法論が自分に合った難易度かどうかを確認してみないと、無駄な買い物になってしまう可能性もありますよ。
その他
ハウツー本は、自分の知りたいことに対して、効果的かつ具体的な方法論を提示してくれるかどうか、入手して読み進めてみないと分からない部分もあります。ですので、上に書いたように、まずはネットの情報を利用したり、街の図書館を利用したりするのも1つです。図書館利用の場合、新刊本なら「100人待ち」も当たり前ですが、ハウツー本は既刊の中からだって探せますので、十分に利用価値があります。
教養本
教養本は、ハウツー本のような具体的な方法論ではなく、現在のビジネスに関わる「新しい知識」を身に付けるために存在します。古典本の本質が時代からずれている場合に、それを補完する意味もあります。
世のビジネスマン/ビジネスウーマンが最も多く手にするカテゴリではないでしょうか。それだけに種類も多く、出版頻度も高く、攻略するのが大変です。あまりお金をかけずに短時間で攻略する方法を考えてみます。

1.新聞などの書評を上手く活用する
新聞や雑誌に掲載させる「書評」は、有識者を集めた会議で本が選定され、いろんな分野の専門家が各分野の書籍を評していることが多く、これを参考にしない手はありません。最近は、古典を紹介している書評もあり、それも役に立ちます。販売ランキングが載っていれば、流行を追いかけるのも容易です。
ただし、書評には当たりはずれがあります。選定に凝りすぎて難解な書籍が紹介されていたり、専門家が書評を練りすぎて意味不明になっていたり、ということもありますので、あくまでも参考程度に、自分の波長に合うものを選びます。
2.知っていることが7割以上の本は読まない
教養本をある程度読んできた人なら分かると思いますが、教養本というのは、自分の知識が欠けている部分を埋めるように読んでいくものです。ですので、知っていることがたくさん出てくる本は、そもそも読む意味がありません。感覚的に、その基準を7割と設定しています。
たとえば、昨年出版された『バカとつき合うな』という本がありますが、その目次を引用してみると、こんな感じです。
01 バカばっかりの環境に居続けるバカ(堀江貴文)
02 人と同じことをやりたがるバカ(西野亮廣)
03 学校を盲信するバカ(堀江)
04 目的とアプローチがずれているバカ(西野)
05 我慢を美徳にしたがるバカ(堀江)
06 未熟なのに勘に頼るバカ(西野)
07 欲望する力を失っているバカ(堀江)
08 「自分の常識」を平気で振りかざすバカ(西野)
09 機械の代わりを進んでやるバカ(堀江)
10 付き合いを強要するバカ(西野)
11 ひとつの仕事で一生やっていこうとするバカ(堀江)
12 先に設計図を描きすぎるバカ(西野)
13 にわかを否定するバカ(西野)
14 人生の配分ができないバカ(堀江)
15 新しさばかり追求するバカ(西野)
16 無自覚に人の時間を奪うバカ(堀江)
17 善意なら何でもありのバカ(西野)
18 マナーを重んじて消耗するバカ(堀江)
19 自分は老害にならないと思っているバカ(西野)
20 孤独を怖がるバカ(堀江)
21 一貫性にこだわるバカ(西野)
22 未来に縛られるバカ(堀江)
23 空気を読むバカ(西野)
24 バカを笑って、自分は棚上げのバカ(堀江)
25 西野亮廣という「バカ」(堀江)
26 堀江貴文という「バカ」(西野)
27 ぼくは「バカ」(堀江)
28 ぼくも「バカ」(西野)
目次をツラツラと眺めてみて、その7割以上で内容まで想像できてしまうなら、おそらくその本は自分にあまり価値がないだろう、と判断します(もちろん、ファンとして書籍を収集する場合や、自分の意見に近い本を熟読して安心感を得たい場合などは別です)。
ただし、目次だけ奇抜なことを書いている場合もありますので、少なくとも1つの項ぐらいは内容も確認したいところです。逆に、目次は至って普通なのに、中身がよい意味でクレイジーにぶっ飛んでいる場合もありますので、やっぱり内容も少しは確認が必要です。
堀江貴文さんや西野亮廣さんの場合は、各種メディアでの露出も高い上、似たような内容のビジネス書もたくさん出されており、どうしても既視感が強くなります。そういう方々の場合は、ビジネス書よりもエッセイの方が新鮮だったりします。
3.意外なことが書かれた本に注目する
ビジネスは、「意外性」が重要です。
日々のルーチンワークは、淡々と作業をこなしていくことが普通であっても、新たなビジネスを考える場合や困難な問題を解決しようとする場合には、「意外」な発想が起点となることがよくあります。それには、日々そういう情報を仕入れるとともに、そのような「意外性」の発想に慣れ親しむことが大切だと思います。
新旧2冊を挙げてみました。前者は、今さら改めて紹介する必要もありませんね。後者は、「京大」を冠していますが、そんなに難しくないのでご安心を。「なぜ鮨屋のおやじは怒っているのか」という項では、その理由が経営学の視点で詳しく論じられており、ビジネス感覚を養うのに役立ちます。
4.逆説が書かれた本に注目する
ひと昔前まで、「バリアフリー」といえば徹底的にバリアをフリーにするのが一般的でしたが、今は、敢えてバリアを少しだけ残すのが常識となってきています。バリアを越えようとする人間の意志や体力を衰えさせないためです。
ノーベル賞を受賞した科学者などが、「まずは疑うこと」とよく言います。疑うこと(逆説)は、研究の第一歩なんですね。ビジネスも同じだと思います。逆説は、新しいビジネスを起こす際の基本となります。これら(↓)の書籍を読めばよく分かります。
上に挙げた『京大変人講座』の「安心・安全が人類を滅亡に導く」「不便なモノが社会を豊かにする!?」といった項でも、逆説を大いに楽しむことができます。
実際の仕事の場面でも、予定調和を脱した逆説的な新しい提案なり提言なりというものは、相手に訴えかける力がものすごくあります(その分、説得力も必要になりますが・・)。
5.具体例ばかりの本は避ける
上の「ハウツー本」のところでは、具体性が大事と書きましたが、教養本の場合は、理解に必要な最小限の具体例があれば十分です。抽象的な論説で十分に事足りるのであれば、具体例はページを無駄遣いする邪魔者でしかありません。
知識や教養を身に付けるということは、具体例を闇雲に覚えることではなく、数々の具体例に共通する抽象的な真理を見出すことです。そうしないと、知識や教養を記憶に留めるのが難しくなりますし、あとで利用するのも難しくなります。
たとえば、100ページにもわたってダラダラと記述された具体例を、たった15文字程度の一言でまとめられる場合も多々あります。
具体例ばかりで真理にたどり着かない本は、時間やコストの無駄となる可能性大です。
まとめ
- 「古典本」は、読み継がれているものを手当たり次第に読んで「本質」を学びます。
- 「ハウツー本」は、具体性と難易度に着目して「方法」を学びます。
- 「教養本」は、最小限の時間とコストで「新しい知識」を学びます。
ビジネス書をフムフムと読んではみたものの、よくよく振り返ってみると、ほとんどが知っている内容だった、ということありませんか? 古典を深く理解する目的や趣味で再読したり深読したりするのは大切ですが、そうでもないのなら、時間やコストが無駄になっていないか、という視点も大切に。