日本は少子高齢化が進み、今後は労働人口が大きく減少していきます。今や労働人口の 20% 近くまで、組織に属さないフリーランサーが増加しており、今後もその傾向は強まると予想されます。
そうなると、企業側としても人材の確保が困難になるため、現有勢力をいかに大切にして働きやすい職場環境を維持するか、という点が重要になってきます。

そのため、管理職になって部下を持つようになったら、「上司の心得」的な研修を受けることもあるのですが、その中身を聞いていて、「これは、そのまま家庭生活にも応用できるじゃないか!」と感じることがあります。
結婚して夫婦生活が長くなると、互いに空気のような存在になり、それはそれで良い点もあるのですが、何となくすれ違いが生じたり、ケンカや揉め事に発展するケースも少なからず経験することになります。
まさに相手を「空気」としか感じなくなってしまっていたり、必要以上に感情的になってしまったり、といったことが原因だろうとは思うのですが、そのあたりをボンヤリ考えているだけでは、なかなかうまく対処できません。
そこで今回は、「理想の上司像」を強く意識して、それを「ブラック家庭」防止に役立てる方法を考えてみます。男女どちらにも当てはまることだと思います。
「聞く」を「聴く」に変える「傾聴」
部下にストレスなく働いてもらうための「上司の心得」として、部下の話を「聞く」だけではなく、「聴く」という姿勢の重要性が言われています。
「聴く」というのは、単に耳を傾けるだけではなく、相手の話を全身で受け止める「傾聴」という姿勢です。その「傾聴」のポイントごとに、家庭生活への応用を記します。
最後まで聴く
付き合いが長くなると、相手の言いたいことが先に分かってしまうことも多く、つい途中で口を挟みがちになります。ただ、これは話の腰を折る行為であり、話す側にとってはかなりのストレスになります。
まずはしっかりと最後まで、相手の話を受け止めることが大切です。
相槌を打つ
正直、話が長くなったり堂々巡りになったりすると、反応するのが煩わしくもなります。でも、反応のない相手に話をすればするほど、自尊心は傷つけられます。
いったん話が始まったなら、覚悟して聴き、相槌を打ってうなずきながら傾聴します。
「ながら傾聴」をしない
忙しいのは分かります。でも、部下にしてみれば、パソコンの画面を見ながらしか話を聞いてくれない上司は、反応が薄くて、信頼・信用できる相手には見えません。
家庭でも、しっかりと相手に向き合い、相手の目を見ることが大事です。
おうむ返しにする
上に「うなずく」と書きましたが、どんな相談や悩み事にもただ「うんうん」とうなずいているだけでは、やはり部下の信頼・信用を得られません。
たとえば、「つらいんです」と訴えられたら、「つらいんだね」と部下の言葉をおうむ返しにするように、家庭でも、パートナーの言葉をおうむ返しにすることで、パートナーは「分かってくれている」と安心できます。
腹式呼吸で聴く
自己中心的に自分の意見ばかり述べる人は、神経が高ぶって呼吸が浅くなる傾向にあります。鼻息ばかり荒くて、とても他人の話を聴ける状態ではありません。
そんな時は、深い呼吸で自分を落ち着かせて「傾聴」の姿勢を示すことで、相手に話しやすい状況を提供するとともに、自分が「理解しようとしている」ことをアピールします。
「か・り・て・き・た・ね・こ」理論

部下を叱る際に注意すべきこととして、「か・り・て・き・た・ね・こ」という基本事項があります。これが、夫婦で話し合いや議論をする際にも上手く利用できそうですので、それぞれの意味とともに詳しく見ていきます。
「か」感情的にならない
人間だから、誰だって感情的になります。
でも、感情的になり過ぎると、その感情が相手にも伝染してしまい、相手も徐々に感情的になって、お互い必要以上にヒートアップしてしまいます。ヒートアップすると、落ち着いてまともに話し合ったり議論したりすることなどできません。
3人以上で議論する場合は、誰か2人がヒートアップしても、それを別の誰かがクールダウンさせることができるのですが、夫婦のように2人で議論する場合は、クールダウン役がいませんので、まずはヒートアップしないように注意するのが得策でしょう。
「り」理由を話す
上の「か」につながることですが、感情的になる原因は、主張したいことが理路整然となっておらず、気持ちばかりが先走ってしまうことにあります。
話し合いや議論で主張したいことには、必ず「理由」があるはずです。その理由を頭の中で整理して、理路整然と相手に伝えるように心掛ければ、自然と感情は抑えられます。
「て」手短に
一般的にプロセスを大事にしようとする女性に多いことかもしれませんが、結果を述べればひと言で済むものが、プロセスをすべて口にするため、まず結論を知りたい相手にしてみれば、かなり遠回りに感じられ、議論とは関係のないところで「イライラ」が募ります。
また、話が長くなればなるほど、そこには感情も多く含まれるようになるため、無駄に相手の感情を煽ってしまうことになります。
自分の主張を手短に済ませることは、話し合いの相手に「時間をあげます」というメッセージになり、それが相手の安心感につながって、話し合いが上手く進むようになります。
「き」キャラクタ(性格・人格)に触れない
主張したいことと全く関係がないのに、いきなり相手の性格や人格を否定し始める人がいます。感情的になり過ぎた結果、自分の主張の正しさを強調したいばかりに、相手の主張のみならず、その基礎となる相手の性格や人格まで責め立てる人です。
でも、これは、相手の自尊心を最も傷つける行為です。
確かに、根本原因は相手の性格や人格にあるのかもしれませんが、それをそのまま口にしてしまっては、まともに話し合ったり議論したりすることなどできません。議論の中身を互いのキャラクタから切り離すことは、お互いを最大限にリスペクトすることになり、客観的な議論が可能となります。
「罪を憎んで人を憎まず」です。
「た」他人と比較しない
他人と比較することも上の「き」と同じで、相手の自尊心を傷つけます。他人との比較で評価されて嬉しい人などいないでしょう。
その話し合いや議論は、あくまでも当事者(2者)間で完結すべき類のものであり、その中で他人を引き合いに出す必要も意味もありません。当事者同士でじっくりと向き合えば、それで良いわけです。
「ね」根に持たない
話し合いや議論は、その場で完結すべき類のものです。
相手の主張や態度を根に持ってしまうと、その後も延々と続く夫婦生活の中で、根に持った部分が必ず頭をもたげてきます。話し合いや議論は、その都度完結させなければ、いつまでもシコリとなって残り、次の話し合いや議論に影響してしまいます。
感情的になり過ぎると、根に持つ傾向が強くなるため、やはり感情を抑えることが重要です。
「こ」個別に議論する
話し合いや議論の題材は、その都度1本に絞るのがおススメです。
さまざまな議題が入り乱れている状況では、議論が発散して、結局はどの議題も結論に達しませんし、無駄な感情が入り込んでくる原因にもなり得ます。
話が逸れていかないように注意して修正しつつ、まずは1つのことについて結論を導きます。議論はパラレルではなくシリアルに進めることが、円滑化のコツです。
まとめ
以上のように、上司の心得としての「傾聴」の姿勢と、「か・り・て・き・た・ね・こ」という基本事項を守るようにすれば、長い結婚生活でブラックになりがちな家庭を少しでも明るく保つことができます。
家庭には、小さなものから大きなものまで、いろんな地雷が転がっています。夫婦円満を保つには、いかにして地雷を踏まないようにするか、が大切です。
実践するのはなかなか難しいことですが、頭の片隅にでも置いて、何かの折に少しでも意識できるようにしておけば、それだけで結果は全く異なるものになります。
共通して言えることは、「常に相手のことを考える」という姿勢です。自分だけが相手のことを考えるのは損、と最初は思うかもしれませんが、それを続けていれば、いつかその「損」が「得」になって自分に戻ってきますよ。その「損」を「損」とも思わなくなれば、それが究極の理想ですね。